今日も風が吹いている。
今日も空が青い。
それぞれに表情があるけれど、
それは毎日違っていて、それは毎日同じ。
空色を感じ取りながら、今日も俺は吹きぬける風を受け止めている。
* 季節風 *
優しい風が吹き抜けていく。
「秀一郎っ!」
明るい笑顔で、は俺の前に立った。
太陽の光が遮られて、俺は顔を上げる。
「機嫌よさそうだな」
「だって…」
言いかけてから、は俺の横に回り込んで座った。
すると、肘で軽く小突いてきた。
「やだ。忘れちゃったの?」
「いや」
横目に見えた白い肌、その手をそっと握った。
「憶えてるよ」
そう。
今日は、俺たちが付き合い始めて一年の日。
まだあの頃の俺たちは自分のことで精一杯で。
相手を想うだけで胸一杯で。
「長く感じた?短く感じた?」
「うーん、どうだろうな」
思い起こせば、思い出は沢山詰まっている。
一日一日が鮮明に蘇ってくる。
だけど、楽しすぎて流れるように過ぎてしまったようにも思える。
「どっちつかず、かな」
「ふーん。私もっ」
えへへ、とは笑った。
明るい笑顔は、付き合い始めの頃…
いや、そのまた前より変わっていない。
「付き合い始めたの、昨日のようにも感じるし…」
そこで一度言葉を区切ると、息を洩らすように微笑して。
「生まれてからずーっと一緒に居たみたいにも感じる」
「…そうだな」
手を握り返した。
オレがの手の甲を押さえている状態だったけど、
手のひら(掌)を返して。
柔らかくて 優しい。
風が吹き抜けた。
「色々あったね」
「ああ」
「これからもね」
「もちろん」
笑顔を交し合った。
今日も風が吹いている。
春夏秋冬巡っていくそれは、
感情を乗せていたり。
情緒を駆り立てたり。
憂愁を漂わせたり。
温度を運んだり。
それぞれの風情は、
変えられぬ抒情を積んでいる。
今日も青い空の下、風は吹き抜けていく。
今日も明日も俺たちは、
毎日違う風を受け止めながら歩いていく。
こんなところで3文字熟語季節シリーズ終了。
(季節風って意味違えてますが、敢えて)
他のは付き合い始めずに終わるって感じで、
これはもう既に付き合ってるって感じで。
一年通してっていう話にしたかったので、
この話自体にはあんまり季節を感じさせたくなかったんですが。
やっぱり、自然と春っぽくなるよなぁ。
ま、いっか!今は春だし。大石の誕生日だし。
ちょっぴり大石の歌を意識しました。色々とねv
2004/04/30