* ニチジョウムチャメシゴト *
〜Everyday is a special day -peace by piece- 〜
大変なことになりました。
「シュウ、大変大変大変!!」
「ど、どうした、落ち着け」
もしもしすら言わずに捲し立てた。
そんな宥める声で落ち着いていられるほどの問題なら、
そっちが夜中の3時だっていうのに電話なんてしません。(ごめんね…)
「もしかすると…当日家に居ないかも!」
ああ、ショック…!
これほどショックだったことが、最近あっただろうか。
いや、ない!(断言)
「え、なんだって?」
「だから…学校の行事で、当日家に居ないかも」
聞き返さないで…泣きそうになるから。
。
人生の窮地に立たされてます。(※大袈裟)
と思ったら、シュウはこんなことを訊いてくる。
「そうじゃなくて…何の当日だ?」
……ああ、そっか。
シュウは、そんなこと意識する人じゃないもんね。
もうすぐやってくる。
今月の、最終日、は……。
「誕生日だよぅ」
消え入りそうなほど声は小さかった。
いつもより高い、というか細かった。
自分でもそれが分かったんだから、
向こうにはもっと鮮明に伝わったと思う。
それとも、電話越しだと声すら届かなかった?
「ああ…そういえばそんな時期か」
あ。
驚かそうと思ってたのに…。
作戦失敗だ。コナクソ。(おっと、暴言が)
でも、どうせ当日お祝いできないんだったら、それも出来ないんだ。
だからもういいや。
全部バラしますよーだ。ふーんだ。
「色々考えてたんだよ。ケーキ作って食べようとか、
夜中の12時に電話してラブレター朗読とか。
てゆか、とにかく沢山×2お話したかったの!!」
一年に一度だもん。
…寂しい。
当日にお祝いしたかったんだぁー!!
心の中で喚き散らして騒ぐ私。
(というか現実でもジッタンバッタンしてたけど電話越しだと分からない)
だけど、シュウは冷静な声色で返事をしてくる。
「でも…そんなに重要視することはないんじゃないか?」
「え?」
「誕生日だろうがそうじゃなかろうが、“今日”っていうのは一日しかない。
明日は違う日だし、昨日もまた別の日」
「……」
シュウって意外と語り屋だなぁ…。
今まで気付かなかったけど。
それとも、変わったのかな。
とか、そんなことは今はどうでもいい。
頭の中でシュウの言葉がリピートする。
「そっか…それもそうだね。さすがシュウ!」
私は笑顔でそう言った。
随分と説得力のある言葉だった。
私はあっさり飲み込んでしまった。
「考えてくれてるってだけで嬉しかったから」
「ん…そっか」
優しいな。
シュウは優しいな。
優しすぎて不安になるよ。
本当は無理してるんじゃない?って。
だけどごめんね。
その優しさに甘えることになると思う。
…私も凄く悔しいけどサ。
「じゃあ、当日にお祝いできなかったらごめんね」
「全然平気だよ。そっちこそ、楽しんでこいよ」
「ラジャっス!」
ビシッと敬礼のポーズをした。
電話越しだから、見えてないんだろうけど。
―――電話を切った後の時間は、あっという間に過ぎ去った。
そして誕生日当日。
「もすもすー?」
「…もしもし」
シュウの困った様子が電話越しに感じられた。
別に、意味不明な口調だったからじゃないはず。
(だってこれはいつものことだもの)
問題は、何故私が呑気に電話なんか掛けてるのかってことで。
あはは。
確かに戸惑うかもね。
私も実は戸惑ってます。
「…?え、どうして…」
「うん。そのことなんだけど……怒らないでね?」
「いや、怒りはしないけど…」
シュウの動揺している様子を察しつつ。
私は自分の頬が自然と上がっていくのを止められない。
情けない。
だけど嬉しい。
「あたしの勘違いだったみたい!」
「……は?」
要するに。
この前話していた行事というのは、
何日も掛けてやるものとはいえ、家には帰ってこられる…というもので。
要するに泊まりの行事ではなかったのです。
シュウの溜息が聞こえた。
「さすがだな…」
「ちょっと、それどういうことよ」
私が「そりゃデコピン」と言うと、「あいたっ」と返ってきた。
(変わったな、シュウ……)(ノリが)(私のせい?)
なんというか…感無量。
あれだけ心配してたのにね。
素直に。純粋に。
…嬉しいっス。
「あのね、これからケーキ食べるの」
「へぇ。それはいいな」
「2個買ったから、シュウの分も食べといてあげる!」
「そうか」
シュウは笑った。
私も笑顔。
もうすぐ終わると思うと、ちょっと淋しい。
思い出を懐かしみたくなってくる。
「あと、日記でも読み返そうかな。あたしたちの恋愛白書」
「コラコラ」
きっと、色々思い出されるよ。
今日が私たちの付き合い始めた日でもあることとか。
恋愛占いをしたら・・な結果だったこととか。
初めて喧嘩した日のこととか。
引っ越しを告げられた頃のこととか。
涙を流した時とか最後には笑顔だった事とか。
赤い苺とか白い綿毛とか黄色い太陽とか青い空とか。
未来に繋がるであろう、過去から現在までの経緯を。
沢山。
沢山思い出せるよ。
「…もうすぐ、次の日になっちゃうだろうけどさ」
自動的に7時間差を換算するようになった脳。
短針はもうすぐ5へ向かう。
日本ではもうすぐ12へ向かう。
そこへ到達した瞬間に、カレンダーは次へめくられる。
だけど。
「たまには…ドイツ時間にも付き合ってくれる?」
「もちろん。明日は休日だし、いくらでも」
そうしたら、あと7時間は一緒に記念日を過ごせるよ。
沢山一杯色々、お話ができるね。
とはいえ、7時間も喋る続けることはきっと無理だろうから。
疲れて眠る頃には、こっちも翌日なのだろうけど。
「…えへへ。やっぱ幸せ。二人で話せるのって嬉しすぎ」
「ゆっくり話すのは久しぶり、かもな」
大好きな人だから、特殊かな。
特別な日だから、余計かな。
「あ、でも両方が今日のうちに言っておこ」
電話はその後も続いたけど。
お互いにとって一番大切だった瞬間はそこだったのだと思う。
7時間差だって、17時間は重なってるんだもん。
私が笑顔だったからかな。
向こうの笑顔が見えた気がした。
口から出たのは、記念となるお祝いの言葉。
時間も時差も時空も次元も飛び越えて大好きなアナタに捧ぐ。
ひとつひとつの思い出を抱き締めつつの、ハッピーバースデー。
ゲームのおまけについてます大稲。
おまけといいつつ一番凝ってるってのは秘密。(ぁ
4つあるエンディングの中で、現実に一番近かったものです。
微妙に加筆修正しましたが。
…はっはー。希望していたシナリオに当たったぜ!!
(観月にあらず『稲瀬のシナリオ』/ぇ)
ふふふ。元々このシナリオに一番思いを込めてました。
ちゃんとこれになって良かった…!
大石お誕生日おめでとう!
イッヒリーベシュウ!!
本当にだいすき!きねん↑びになるぅ!
2004/04/30