* 大きく背伸びして届け空へ *
「今日、誕生日だっけ」
「うん」
今日は日曜日。
草原に腰掛けている私たち。
ゆったりと話して笑い合ってる。
こんなことができるから、幼馴染って得だと思う。
ただ、恋愛対象として接近するには、少しの苦労と努力が必要です。
「プレゼントとか、準備するべきだった?」
「全然。憶えててもらえただけで嬉しいし」
そう言って笑った。
横顔が、カッコイイというよりかはかわいかった。
そこら辺が辰徳らしいと思う。
「じゃさ、なんか一つだけお願いしてよ。何でもやるから」
「一つだけ?何でも?」
聞き返されたので「うん」と答えた。
勿論、何でもっていってもあまりに酷いものは却下するけど。
ま、辰徳は変なこと言うような人じゃないから安心だな。
辰徳は苦笑いをする。
「何も浮かばないな」
…変なことが言えないもんで、逆に困った状況になった。
これだけ欲深くない人も珍しいんじゃないかなぁ。
よく、分からないけれど。
「何もないのぉ?夢とか、希望とか…なにかあるでしょ!」
「うーん…」
だけど、それはには叶えられないことだよ?と辰徳は言った。
なるほど。それじゃあ私には頼めないわな。全く理に適ってる。
「叶える叶えないは別にして、言ってみてよ」
「えー…」
辰徳は、一瞬戸惑ったみたいだったけど。
立ち上がって空見据えると、言った。
「大きくなりたい」
それが、私が辰徳の口から聞いた、
初めての欲求だということに気付いた。
草原に腰を下ろして座っている私からすれば、
立ち上がっている辰徳は大きくて、立派で、格好良くて。
充分大きかった。
「…大きいよ、辰徳は」
「ほんと?」
「うん。そう思う」
「んー…だけど、もっと大きくなりたいんだ」
話している間は私と視線を合わせていた辰徳だけど、
言い終わると、また空を見上げた。
蒼い空と辰徳の横顔が重なって、
あまりに眩しくって目を閉じそうになった。
大きくなりたい。
勿論、身長のことではないって私も分かる。
それも含まれているのかもしれないけれど、
本当に示すのはそこではない。
もっともっと。大きくなりたいって。もっと。
私は立ち上がった。
辰徳と肩を並べるようにした。
10cmも差はないにしろ、結構な違いだった。
「辰徳は、大きいよ」
「そんなことない」
「そうだね、間違えた」
自分では否定していたものの、
突然私までもが意見を変えると辰徳は眉を顰めた。
私は顔を横に向ける。
向こうもこっちを見ていたから、正面と正面向き合って。
「まだ小さい。だけど、その分たくさん大きくなれる」
ね?と笑顔を向けてみせると、
辰徳は横顔見せて微笑んで「ありがとう」と言った。
決して小さくはない。
だけど、これから広がる可能性に比べたら。
まだまだ小さいよ。
大きいよ、辰徳は。
だけどもっと大きくなれるよ。
だからずっと背筋を伸ばしていて欲しい。
切実にそう思った。
「あ、そうだ。忘れてた」
「?」
私は少し背伸びして。
ちょっとだけ高い肩に手を掛けて。
軽ーく頬に、唇を当てた。
「ハッピーバースデー、辰徳」
その頬に手を当てて呆然としていた辰徳は、
硬直が解けた数秒後、太陽みたいに笑った。
後ろには蒼い空が広がっていた。
もーりーくーんーかーわーいーい〜。(ぁ
主人公攻だっていーじょん。
たちゅのりは受だい。てやんでぃ!
リョーマは「強くなりたい」って言うけど。
この子に言わせたかった言葉は「大きくなりたい」なんだなぁ。
とにかくお誕生日おめでとう。だいちゅきv
2004/04/17