「待ってるから」って言ったくせに。


ウソツキ。





私は絶対に悪くない。











  * 「待ってるから」 *












「今学期一杯でさんはドイツに引っ越します」


クラス中にどよめきが走ったのは、10日ほど前。
ずっと隠し続けてきた私だったけれど、
そろそろ言わなきゃいけないって、先生が。
クラスのみんなには、寂しがられるどころか怒られたりした。

そして今、学年集会。
明日は一学期の終業式で、それで私の青学ライフは終わり。
8月からは晴れてドイツのハイスクール生よ。
上手くやっていけるか、不安もあるけど。
だけどきっと大丈夫。


不安もあるけど。

寂しいけど。

たまには戻ってくるから、憶えててね?


夏休みの間の諸注意とか、宿題の話とか、
今学期の反省と来学期の目標とか。
もうほとんど自分には関係ないや。
そう思って、体育座りしたままぼーっとしてた。


「おい、こらそこ!話を聞け!色紙なんか回してるんじゃないよ」


怒ったような先生の声ではっと顔を上げた。
先生の視線は、うちのクラスに向けられているようだった。
私は背の順が一番前だから…振り返らない限り後ろの様子は分からない。
特に振り返りもしなかったから、事実は分からない。

だけど、私の前の学級委員二人が顔を見合わせて焦った顔をしてて、
ああ、やっぱり怒られたのはうちのクラスなんだ、と思った。
学級委員の男子の方…大石くんは、斜め後ろを振り返ってきた。

目が合った。
微妙な笑みをされた。
仕方が無いので、微妙な笑みを返した。


ああ。もしかしたら。
…もしかしなくても。私宛なんだな。

気付いちゃったジャン。先生のバカ。
きっと明日、別れ際に渡されるんだわ。
全部分かっちゃったよ。感動が半減した。

でも、嬉しいからいいや。

そう思って、また膝の上に腕を組んで顔を乗せた。



何枚も紙が配られ始めた。
仕方がないので、私は顔を上げた。
<夏休み中の注意>とか書いたタイトルのプリント。
一枚取ってはまた回して、の繰り返し。

凄く虚しかった。




そんな時間も過ぎた。
教室に戻って、お弁当の時間だ。

全身が痺れてるというか固まってる。
立ち上がって、私は背伸びをした。

その時、地面に何かが貼られているのに気付いた。


小さな紙。付箋ってやつ?
上にのりがついてる、メモ用紙。
きっと、配られたプリントの仕分けのために貼ってあったのだろう。

しゃがんで見てみた。
すると、それはメッセージだった。
危うく気付かずに去ってしまうところだった。


へ ドイツに行っても頑張れよ  大石』


それだけ。
そのたった一言。
だけど、久しぶりに感動した気がした。

こんな小細工する人だったんだ。
なんか意外だな。そう思った。

その付箋を地面から剥がした私は、生徒手帳の内側に貼った。


、教室帰ろっ!」
「はいはい」

いつも通りの笑顔で振り返ってみせたつもり。
飽く迄もつもりで、真実は分からないけど。
みんなは特に反応も示さなかったから、多分上手くいってた。

「ねぇ…さっきの、気付いちゃったよね」

さっきの。
きっと、色紙のことだと思う。

「ごめん、バッチリ。…あーあ!あの先公の所為で夢が崩れた」
「っていうか、今まで気付いてなかったの?」
「ぜーんぜん!」
「えー!てっきり気付いたと思ってた」

みんなはショックそうな顔を受けてた。
それじゃあ、本当に驚かすこと出来たのにね、と。

「授業中とか回してたんだよ」
「マジで?」
「うん。気付かれないか冷や冷やモンだったよ」

何しろ、教室のど真ん中に席を位置している私ですから。
授業中は内職活動(手紙を書く・落書きに励むetc.)を
しているから、気付かなかったんだろうけど。

「ま、気付かれちゃったからには仕方が無い。楽しみにしててね」
「うん。ありがと」

階段を上り終えた。
見慣れた教室があった。
明日でさようならする、クラス。



ロッカーからお弁当を出す時、
ちらりと、生徒手帳を開いてみた。
その文字をもう一度見つめてみて。
お礼言った方がいいのかな、と悩んだ。

大石くんはとても良い人だし、話したこともあったけど、
そこまで仲が良い方でもなかったし。
女子の中では馬鹿騒ぎするくせに男子に対しては
自ら話し掛けることの少ない私としては、難しい話だった。
普通に会話はできるんだけど、話し掛けるのは、なんか苦手。

