「あ」



気付いたのは、既に一日が半分終わった後。


まだ間に合う。


日本だって、まだ今日だ。



でも…待てよ?


どうせだったら、もう少し待ったほうがいいかもしれない。




…時間差に感謝することだって、たまにはあるわけだ。











  * 笑顔で無限大嫌い *












「もしもし、シュウー?」

「……もしもし」


眠そうな声が聞こえた。

あれ、もしかして寝てた??


ただいまドイツ5時過ぎ、日本12時過ぎ。


寝てる…か。



「ごめん、起こしちゃったね…」

「いや…。何か用か?」



声が随分眠そう。

でもごめんね…今しかなかったんだ。




「シュウのこと…もう嫌い。別れよ」


「……えっ?」



突然飛び起きたかのように、シュウは声を張り上げた。

暫くは動揺してあーだのうーだの言ってたけど
落ち着いてくると、逆にそれもなくなった。


「どうしてだ。まず、理由を聞かせてくれ」


もう目はしっかり覚めたのか、はっきりとした口調だった。



しかし…実はあんまり笑えない冗談だったんだけど。


いや、冗談というよりかは・・なんだけど。



「あのね、シュウ」

「ああ」


身構えてる様子が感じられたけど。



「アプリルシェアツ」

「……は?」



日本語訳より、英語訳の方がいいかしら?





 「エイプリルフール!!」





遠くの方で、はぁ、と溜息が聞こえた。



、お前な〜…」

「あははごめんちっ。許して?」

「…そうじゃなくて」


ふぅ、とシュウはまた息を吐いた。



「この前のこともあったし…本気で心配したぞ」



あ……。

ごめんなさ…


ってここで謝っちゃダメでしょちゃん!


エイプリルフールの時ぐらい真顔で嘘吐けるようにならなくてわ。



だけど……。



「ごめんね?」


「いいよ、気にしてない」



うーん…なんか、しんみりになっちゃった。


ねぇシュウ、知ってる?

私が昔から望んでたこと。


笑顔で大嫌いで言えたらなって。



今日なら大丈夫かなと思って電話したんだけど

やっぱり…無理みたいだね。


「…ほんとは傷付いたりしてる?」

「ちょっとな」


あはは、と笑って誤魔化したけど。

これはきっと誤魔化しちゃいけないことだね。



「ねぇシュウ」

「ん?」

「なんでこんな時間に電話掛けたか分かる?」



一瞬間があったあと、シュウは

「学校から帰ってきたらその時間だったから…か?」と訊いてきた。

私はそれを否定した。


「うん。本当はもっと早く掛けられたんだよ。だけどね…」





 シュウ。時計、確認して。




 ほら、そっちは、明日でしょ?




「…ずるいな、は」

「やっぱ?」



そう。

日本はもう明日。

エイプリルフール、嘘を吐いても許される日は、もう終わってる。


私が「大嫌い」と言っても、

向こうは「大好き」と答えるしかない。


そんな時間差に感謝する。

言葉が0.5秒ほど遅れる国際電話も、今日なら許せる。




もし、冗談だとしても。嘘だとしても。


私、シュウに“嫌い”なんて言われたら、平気で居られるのかな?


そんなことを考えてるのに、こんなこと言っちゃって、ごめんね。


だけど、ずっと前から望んでいたことだから。





「あたし、シュウのこと嫌い。そっちは?」

「……好きだよ」




含み笑いを堪えるのは必死だった。

ああ、愉快×2。



一年に一度だし。

数年後にはできなくなってしまうことだし。


押ーせ押せ押せもっと押せー。





「寧ろ大嫌いなんですけど。そっちは?」





私の頭の中には、


予想していた回答があって。


寧ろそれぐらいしか言うことはないだろうと思っていて。


予想と期待が、両方ともその言葉に集中していたんですが。





 「愛してるよ」






…心臓飛び出るかと思った。


全く、予想通りに行かないね。

だから楽しいのかもしれないね。



「……反則」

「そっちに言われたくないな」



この人には勝てないなって。

そう思ってしまう。



「もちろん嘘は吐いていないぞ」なんて言うもんだから

泣き出すかと思った。


だけど笑顔を作って、

「私は嘘吐いてます。大っ嫌い!」と言った。




時間差に感謝した。そんな日。






















うぉーなんだこれー。(滝汗)
微悲恋気味?でも甘々。この辺が大稲。

書きたいだけ徒然と書いたら滅茶苦茶…。
素敵に計画性のない人間だ。笑顔。
ドイツはあと20分ほど4月1日。早く寝ろ。笑。

某方と声茶をやりまして、きねん↑びを聴きました。
ああ、記念日…笑顔で大嫌い記念…!(何)
大石好きだー。もうわけわからん。ぎゃふひ。(何)


2004/04/01