行こうか、やめようか。

体を起こして考えた。


生憎、体の調子は良好だ。

今日は週初め。

新しく切り出すとしたら、今日。



意識も朦朧としてる中、カーテンを開けた。


そこには―――。




雲一つない青い空。


…出掛けようと、決めた。











  * 空色元気 *












歩いていると、随分といい気分だった。
天気は良くて、適温で、
朝からシャワーも浴びてさっぱりしてる。
憂鬱なんてのは、どこにもなかった。

それでもやっぱり、ちょっと不安。
周りがどんな反応をするか。


気にならないわけじゃ、ないんだって。




まだ、新学期が始まって3週間目。
それなのに、私は先週一週間丸々休んでしまった。

月曜日は、体調不良のため。
火曜日は、大事を取って。
水曜日は、惰性。
木曜日は、今更行くのもどうかと思って。
金曜日は、完全にサボりの体勢。


別に。
行きたくない理由があったわけじゃない。
ただ、休むのが楽だって気付いてしまっただけ。
今日もどうしようか悩んでいた。


でも。



「(…この空だもんな)」



顔を上に向けて、私は微笑んだ。





  **





少しドキドキしながら学校に着く。
しかし私の思いとは裏腹に、皆は不思議なほどいつも通り。

「おはよう」とか声も掛けられたりして。
誰も「久しぶり」なんて言ってこない。


肩透かしを喰らったような。

でも、安心した。





滑らかに日常に滑り込んだ私。
今日もまた、いつも通りの生活が始まる。
まあ、このクラスも始まったばかりだしな。
顔と名前が一致してないのが逆に救いだったかもしれない。

だけどその中にも、前からの顔見知りも居るわけで。






「あ…大石」



そこにいたのは、大石秀一郎だった。



今年のクラス分けは極端。

マンモス校らしくクラスが多めなこともあり、
元々知っているクラスメイトはほんの数人。

その中の一人だ、大石は。

「どうして休んでたんだ?」
「ん、風邪」
「随分長引いたな…大丈夫か?」

……。
なんて素直なんだろ。

そうこられると、こっちが悪者みたいじゃんか。

…実際そうなのかもしれないけど。


「ウソ」
「え、嘘?」
「うん。本当はね…サボった」


なんだって?と大石は声を上げる。

私はこんなやり取りを楽しむ。


「いや、初めは本当に風邪だったんだけど」


返事が見つからないのか、
大石は口を開こうとしない。

「一回休むと来辛いっていうか。勢いで休んじゃった」


へへ、と笑ってみせた。
大石は、私とは違って表情を崩そうとはしなくて。

「本当にそれが理由か?」
「え?」
「実は…嫌なことがあるとか」

大石はぐるりと教室を見回した。


…ああ。
そういうことか。


何もありませんよ。
犬猿の仲な人がいるとか、
いじめっ子がいるとか、
それとも昔喧嘩して以来の子がいるとか。

そんなことありません。

寧ろ、憶えのない人ばかり。
でも友達なんていくらでも作れるし。


私は元気ですよ。

ほら、今日はいい天気だし。


「そうか?」
「うん」


自信を持って答える。

でも、ホントウかな?



実はちょっと不安なんだ。

憂鬱とか言わないけれど。

太陽がまた雲の後ろに隠れて

空が灰色に染まってしまうのが

怖くて、恐くて。



「悪いな、変なこと訊いて」
「ううん。ありがと」
「でも…」
「?」



大石は振り向きかけた体をまた戻して。



「去年もよく、学校休んでただろ?」

「―――」

「休み明け、空元気に見えてな」



…見ててくれた、んだ。
そんなこと。

自分でも気付かないほどの微かな変化を。



でもね。
もう新しく切り出した。
だから大丈夫。



窓の外を見た。

雲一つない青い空。



「ほら。私、元気だよ!」



これは空元気じゃないって、
それだけは胸を張れる。

もう大丈夫。



顔を上に向けて、私は微笑んだ。

同時に温かさが返ってきた。




  空色が私に元気を与えてくれるなら。






















学校は好きだけど休み癖がある娘ってことで。
休み明けに登校するときって、緊張しません?

怪我して体育休んでて、復活した時の気持ちを書いた。
2回休んだのに、クラスメイト無反応。
えっと…一年間を共にしたクラスなんですが。(笑)

南君の小説を書こうと思って書き始めて、
完全版として南君で紙に書いてあったのに。
パソコンに打ち出した段階で置き換えちゃった。てへv
(だってあまりにも大石なんだもん!)(南君はまた今度…)


2004/06/09