その日が終わるまでに、
何度も「ありがとう」って伝えようと思ったけど、
結局、その日は何も言えなかった。




そんなこんなで、翌日。
ついに登校最終日になった。

時間が経てば経つほど、言葉は言えなくなった。
女子の学級委員のちゃんと話している横顔に向けて
独り言のつもりで、一回呟いて、それで終わった。
絶対に聞こえないように。
自分でも聞こえないくらい小さい声で、一回。


クラスメイト全員に、気を掛けてくれる人。
私なんて特別仲の良い方じゃなかったけど。
それでも親切にしてくれた。

本当に良い人。


もしかしたら私、大石くんのこと好きだったのかな?
そんなことが頭に浮かんだ。

でも、きっと違うと。頭を振って掻き消した。
親切にしてもらったから、余分な期待をしているだけで。
優しい愛情を貰った時の嬉しい感情を、愛と勘違いしているだけで。

だからこれは、きっと違うと。



ぼーっと立ってるだけの終業式が始まった。


校長先生のお話。

生活指導の先生の話。

表彰。

次、各クラスの代表が通知表を受け取りにいく。
うちのクラスの代表は、大石くん。

斜め前の空いたスペースを見た。
いつも、ここに立ってたんだなって思った。
壇上を見上げると、丁寧に礼をして校長先生から通知表の束を受け取っていた。

また視線をスペースに向けた。
暫くしたら、そこに体が現れた。戻ってきたんだ。

次に校歌を歌った。
喉が詰まりそうになる感触に陥って、
途中の部分は歌わなかった。
耳に収めておいて、それで終わった。


教室に戻ったら、クラスでのホームルーム。
最後になりかねない。っていうか、最後か。

さん、ちょっと前に」

何故か前に出された。
更に一言求められた。ので、
「今まで楽しかったです。
 ありがとうございました。
 合唱コンクール頑張ってください。
 えー、卒業式の頃また遊びに来ます。以上。」
と答えた。
箇条書きのようなコメント。
それなのに、拍手がやってきた。

ああ、別れるってこういうことなんだな、と思った。

そうしたら、
「皆さんからプレゼントがあるそうですよ」
と担任が。

ちゃんと大石くんが自席から立ち上がってきた。


一歩先にちゃんが前に出た。

、ドイツでもファイトだよっ」
「もちろん」

例の色紙だった。クラス全員分のコメント。
それを胸の前に掲げて、私はみんなに笑顔を作ってみせた。


そうしたら、次は大石くん。
大きな花束を抱えていた。
うわぁ、こんな大きな花束貰うのなんて、初めてかも…。

さん、向こうでも…頑張って、下サイ」

花束を差し出された。
両腕で抱きかかえるようにして受け取った。

普段は呼び捨てなのに、こんなところだときっちり敬語。
微妙に挙動不審に見える言動が、なんだか面白かった。
パチパチと拍手が響いてる。

「それから…」
「?」

コメントが続いていると思っていなかった私は、きょとんとする。
席で座って見ているみんなも、そうだったと思う。


「えーっと…いや、やっぱりなんでもない。今までありがとう」


右手を差し出された。
私は花束を左手に持ち替えて、その手を握った。

男子が「おい大石、寸止めはないだろ!」とか、
「もっと気の利いたこと言えないのかよ。男だろー」とか。
そんなことを言ってた。
大石くんは困ったような表情を浮かべてそっちを見やってた。
私はくすっと笑ってしまった。


「ありがとっ」


あまりにすんなりと口から出た決まり文句。
後から、もっと感情を込めておけばよかった、と後悔した。



「はい、それでは一学期のホームルームを終わります」


担任がそう言った。
私はせかせかと自席に戻って気を付けをした。

「礼」
「「さようならー」」

半分ぐらいは礼をして、
半分ぐらいは何も言わずに駆け出して。
そうして私の中学校生活は終わった。
残ってるのは、放課後と、ちょっとの夏休み。


人が駆け寄ってきた。

ちゃん、お別れじゃんよー」
「うん。そだね」
「何けろっとしてるんだよ当人が!」

肘鉄を喰らったり。
涙を流されたり。
手紙やプレゼントを貰ったり。

結局、30分近くは喋ってたんじゃないかと思う。


のバカー!引っ越すんじゃねー!!」
「私だって希望したわけじゃないよぅ」

ギャーギャーと喋り散らす。
教室の電気はもう、さっき大石くんが消してっちゃった。


「まあ、3月頃に帰ってくるからさ。遊んでやってね」


みんなが赤い目をして「バイバイ!」と言った。
満面の笑みをしているのが当人っていうのは、
確かに不自然だったかもしれない。
だけど私って、そういうやつなんだ。
人前で涙を流したことなんて、いつ以来だろ。


