* また明日は一般人 *












何だかんだいって

一年にたった一度だけ

自分が特別になれる日だもの。


意識しないワケないじゃん。





、おめでと〜!」

ちゃんハピバっ」


「ありがとーありがとー」



沢山の友達に祝福されながら廊下を通る。

プレゼントも貰っちゃったり。

普段はあんまり話さない子からも声を掛けられちゃったり。


今日の私は上機嫌。

紙袋などのパッケージを抱えてロッカーへ。


と。



「………」

「………」



何故か。


桜井雅也と目が合ってしまった。

しかも双方固まるし。


……。



「誕生日?」

「うん」

「へぇ…おめでと」



……。

愛が全く感じられない。

だけどなんだか祝われたようで。


私は「はぁありがとう」と簡素に返すとその場を離れた。




しかし…なんでだろ。

桜井なんて。

話すことは…まあなくはないけど。


共通点といったらクラスが同じなだけ。

席も特に近くないし。小学校も別だし。

特別仲が良いわけでも…。



実は。


私の視点から見れば話は別だけれど。

桜井は。


好きな人候補のうちの一人。マル。



なんだよそれはっていう話ですけど。

そういうのないですか?


この人好きかも。やっぱ違うかも。

あっちの方が好きかも。寧ろ全員違うかも。


色々考える。

その中の、一人。




ちょっと今のはポイント上がったかなぁ。

祝われたその微妙な間合いを思い出す。

あれでもう少し感情が篭ってれば感動だったけれど。


ま、いっか。

こんなこと考えてる時点で好きな人でもない気もするし。



折角誕生日が来たんだし。

今年は恋愛に花を咲かせたいなーとか考えてるんだけど…。

だけど、それ去年も言ってた気がするな。

「中学になったわけだし、今年こそカレシ!」

はいさよなら過去の自分。

彼氏どころか好きな人すら見つけられず悪戦苦闘じゃない。



ふぅと溜息を吐いた。


誕生日は幸せで楽しいこと一杯だけど、

切り替えし地点でもあるから考えることもイッパイ。



とにかく、目指すは結果オーライ、です。






  **





ー。バースデーガールとして何かお願いとかある?」



休み時間、親友であるがそう訊ねてきた。


「特になし」

「なにそれー逆に困るんだけど!」


あっさり答えると、は眉を顰めた。

だって…突然お願いすることを願われてもこっちも困ります。


プレゼントはもうさっき頂いちゃったし。

最近は特に強いて欲しいものなんて……?



欲しいもの?



「んっと……」

「お、その顔は何か思い付いてるな?教えろ!」


がしっとは首に回してきた。


誕生日である私を精一杯お祝いしてくれるのはいいけど…。

苦しいですよ…ちょっと、力みすぎ。


首を回って掴まれていた肩の手を解いた。

「痛い痛い」というと「あ、ごめん。力加減が…」と笑った。

さすがはバレー部の部長…並じゃないです。


ふぅと息を吐いてから。

私はこう言ってやった。



「カレシ欲しい。」


「……は?」




…殴られた。

完。

は去っていく。


ちょっと…それはないでしょ。

半分冗談だったのに。

半分本気といえばそれもそれですが…。



彼氏が欲しいからくれ、っていうのは冗談だけど、

彼氏が欲しいという事実はまあやっぱり否定できず。


だけど…まずは好きな人を発見することから始めようぜ?みたいな?



、冗談だってば!」

「じゃあお願いは?」

「…特になし」



なにそれー、と。

結局会話は発展しなかった。






  **






気付けば放課後。

色々な人に声を掛けられ、

色々な人に祝われて来ましたが、

ついにそんな幸せな一日も終わりです。

明日になれば、普通の人。




「それじゃ、バイバイ」

「またね〜」


最後の授業は選択だったため別だった私たち。
(ちなみに教科はが体育、私は音楽)

擦れ違って帰っていく際に手を振った。


ああ、一日が終わるんだなって。そんな感じがした。



胸の前にファイルを抱えた体勢で、

私は斜め前の地面を見るようにして歩いてた。


そしたら


「おめでとう」



と。


一言、聞こえた。





驚いて顔を上げると、そこに居たのは桜井。

突然だったから対応に困り、

「ん、あ、うん。ありがと」と、

可愛げのカケラも感じられない簡素な返事をした。


にこりと笑顔すら向けられなかった自分を妬んで。


そういえば、前もこんな返事をしたことを思い出した。

それは今朝のことだった。

確かに言葉は貰ったはずなのに。


また言ってくれたの?

一回目と二回目の違いは、何?




全く。


愛が感じられん。





私はロッカーにファイルを入れる。

その際に貰ったものを取り出す。

自分の誕生日をもう一度確認して、

私は笑顔でその場を去る。


「ばいばいまたねっ」

「バイバイちゃーん」


鞄を背負って。

怒られない程度に小走りになって。




「バイバイっ」


「あ、バイバイ」





走って抜かしていきながら、声を掛けた。

向こうは咄嗟のことに戸惑ったような返事だった。


何だかいい気分だった。




また明日っ!






















ドリーム内だと呼べるのに!
桜井も雅也も全部呼び捨てで!!
なのに…ダメだ!
終わった途端に桜井君としか呼べん。

てか、桜井君じゃない、これ;?(滝汗)
結構照れ屋で突っ張り型だと思うんだぁ。
だから…いいんだ!(無理矢理)

普通帰りの前にHRあるよな…。
(最近ドイツっ子のボロ出しまくり)
(現実込みやめようか)(いやそうはいかん)
幸せ誕生日でしたよハイ。一部現実込みで。
どこまでがそうかはご想像にお任せ。


2004/05/06