* 恋しいね。 *












一度はああ思ったけど。

私はやっぱり。

まだ。


あの人のことが好きなんだと思う。





見てて辛くなくなった。

じゃあ好きじゃなくなったのかな?


思い出したら涙が出た。

それならやっぱり好きなのかな?


切なくなる気持ちがあった。

もしかしたら別の人が好きなのかな?



色々と考えたけど。

やっぱり辿り着く先には。

この人が居る。



ちゃん、やっほ〜♪」

「やほ、菊丸くん」


廊下で擦れ違うと、凄く嬉しそうに手を振ってきた。

私は笑顔を返す。


本当はこんなに楽しい会話してるなんて虚しいだけ。

でも、アナタは言葉通り「今まで通り友達として」接してくれてる。

だから、ちゃんと明るい態度で接することができるだけマシ。


…我慢してるんじゃないの、私?



泣きたい時には泣けばいい。

泣きたくないなら泣かねばいい。

簡単なことなのに。



自分に嘘は吐きたくない。

誓ったことは破らない。


私はもう泣かないって決めたのに。


泣かないことが誓い。

嘘は吐きたくないから守る。

泣きたいのに泣かない。

結局偽っている自分が居る。



どうすればいいのかな?



自分は強いはずだし。

迷惑掛けたくないし。



だから、泣かない、って、思ってたのに。





打ち明けたい。


・・・と。




でもまさかね

そんなこと言えない。



ううん。

言えない、じゃない。

言わない。


言わないだけです。

言おうと思えば言えます。

だけど言おうとは思えません。


…同じことかな?

ちょっと違うよね。



だって今、ちょっとでも、言おうかなって、気持ちになれば。


足を止めて。



「菊丸くん」



ほら。


口が自然と動いていくよ。






 「好きだったよ」






この言葉を伝えるのは、一度目じゃない。

答えは分かってるんだから、迷惑なだけなのに。



だけど

私がアナタを好きだったこと


忘れないで?



それから

もう既に過去形だってこと


知っておいて?





菊丸君は、何も言わずに。

ちょっとだけ眉を顰めてこっちを見て。

苦笑の交じった微笑で振り返り際、


そっと、私の髪を撫でた。



その手が、温かくて、大きくて、優しくて。

幸せな気持ちに包まれた私は「ありがとう」と言った。


それで、背中を向けて、元来た道を走った。



涙が出そうだったけど。

先に零れたのは笑顔だから平気。


辛さなんてどこにもなくて、

あるのは嬉しさだけだった。




泣かないって誓ったから泣かない。

でも涙を堪えるのは自分を偽ること。


じゃあどうすればいいか。



答え、心からの笑顔になること。





 私、生まれ変わるから。


 今度こそ、完全に踏ん切りがついたよ。


 これからは、自由に恋ができるように、なったよ。





彼のことは大好きだけど、これはもう恋じゃない。

また、彼のことは大好きだけど、今までは恋じゃなかった。


これからは?




逃げているばかりの自分とはさよならします。


ここに、生まれ変わりを宣言っ!




私は満面の笑みで雑談をしている友達の輪に飛び込んだ。






















『悔しいね。』からラインを引っ張ってきました。
句読点の位置は、それぞれ変えて読んでくださいね。

告白前と後で書いたら、微妙に矛盾が生じた…。
なんとか辻褄あわすべく頑張ったけど。
ま、いいじゃん?変に意識しなきゃ気付かないだろう。

大石が出ないなんて珍しー。
でも逆に心の中では大きくなってきてますって。


2004/06/07