次は部活のみんなが集まってる先へ向かった。


「遅いー!」
「ごめんなすびー」

いつも通りのギャグを飛ばして。
和気藹々ムードを顧問のぴしっとした言葉に制されて。

みんなに別れの挨拶。
みんなからの一言。
プレゼント。
そして後は写真を撮った。


ここでもまた、20分は騒いだと思う。
1年生で入部して、結局引退するまでやり切れた。
楽しかったな、バレー部。
数ヶ月だけしか関わってない後輩とかもいるけど。
みんな大好き。

「それじゃあね」
「さようなら、先輩」
「バイバーイ!帰ってこいよー!!」

大きく手を振って、私はその場も後にした。
数人はぴょこぴょこと横に着いてきた。

下駄箱まで行くと、別れた。
そうか、同じ部活で仲良い人はみんな違うクラスか。


3年2組の下駄箱。
ここを使うのも、最後なのかしら。
上履きとかもちゃんと持って帰らなきゃね。

横を見た。
学級委員のことで残ってたのかな。大石くんが居た。
それとも待ち伏せしてたなんてこと、ないよね。

特に話し掛けたりせずに、靴を履き替えていた私だけれど、
向こうの方から、声を掛けてきた。

…もう、学校には来ないんだよな?」
「うん」

何を当たり前のことをこの人は言っているんだろう。
さっき自ら別れのコメントまでしてきたくせに。
果てしない疑問であった。

良い人、だけどさ。


「だけど、3月には一時帰国するからさ。ここにも遊びにくるよ」


そう宣言した。
大石くんの顔色が、明るくなった気がした。
思い違いかな。

「本当か?」
「うん。私は嘘吐かないし」

それ自体が嘘かも。
なんて、矛盾のようで正当な言葉に苦笑。

脱いだ上履きを袋に入れる。
それを無理矢理に鞄に詰めていたら、
さっきまで一緒に居た友達が見えた。
私と大石くんが話している事態に気付いているからなのか、
手だけをパタパタを振って、帰っていった。


「待ってるから」


その言葉にはっと顔を上げた。
目が合うと、大石くんは零していた笑みを照れ笑いに変えた。

「楽しみにしてるからな。絶対に…遊びに来てくれよ」
「ん、分かった」

ピースサインを向けた。

さて、私はそろそろおいとましますか…。
っていうか、私逃げ腰じゃない?


なんだか。圧迫感があってさ。二人で話すの。


「それから…」
「?」


まだあるのか。
なんだか、さっきの状況を思い出した。
教室の前に出されていたときの、ことを。

もしかしたら、あの時に言い損ねたことかもしれない。
思い上がりかもしれないけどさ、もしかしたら。


「帰ってきたら、伝えたいことがある」


その後は暫く、間があった。

私は返事に詰まった。
向こうは真剣な表情だった。
だからといって追い詰まった表情ではなく、
穏やかなんだけど、それでいて真っ直ぐな。

「今ここでじゃ、ダメなの?」
「んー…」

大石くんは悩んでた。
だけど、

「来年な」

と言った。


これは。

3月、一時帰国したら。

…会いに来ないわけには、いきませんね。



「それじゃあひとまず。またね」

「ああ、またな。



物を詰め込みまくってパンパンに膨らんでいる学生鞄肩に掛けて、
私はその場を駆け出した。


花束が風に揺れる。

髪の毛が何度も頬をなぶる。



思い上がりかもしれないけど。

いや、それ以前に。

向こうがどうとかの前に。



 もしかしなくても。

 私、大石くんのこと好きだったんだ。



いや、好きになったっていう方が正しいかな。
別れ際になってそうなるだなんて、皮肉。

あと、半年ちょっと。一年弱。
別れて数分後に再開の時をいとおしむなんて、皮肉。



だけど私は、待ってるから。


あの言葉は、信じていいんだよね?





