* 今年もハッピーバースデー *












 毎年、そういう時期なんだ。


「おい、この提出物って今学期中だよな?」
「お前…それ期限先週末だぜ?」
「マジ?」


今日も、2年8組は大忙しだ。

それもそのはず。
今は学期末というもので、
あと数日で待ちに待った夏休みだ。

「マサやーん、ちりとり取ってちりとり〜」
「自分で取れよ…」

林だった。教室の隅からぶんぶんと手を振っている。
文句をいいつつも、言いなりになってしまう情けなさ。
結局掃除用具入れに向かっている自分がいた。


今日は一斉大掃除の日。

といいつつマトモにやってるのはほんの一握りだ。
勿論おれもやってないし。林もやるわけがねぇ。
(ちりとり?野球のバット代わりにでも使うんだろ)
桃は遅れた提出物を持って走り回ってる。
荒井は教室のことはそっちのけでせっせと自分の荷物を纏めている。
(あ、あいつ自分のロッカーだけピカピカにしてやがる)


小学校の頃から、おれの誕生日というと
いつも決まって大掃除の日だった。
(正しくは美化日というらしい…知るか。)

18日は大掃除、19日が終業式、
20日は海の日で晴れて夏休みの幕開けだ。

しかし。


「(…なんか調子狂うんだよな)」


箒を握ったまま見る黒板の日付は、
自分の誕生日までまだ日数を残している。

ハッピーだかラッキーだか忘れたけど、
なんとかマンデー法とかいうののお蔭で
今までの常識が通用しなくなっている。

今年の一学期の終業式は20日。
大掃除をしている今日は16日

まあ、今年はどちらにしろ誕生日が日曜日なんだけどな。
しかし、翌日に学校があればまだ覚えていてもらえそうだけど、
海の日が例のなんとか法で月曜日にやってくるもんで
おれの誕生日は3連休のど真ん中。誰でも忘れるっつーの。


「ほらよ」
「サンキュ〜」


ちりとりを受け取った林は笑顔。
そして、「そういえば」…と呟く。


「去年の大掃除はマサやんの誕生日だったよな」


…まさか。
憶えている人が、いるなんて。

「よく…憶えてたな」
「ああ。誕生日プレゼントとかいいつつゴミ箱渡して
 焼却所に行かせたのを思い出したから」

そう言って林はくっくと笑った。


そういえば…そうだったな。
なんかイヤなこと思い出したぞ…。

しかし、そんなことでも憶えていてもらえるって、嬉しいかもしれない。


去年、今年と来たけれど。
来年、おれたちはどうなっているだろう?

同じクラス?
このようにまた、掃除をしたりじゃれ合ったりしながら、
その話題が繰り返されるのか?


「今年は連休のど真ん中だな。絶対忘れるから言っとく。おめっと!」


そういうと、林はまた笑顔を見せた。
ちょっとくすぐったかったけど、「さんきゅ」と返した。


「ほら、林行くぞ〜」「ほい来た!」と、会話が聞こえた。
丸めた新聞紙で野球をやるらしい。いつもの様子。

おれも仲間に入れてもらおうと思ったけど、
たまには掃除も真面目にやろうかな、と箒を握りなおした。
だけど床を刷くわけではなくて、黒板へ向かった。


もう、変えてしまおう。
16日はここまで。
次の登校日は、20日。


オイ林、ちりとりは面積広いだろ!反則!!
うるせぇ箒の方が長ぇんだよ!

そんな会話を背にして、おれは小さく笑った。


そのとき、後頭部に何かが当たった。
振り返ると、下には丸めた新聞紙。

「あ…それ、早めのバースデープレゼントな。ヨロシク」

そう言って林は誤魔化した。
おれは怒る気にもならなくて、怒る気にならなくて。
「大ファウルじゃねぇか」と笑って返した。


やっぱり、おれも仲間に入れてもらおう。
黒板消しを置いて箒を掴んでそっちに向かった。

そんな時、担任が教室に飛び込んできてクラスの荒れように泣き叫ぶ。
クラスメイトは全員笑って誤魔化した。


 今日も、2年8組は大忙しだ。






















林って、池田って呼ぶっけマサやんって呼ぶっけ?
マサやんでいいんだよな???

2−8だいすき。林池っていいよね。
読み方はリンチンで!(一文字多いよ!?)
フォモにならずいい感じで日常系じゃない?
(36だとかすりで百合になりかける/そっちか!)

私的ポイントは荒井先輩。B型自己中上等!!
(いるよね、自分のロッカーだけピカピカにする人…)


2004/07/18