* 郵便屋さんの落し物 *











私にとっての授業中の楽しみは、


勉学ではない。(知識を蓄える?なんだそれ)

睡眠ではない。(そういう人も結構多いけど)

談話ではない。(後ろで話してる二人、五月蝿いですよ)


手紙のやり取りと、好きな人を観察すること。




「(……そーれっ!)」



タイミングを見計らって、隣の隣の席の友人に手紙を投げた。

それは、上手く着地に成功した。ばっちり☆


先生は黒板に何かを書いている。

生徒もそれを写して俯いている。

その瞬間が、私と友達の手紙交換の瞬間。



内容は、どうでもいい雑談だったり。(明日は晴れるといいなぁ)

先生の今日の髪型だったり。(ハゲ頭のてっぺんの一本が気になる)


それから、好きな人の話だったり。




私には好きな人がいます。

なんでこんな人を…って感じもするんだけど。

否定しようのない事実。


うちのクラスの学級委員、です。


常に一生懸命で、凄く誠実な人。

ちょっと真面目過ぎない?っていう人も居るけど。

あまりにちゃらんぽらんしてる人よりは、全然いいと思うな。


そういう私は授業中に手紙のやり取りをするような悪い子だけどっ。




私はずーっと横を見てる。

すると、こっちを見てきた友人と目が合った。

一つ頭を通り越して。

今度は、から私へ手紙がやってきた。



内容。

アンタ、ノート写してないでしょ?とか。

またあの人のこと見てるでしょー、とか。


私はまた楽しく返事を書いて、投げ返す準備に入る。




先生が板書を始める。

みんなが姿勢を前に傾ける。


その瞬間に投げた。

いつもと同じタイミング。


なのに……。



『コン』


「あ」



思わず声を出してしまい、口をばっと塞ぐ。

先生が眼鏡を吊り上げた気がしたけどそれどころじゃない。



私の隣に座っていたその人は、

勉強にかなり身を入れていまして、

体の凝りをほぐすために、

伸びをしましたその瞬間だったそうで。


…突然起き上がったもんで頭にクリーンヒット。




別に、当たることはどうでもいいんです、いやよくないけど。

だって紙だし当たってもそんなに痛くないだろうし。

問題はその紙が床に落ちたということで。

内容は見られたらかなりまずいものということで。



その人、は。

私のことを軽く見やると。

無言で紙を拾い上げて。

「没収」と言った。


……終わった。

その場でちくられなかっただけましか。

後で持っていかれれば同じことですが…。




何でそんなに真面目なの…。


ねぇ、学級委員さん!!!





そう。

私の隣の席の人。

丁度紙を拾い上げてしまった学級委員。

それこそが私の好きな人、大石秀一郎です。



……終わった。

色々と終わりましたよ。


内容は見られればまずいし。

まず授業中手紙回してる悪い子ってことはバレたし。

どっちに転んでも、まずいものはまずい。


まずいー!!!





その時、チャイムが鳴って授業が終わった。

大石くんは、即行で突っ掛かってきた。


さん」

「……はい」


声が小さい。

大石くんの背中の後ろでがわたわたしてる。



うん。

分かってますよさん。

まずいですね。

まずいですね。

怒られますね。


…怒られるだけで済んだらいいけどね!!



「授業中にこんなことしてて、いいと思ってるのかな」

「いや、あの、それは……」

「これは先生に届けるからね」


ああ。

がくし……。


でも、先生に届けられる方が、まだ良かった……かも。


ははは。

助かったのか?

いや、いっそのこと見られた方が良かったのか?


とほほ。



大石くんと先生が話している。

先生は小さな紙切れを受け取った。

そして、開いた。


やめろ!

読むな!!

うわ、最悪な事態だ!!



…」

〜!!!」


私たちは手を取り合う。

そして、その場を固唾を飲んで見守る。


すると。

先生は。

爆笑した。


「なんだ、大石、これは。ラブレターの見せつけか?」

「え?ラブレター!?」

「若いというのはいいことだな。青春しろよ」


先生は愉快そうにお腹を揺らしながら笑うと去っていった。

ちなみに、手紙は大石くんに返却されている。


ああ…なんか、色々と面白いことに…!(ヤケ)



「あ、大石くん手紙開いちゃいました」

「ましたね」


棒読み調に私たちはその場を実況中継。

その場を見守る。


すると。

大石くんは。



「………」


「しかめっ面してますね」

「してますね」



半分ヤケ。

私はそのまま語尾をリピートする。


と。



「…っ!」


「あ、赤面した」

「しましたね」



苦笑交じりに微笑。



だって。


私の書いた手紙の内容は。


こんな感じ。



『授業なんてマジメに受けてらんないって!

 好きな人観察してる方が楽しいも〜ん。

 隣の席だなんて、マジでラッキー♪』



ついでに補足。

私の席は窓際。

隣の席といったら、一つしか有りません。



「………」

「……えへ?」


視線をぶつけてくる大石くん。

私は指を頬に当てて応対。


ヤケです。

ヤケですってば。


すると向こうは。



「…授業は真面目に受けろよ」



一言残して、後ろを向いた。


顔が赤くて。

説得力が全く無いのが。

ちょっと面白かった。


「顔赤いよー大石」

「………」


がツッコむと、大石くんは振り返った。

私と目が合った。


私も赤面してしまった。




これだから


手紙のやり取りと

好きな人を観察することは



やめられないと思った。






















あーあっついあっつい!(パタパタ)
なんだこれは…青春ラブもいいところだよ!

手塚に比べて大石は随分と頭が柔らかそうな印象ですけど。
(表情や体だけでなく/手塚君に失礼です)
たまには堅物だっていーじょん?
彼女が出来たことによって丸くなったってのも悪くない。
ちょっとキャラ違うけどね。まあいいや。

まとまりないなー。あはは。


2004/04/29