  **





8ヶ月が過ぎた。
私は、再び日本の地を踏んだ。

ドイツでは、色々なことがあった。
だけど、気付いたら大石くんのことばかり考えている自分に気付いた。


好きなんだと思うと、余計依存してしまう。
意識することがなければ、そもそもこれもなかったのかな。

それでも私は言葉を信じて、待って。


思い上がりかもしれないのに。
こんなことを思ってる私って、変かな。

もしかしたら寂しかったのかもしれない。
ドイツの生活も好きだけれど。
日本に帰れるのは…また会えるのは、いつだろう。
そればっかり考えてた。

だけどね。3月の頭になって。
もう、日本に帰るのまであと1週間ってところで。

気になる人が出てきたの。
かっこいいんだけど、実はコドモなところがあって。
意地悪なんだけど、本当は優しくて。
そんな人。


だけど、そんなのそんな想いは、飛行機に乗った頃には消えてた。



そして3月半ば、私は日本にいるわけです。
あの人の近くに居るわけです。


卒業式は、みんなが卒業していくのを見送っただけ。
私は、卒業するわけじゃない。
もうここは、ずっと前にサヨナラしたはず。

だけど私はまた、ここに居る。


教室まで行って、元クラスメイトとバカ騒ぎした。
みんなが「バイバイ」を言い合ってる中、
私だけが「久しぶり」という言葉をもらえたのは、
ちょっと得した気分で、寂しかった。

懐かしい友達とか。
忘れてたような奴らとか。
みんなみんなで大騒ぎした。
写真撮ったり、叫んでみたり。


ああ、別れるってこういうことなんだな、と思った。



だけど…結局。

大石くんは何も言ってこなかった。
何度か、目があったのに逸らされた気さえする。


なんだろう。

なんだろう。



待ってるって言葉、信じてたよ。

だけど、何も訊き出せなかった。

向こうも何も、言ってこなかったんだよ。




私がいけないのかな。

待ってるって言葉、信じてたくせに何も訊き出そうとしなかったから。


私がいけないのかな。

待ってるって言葉、信じてたくせに一瞬視線を逸らしたから。



私がいけないのかな?








 ―――…いつの間にか、それから更に一年が過ぎた。






結局、一度気になりかけていた人のことは好きになれなかった。
好きだったといえば好きだったんだろうけど、
それはほんの短い期間だけのこと。
最終的に心に戻ってくるのは大石くんのことで、
私はなんだか騙されたような気持ちになった。


ねぇ、大石くんは、何を言いたかったの?

あの時伝えようとしてためらった言葉は、何?



その時すぐに訊かなきゃダメだったのかな。

一時帰国の時に意地でも聞き出すべきだったのかな。

私がいけないのかな。




何か、嫌になった。

悩むの、もう、疲れた。


忘れよう。大石くんのことなんか。


もっと周りの、身近なことに目を向けた方が…きっと幸せ。






  **






『同窓会をやるんだよ』


ちゃんからメールが届いた。
卒業一周年記念、だって。
私は勿論行けることもなく。


『楽しんできてね』

それだけ、返した。



そうしたらね、こんな言葉がきたよ。


『ねぇ、電話してよ』

『それまではカラオケで騒いでる予定だから…10時頃で、いいかな?』


日本の夜10時。
時間差を換算すると、お昼の2時。
学校の休み時間に当たる。


『分かった。その頃に電話、掛けるからね』


メールのやりとりは、そこで一旦終わった。




そうか、卒業してから一年が過ぎ去ろうとしているのか、と実感。
結局何も訊けなかったあの時から、一年。
卒業していくみんなを見て涙してから、一年。


もう一年も経っちゃったのか。
まだ一年しか経ってないのか。
パラドクスのようなその言葉は、私の真実を全て抱えていた。

短いような長いような。いうなら適度。
そんな一年間。



カレンダーに印をつけた。


3月18日の欄に、『同窓会』と。

10時って書こうかな。
それとも2時って書こうかな。

悩みに悩んだ結果、結局時間は書けなかった。




その後、私はふわふわと浮いたような生活をした。


家では無意味に中学の制服を着てみたり。

まだ胸ポケットに入っていた生徒手帳。
取り出して微笑んで、開いて絶句して、
涙が出そうになって戻して。


学校でも動きがあったり。

一度好きになった人、引っ越すかもって耳にした。
はっきりしてないような雰囲気だからかな。
全然気にならなかった。もう全く好きじゃないのかな。
それより気になることが、あったからかな。


