気になる人が居ます。


好きな人っていうのとは、また違うと思うけど。



だって恋とか、愛とか、恋愛感情とか。


そういうの、良く分かんないし。




それより今は、ノート写しに必死です。











  * お探し物はなんですか? *











「げっ、消しゴムねぇ!」

「貸してやろっか?2個持ってるし」

「マジ?なんで2個も持ってんの」

「えー、拾った」



授業中、そんな会話が私の後ろの席で繰り広げられているのを聞いた。

お調子者系統の男子二人です。


拾ったって……。

落とした人は困ってるかもしれないのに。

それで貰っちゃうんだ…。


ま、消しゴムなんてまた買えるしね。



……あ。

余所事に気を取られてたら文字間違えた…。



筆箱から消しゴムを取り出して。

間違えた文字を、綺麗に消した。





それが余所事ではなくなったのが、その日の最後の授業。





消しゴムを使おうと思ったら。



「(……あれ?)」



筆箱を覗く。

辺りを見回す。

ポケットに手を突っ込んでみる。


……ナイ。



「(あれー!?)」



どこ行っちゃったんだろう、どこにもないや。

落としたかなぁ…。



まあいいや。

後で探そう。



間違えた文字は、そのままにされた。






そのまま放課後。

私は、丁度教室掃除だった。


良かった…それなら探せるね。




しかし…どうやら教室にはなかった様子。


んー???




それの前の授業…あ、理科室か。

後で理科室に行ってみよう、そうしよう。






  **





で、理科室。

キョロキョロと見回しつつ教室内を歩き回る。

自分の席の周りを特に丹念に。


だけど……ない。

先生の机の上とかも見てみたけど、ナイ。



…諦めるか。

別に、ただの消しゴムだし。

また買えばいいや。

それだけのこと。



と。




さん?」

「あれ、大石くん」



その時部屋に入ってきたのは、大石秀一郎くん。


好きかは分からない。

でも、ちょっとだけ気になる人。



「どうしたの?」

「いや、委員会の仕事で。電気消して回ってるんだ」

「あ、ごめん!私すぐ居なくなるから。もういいよ」


そういって教室の入り口に向かっていった。けど。


さんは…どうしてここに?」

「え?えっと、消しゴムなくしちゃって。探しに来た」

「そうか」


大石くんは一旦は納得したみたいだったけど。


「で、見つかったのか?」

「…ううん」


首を横に振った。


自分の声が少し沈んでいる気がした。

別に、消しゴムをなくしたことはどうでもいいんだけど。

…また買いに行くのが面倒なの。(ごめんなさいそれだけです)


なのに。



「じゃあ、探すの手伝うよ」

「えぇっ!?いいよそんなの!」



必死に止めようとしたけど。

大石くんは「いいよ。二人で探したほうが早いだろう」って…。


嬉しい、けど、申し訳ない…。



「ごめんね…」

「いや、俺がやりたくてやっていることだから」



大石くんはそう言って笑ってくれた。

それだけが救いだった。



ごめんね。


ありがとう。





二人で探して、3分ぐらいが過ぎた。

だけど、やっぱり見つかりそうにもない。


「大石くん、もういいよ」

「でも…」

「それに、まず理科室で落としたかも分からないし」


そうか、と大石くんはやっぱり一旦は納得したけど。


「じゃあ教室とか…」

「今日掃除当番だったけど見つからなかった」

「うーん…」


今度はさすがに、大石くんもお手上げの様子。

他に教室移動はなかったしなぁ、とか呟いてる。


でも、探してくれただけでも嬉しかったから、さ。

気になってる人と、これだけ一緒に居られたってだけでも嬉しい。

だからそれでいいや。


こんなに熱心になってくれるなんてね。

やっぱり、大石くんのこと……スキ、かな。

なーんちゃって!


とりあえず、気持ちを一転しまして。

今日の帰りは、文房具屋さんにでも行こっかな。


「大石くん、本当にいいよ」

「でも、消しゴムがなかったら困るだろう?」

「う、うん…」


消しゴムだけでこんな大事になってるのがなんだか気恥ずかしい。

思わず顔を伏せた。


でも、待って。

確かになかったら困るけど、買いに行くから平気だよ!


と、付け加えようと、した。


ら。




「…大石くん?」

「ちょっと待っててな」



大石くんは鞄を下ろすと、何かを探し始めた。

………?



「ほらっ」

「え?わっ!」



突然投げられたそれ。

咄嗟だったので取り落としてしまった。


ごめんと謝る声が聞こえる。

大丈夫と伝えて拾い上げた。


それは…消しゴム。


「これ……」

「あげるよ。俺、二つ持ってるからさ」


え……。

そんな。


優しすぎだよ大石くん。


「でも、どうして二つも持ってるの?」


まさか…拾ったんじゃないよねぇ…?



「ん、念のため予備で持ってるんだ。こういう時のためにな」



そう言って笑った。

だから気にしないで使ってくれ、とも付け加えられた。


……どうしよ。

優し。



決めた。

ううん、決まってる。


気になってるだけじゃ止まらない。


私。


大石くんのこと……好きだ。



「…大石くん!」

「ん、どうした?」

「よかったら、一緒に帰らない?何かお礼したいし…」



そう伝えると大石くんは、喜んで、と言った。

やったね!

こうなったら、さん、頑張っちゃいます!


それから…この消しゴムは、大事にしよう!

だって、買えないものだもんね。

消しゴムは買えるけど。思い出は買えないから。


そしてこの想いも、大切にしよう。




自分の消しゴムを見つける代わりに、

彼の消しゴムを手に入れた。


文房具屋に向かう代わりに、

アイスクリームショップへ行った。


気になる人じゃなくなった代わりに、

その人は私の好きな人となった。


好きな人じゃなくなった代わりに、

その人は恋人となった。



……そんなのも、ありでしょう?






















微妙に現実込みとも言える。現実↓
「最近どうよ?」「消しゴムなくしてショック…」
「オレ二つ持ってるからやろうか?」「マジ!?」
「…欲しい?」「欲しい!(即答)(がめつい)」
「じゃあやるよ」「ありがとーv」
……あっけな。(笑)

大石だったら、くれるより前に一緒に探してくれそうだなと。
そんなわけで拡大していきました。

消しゴム、普通に使いますごめんなさい。(笑)


2004/04/29