* 手繋ぎ笑顔 *












パタンとアルバムを閉じる。
大石は膝に手を掛けて立ち上がった。


「今日は楽しかったよ。ありがとう」

「いやいや、こちらこそ」


座って足を伸ばした状態のまま私は返事をした。

なーんて、お礼言われてる場合じゃなくて
謝らなきゃいけない側なんだけどな、私は。
でも一応謝ったし、いっか。うん。問題ない。

…二人、あんなにラブラブだったものね。
(そうよこの人がを手放すわけ無いわよね)
(何しろベタ惚れだったからね。このバカップルもといバカめ)



「でも…良かったのかな」


大石が突然思い悩んだような声で言った。
私はきょとんと返事を返す。

「何が」
「その…こんな、休日に。俺…家なんかにお邪魔しちゃって」


はた。

…そういうことか。


そうか。
大石ってそういうこと気にする人だったわね。
すっかり忘れてたわ。
私なんて全然気にしてなかったから。

…それがいけないのかな。


「ゼーンゼン平気。うち兄貴が居るから男が来るのなんてフツーだし」
「そうじゃなくて…」
「分かってるって。それ以上言わなくても」

喋りだそうとした大石を制す。
ふぅと一つ溜息を吐いてみる。
別に思い悩んでるわけでもないけど、いかにもそれらしい態度で。


「どーせ、私なんて彼氏の一人も居ない寂しいやつだから」

「そ、そうか…」


戸惑った態度を大石は見せた。
全く苦労人だねぇ。

でも、悪くないね。


…やっぱり彼氏欲しいわ、私。


「あ、メール」


ポケットからケータイを取り出して大石がそう言った。
もしかすると、相手と内容は予想がついたような…。

大石は目配せをすると、「にメール送ったか?」と問われた。
送った憶えも大石にそのようなことを訊かれた憶えもあったので、
誤魔化すようにアハハと笑って返事とした。

立ち上がったままその場で大石はメールの返事を打ち始めた。
苦笑いのようだけど柔らかいその笑みは、何を意味しているのだろう。

いいもんだねぇ、恋人ってヤツ。


羨ましいな。
妬ましいなんてことは全くナイ。
寧ろ見ていて幸せなほど。
純粋に、いいな、って思う。


その時、私のケータイが鳴った。
こっちにも来たカナ?

「あー。やっぱりだー」

私もまたメールを打ち始める。


部屋の中、二人きりでメールを打っている。相手は同じ。
おまけに大石は立ち上がったままの状態という妙な構図。
なんかマヌケだな、とも感じながら。


「やっぱりには笑っていてほしいよね」

「ああ」


爽やかに即答しやがって。
なんか憎いほどだなぁ、コノォ。

この際思う存分幸せになってくれたまえ。


それ送信っとね。
ぱちんとケータイを閉じた。
同じく書き終えたらしく、大石も顔を上げて目が合った。

何故かくすぐったくて、お互い笑った。


「それじゃあ、長居しちゃったけど」
「うん。またね」


玄関まで見送って、私は大石にバイバイをした。


やっぱり、私たちを繋ぐのはだな、と思った。

これからもそれは変わらないのかな?



少なくとも、あの笑顔はいつまでも続いてほしいと思った。






















この話自体には特に意味はない。
『私的!理想的なカップル』の続き、
『メガネっ娘萌ぇ?』の種明かし、
そして後に続くお話の前フリ、って形で。

最近ちゃんよりちゃんの方が
自分に近いんじゃないかと思えたり。
でもやっぱり自分はです宜シュウ。(ぁ

一日過ぎたけどお誕生日おめでとう!


2004/05/31