数日前からは情緒不安定になり。

ぼーっとしていることが多かった気がする。
おっちょこちょいで怪我はするし。
もしかすると友達に心配掛けたかも。
思い上がりかもしれないけどさ。


前日は妙なほどに落ち着いてた。

嵐の前の静けさっていうのかな。
久しぶりに物事を客観的に見れた気がする。




明日だよ。


明日だよ。




まるで遠足の時みたい。

寝たのは1時近かったのに、起きたのは6時前だった。





そして当日。
私の取った行動、相当不審だったと思う。



例えば友達と話しててもさ。

「ね、今日本何時?」

間違えないように、確認です。
特に不思議に思うことなく、答えてくれた。

「えっと…8時間差だから…」
「もうすぐ夏時間だよね」

ああ、今月末には一時間分近付けるね。



例えば授業の合間でもさ。

「(10時に8時間差だから…)1、2、3…」

何度も確認したはずなのに、また確認。
ぶつぶつと数えてたら。

「今日は18日だよ」


18日。

3月18日。

カレンダーにも印をつけた、18日。


3月第3週目の金曜日。

卒業して、もう一年が経つんだ。


「18日?ああ、そうだよ18日だよ!あっはっは!!」
「うわー、テンション高っ!」


私は馬鹿笑いした。
周りは釣られて笑ってた。


みんなで笑い合った。
幸せだった。



だけど冷静に考えて、その時の私。

確かにさ、久しぶりにみんなと話せるのは、嬉しいことだけどさ。
それ以上に、辛い展開になる可能性、気付けたはずだよ。


気付かないで浮かれてた。





ついに昼休み。
お昼ご飯、食べて。
いつも通り、雑談して。

時計何度も確認して、私は外に出た。
ポケットから取り出したのは、携帯電話。
登録してある番号を選択して、耳に当てた。


約束の時間に、5分間フライング。
まだみんなは歌ってるのかな。
16歳は最高でも10時には追い出されるから延長はないと思うけど。


そういえば、去年に卒業の打ち上げをした時は、
一つ目のお店で追い出されたな。
「16歳未満は8時までです」って。
当時はみんな15歳で、その時は既に8時を過ぎてたから。

次のお店に入った時は、
一番大人に見える子が先頭に立って、
別の子のお姉さんのフリをして17歳って言って、入ったんだな。
笑っちゃうような思い出。
あの時は、色々と無理なことをしたな。

禁止なのを知っていながら、
マクドナルドのハンバーガーは全員分持ち込むし。
法律違反と知りながら、
未成年の癖にチューハイなんか買ってくるし。


数人酔っ払いが出ながら、
食っちゃ歌いのどんちゃん騒ぎ。
狭い部屋しか空いていないのに15人ぐらい押し込んで入ったら、
それはそれは熱かったのを憶えてる。
お酒なんて飲んでない私も、顔が真っ赤になった。

大勢居たから、曲はほとんど入れられなかった。
マイクなんてあってなかったようなものだったから、
全員で大合唱してたといえばそうなんだけど。


唯一、私が入れた曲。
春を感じさせるその歌は、
一年を過ぎた今でも歌うと涙が出そうになる。

そういえば、その歌を歌った時。
二本あるマイクを握っていたのは、私と、大石くんだったな。

あの時はとにかく大騒ぎで気付いてなかったけど。
もしかしたらこれって、凄いことだったんじゃないのかな。



電話が繋がって、はっと現実に戻る。
激しい雑音の中、ちゃんが出た。

『もし・――…?』
ちゃん?なんか、電波悪…」
『…まねー、丁度歌・・て部屋かっ…るところ』
「あー、そうかそうかー」

途切れ途切れの言葉を拾って、文章を構成する。
多分、今から部屋を出るところなのだろう。

「あのねー、こっち授業があと10分足らずで始まっちゃうんだわ」
『えー、マジで?』
「数分ぐらいなら遅刻しても平気」

私はそう言って笑った。
いけないんだけどね。
本当はいけないんだけどね。
だけど特別な事例なので、許してください。

特別っていっても、個人的なことなんだけどサ。

『なんていうか…一年経ったねーおわっ!?』
っ!元気?私だよー分かるワカルっ???』
「おー分かる分かる」

代わる代わる聞こえてくる懐かしい友達の声。
遠くからも「ちゃーん!」とか聞こえる。
そういえば声がはっきりと聞こえるようになったな。
建物から出たとかそういうところだろう。

ああ、やっぱり電話掛けて、良かった。
卒業したって、こうして繋がっていられる。

より深い繋がりを求めない限りは、その状態でも満足だから。


、元気かー?』
「元気だぞー」

のんびりと会話。
そしたら「俺にも話させろ」と強引に割り込んできた誰か。

『もしもしー!彼氏できたかー?』
「あっ、その声はだな!?こらっ。立ち去れ!!」

ケラケラと笑う声が聞こえた。
前から変わらんなぁ、アイツは…。

代わる代わる。
何人を相手にしたかな。
最低でも10人には話したと思う。


視界では、人々が校舎内に入っていく。
ちらりと時計を確認した。
ああ、あと2分で授業が始まる時間だ。

もうちょっとだけ。
もうちょっどだけ。


…あれ。

そういえば、あの人の声を聞かないけれど。

同窓会には来てないのかな……大石くん。



と思った矢先。


『…もしもし、か?』
「あ、大石くん…」


なんだか気まずい。

だって、待ってるって、信じてるって。
なのに結局、去年の今頃、私たちは特別な会話、何もしなかった。


向こうも喋り難いだろうなと思ったら。


『えぇとな、無事卒業したぞー』
『違ぇよ大石。一年経ったんだよ』
『あ、そうか。こりゃ大変。はっはっは!』

「………」


ああ。
コイツ……。
確実に酔っ払いだ。この法律破りめ。
といっても自ら飲むタイプじゃないから、飲まされたに違いない。

「大石くん、お酒飲んだでしょ」
『お酒?ああ、飲んだとも飲んだとも…いや、飲んでない』

支離滅裂。
私は思わず大爆笑しそうになったけど耐えた。

『酔ったついれにいいこと教えてやろうか?』
「酔ったついでね、ハイハイ」

やっぱり酔ってんジャンよ。しかも呂律回ってないし。
腹の底で笑う私に、大石くんは。




『俺、のことずっと好きだった』




その口調は、はっきりしていて。
それまでへらへらと喋っていたのが不思議なくらい。
耳に飛び込んできて、脳の中を走り回って、
目のずっとずっと奥の何かを、強く刺激した。


「何…言ってるの?」
『中3の頃から』

『お、大石秀一郎クン大胆告白だー!!』
『もっとやれー』


遠くから、囃し立てる声が聞こえる。
何。なんなの。



そうだよ。

こうなること、予想できたはずだよ。


それなのに、何にも気付かないで浮かれてた。




私…私は?

私はどう思ってるの、大石くんのこと?




「…っ私、もう授業が始まるから」
、聞いてるか?』


聞くのはそっちだ!
無理矢理電源を切ってやろうとしたとき。

女の子の声に変わった。ちゃんだ。

『ごめん、!もうコイツ酔っ払っちゃってダメだ』
「みたいだね」


一瞬、沈黙。
…もう少ししたら、酔いは冷めてくれるかな?


「一時間後ぐらいになっちゃうけどまた掛けていい?」


そう訊くと、ちゃんは短くオッケ、と答えて電話を切った。


電話を見つめて、電源を切って。
無造作にポケットに突っ込んだ。

教室に戻った。
少ししてから、先生が教室に入ってきた。




何。

なんなの。

大石くんは何がしたかったの。




意識はどこかに飛んだ。
授業中はあまりにぼーっとしてて。
いつもは大騒ぎしてる私だから、不審に思われた。






何か、嫌になった。

悩むの、もう、疲れた。


もっと周りの、身近なことに目を向けた方が…きっと幸せ。





休み時間になって。
先生とか、クラスメイトとか、沢山心配してくれたけど。

私は、笑顔を返して誤魔化すだけで。
適切な言い訳はできてなかった気がする。


即行で外に飛び出して電話掛けた。

大石くんにそのまま掛けたかったけど、
番号が分からないので仕方なくちゃんに掛けた。
だけど出たのは、驚くことに大石くんで。


『ごめん…さっき。随分…その…』
「うん。酔ってたね」

向こうの困った顔が浮かんだ。

酔ってテンションが上がりまくった反動で、
今は随分と沈みモードに入っていることが窺える。



私は…どうだろ。
さっきまでは随分と沈みモードだったけど。
一度振り切ってしまえば、寧ろハイテンション。

いや、ハイテンションというか…。


とにかく、ウジウジ悩むのはやめようってこと。



『だけど…言ったことの訂正はしない』
「―――」


つまり。
さっきのことは覚えているわけね。

なら話は早い。
どうせ休み時間は数分間だ。
さっさと蹴りをつけてしまおう。


「どうして、それを…引っ越す前に言ってくれなかったの?」
『暫く会えなくなるのに、悩ますようなことしたくなくて』


さすが、大石くんらしい思いやりだったと思う。
でもどちらにしろ悩むってことになったっていうのは、皮肉だね。


「それじゃあ、去年の3月には?」


訊いた後には、沈黙があって。

大石くんは、凄く小さな声で言った。
周りには訊かれたくなかったんだと思う。
だって、きっと…っていうかほぼ確実に、本人が近くにいるから。


『去年の今頃は、その……と、付き合ってた』


…嘘だ。

嘘だ。


この人は嘘吐きだ。



「あれだけ思わせぶりなこと、言っておいて…?」
『……ごめん』


私の声は震えてた。



謝らなくていいよ。

嘘吐いたこと許してあげるよ。

だから早く、否定してよ。

本当のこと言ってよ。


ねぇ。


聞こえてるの?



「それじゃあ…さっきの言葉は、過去形ってことで宜しいのね?」


確かに、大石くんの言葉、過去形だった気がする。
好き“だった”って。
そうか。前は私のこと好きでいてくれてたんだ。

でも、待ってるって言葉は守ってくれた?
私は、ずっと信じてたんだけどな。


と、思ってたら。
大石くんはこんなことを言うから、困る。


『…今も、好きかもしれない』


そんな曖昧な言葉なら欲しくない。

だけど、ちょっとだけ嬉しくて。
それが嫌だった。


「…ちゃんは?」
『告白されて、付き合ってたけど…本当は俺』


…言うな。

言うな。

その先は言うなってば。


ねぇ。


聞こえてるの?



『ずっと、好きだったのはだけだ』



…嘘吐き。


嘘吐き。



この人はウソツキだ。




「私も、大石くんのこと好きだったことあったよ」




この人はウソツキだ。






「だけど、今は別に、好きじゃない」






何か、嫌になった。

悩むの、もう、疲れた。


もっと周りの、身近なことに目を向けた方が…きっと幸せ。



だから、もう、やめよ。

無かったことにしよ。




「今は、ちゃんとはどうなってるの」
『…付き合いは三ヶ月も続かずに終わったよ』


だって。

ちょっと待って。
3月に帰った時は、付き合ってた。
そして、三ヶ月ぐらい付き合ってた…。

それって、私に気になる人が出来てた、その頃?



待ってるって言葉があったのに、一瞬視線を逸らしたから。

それがいけなかったのかな?



のことは置いておいて…俺はずっとお前が』
「もう授業に戻らなきゃ」


無理矢理会話を終わらせた。
向こうは、「!」と言った。

ちゃんのことは、そんな風に呼ばないくせに。



一度で良いから、名前で呼ばれて見たかった。




「バイバイ……シュウくん」




相手が何かを言う前、電話を切った。

もしかしたら、この切れた電波の向こうでは、
私の名前が、何度も繰り返されてるんじゃないかなんて。

思い上がりなんだろうけどさ。





教室に戻った。
なんだかすっきりした。
開き直って元気になってきた。

嫌な過去を断ち切ったぞー。
そんな達成感に包まれてた。

もしかしたら思い上がりかもしんない。
だけど、私ってそんな奴だったよね?
そう思いながら、授業中は馬鹿みたいに騒いだ。


そうした方がみんなが安心するだろうし。
何より、それが本当のアタシなんだから。


授業中はさ。
何度か自分の世界に入りかけたけど。
手癖悪くずっとケータイ触ってたけど。

だけど、私、悲しそうな顔、しなかったでしょ?
してなかった、よね?


どうしてこんなに不安なの。

さよならして、満足すらしてたはずなのに。




 だってウソツキだから。


 「待ってるから」って言葉、信じてたくせに。



 …もしかしたら、悪いのは私の方なのかもしれない。





授業が終わったら、さっさと立ち去ろうとした。

MDをさっさと耳に突っ込んで。

だけど、その時聞いてた歌が。

私に、去年の今頃を思い出させてしまう歌で。



あれ?

私たちは、いつ卒業する?

そのうち離れ離れになる?


悲しいな。寂しいな。



私、大石くんと離れ離れになった?


やっと離れ離れになった?



今までもずっと離れてたけど。



やっと離れ離れになった。





泣きそうになったけど、頑張って耐えた。
だって、アタシってこんなところで泣くようなキャラじゃなかったはず。
前からそうだったから。
引っ越しした時だって、周りは泣いてても当人はケロっとしてたり。

それなのに。
どうして、一人を相手にして泣かなきゃいけないの。
今度は悔し涙が出そうだよ。



さっさと帰ろうとした。
そしたら友達に声を掛けられた。
振り返って、頑張って笑顔作って、手を振った。


トイレに行こうと思った。
鏡をちらりと見た。
情けない顔はしてたけど、泣きそうな顔には見えなかった。

安心して個室に歩を進めた。
そうしたら、トイレには今、誰も居ないことを知った。
私以外、誰も居ない。
これは“孤独”じゃなくて、“安息”だと思った。


でも。
安息はたまに、緩みのきっかけにもなるわけで。


「……バカァ」


独り言のつもりで呟いたはずだったのに。
目にぶわっと浮かんできたものは、
自分に向けられていないことに気付いた。

更に参ったことに、忘れ物に気付いた。

どうしよう。そのまま帰ろうか。
だけど、今日持って帰らないと都合上5日間触れることが出来ない。
ちょっとマズイ気がしたので、ロッカーに戻ることに気付いた。
そんなことを考える余裕は、とりあえずあったみたいだけれど。


ふらふら。
千鳥足気味で、元来た道を戻る。

友達が居た。変な顔をされた。


しまった。
忘れ物を気にする余裕はあったくせに、
自分の顔を気にする余裕はなかったときた。
こんなところ、自分は抜けてるなとつくづく思う。

きっと今、情けない上に、泣きそうな顔になってると思う。
っていうか、泣いてる、かも。

ああ、泣いてるや。誤魔化せない。見られたし。


訊かれもしないのに「元気ですよ」とか言ってる辺り、
明らかにコイツの脳は正常じゃない、と客観視すれば言えるものの。

当時の私には、やっぱりそんな余裕、なかったわけで。


「…ー?」
「おわ、っ!」
「大丈夫!?」


声が掛かる中、涙目だったとしても笑顔作って、
さらりと交わして行こうと思ったけど。

やっぱり無理だった。


友達の一人に、飛びついた。
最初に発した言葉は、「もうヤダ」だった気がする。

何が嫌なんだか分からないし。
分からないのが嫌だった。



どうすればいいの。

助けてよ。

さよなら伝えて良かったのかな。


ホントウハ スキダッタ。 ズットズット。



嘘吐いたから。


もしかしたら、私がいけないのかな?





友達の胸の中。
何度も「ありがとう」って言おうとしたのに、
口が「ごめんね」としか動いてくれなくて、困った。
事実上、感謝の気持ちより罪悪感の方が大きかったのかもしれない。

繰り返し繰り返し言われた「ゴメン」の言葉は、
やっぱり、その場に居ない人に向けられている気がした。

自分でも分からない。




私が孤独を感じる瞬間って、いつだろうと考えた。
正直言って、分からない。

もしかしたら、こんな時かもって考えた。
周りにみんなが居て。
寂しくないのに。

だけど、離れていくのが怖いよ。
自分だけが放されていないか不安だよ。


 一人で居るときの寂しさより

 二人で居るときの孤独の方が淋しい


そんな歌が、あった気がする。
後から、私が一番好きな歌だってことに気付いた。
私の心に直接語りかけてくる、大好きな歌。



 好きであればあるほど 不安になるから イヤ。



さっき自分が発した言葉の意味がやっと理解できて、
涙は暫く止まりそうにないなと思った。


だけど、いつかは必ず止まるんだって知った。




家に着いた頃、私はピンピンしていた。
泣くだけ泣いて、開き直ったといえる。


一日休んで、翌日。
学校のみんなとカラオケに行くことになった。
始めはあんまり乗り気じゃなかったのだけれど、
最終的に行くことに決めた。


こうしよう。

たとえ空元気でもいい。
ずっと笑って通すことが出来たら。
それなら私は吹っ切れたってことだ。

空元気の時が一番傷付いている。
それも一理あると思ったけど、
空元気でもできるようになったら、
それは救われてることだと思うから。





行ってみると、それはなんだか去年と似たような状況だった。
男女合わせて20人近く。
酒を飲み散らかし。(合法的)
歌うことより騒ぐことが目的だった気がする。

マイクはほとんど握らないで、
その場で大声を張り上げながら
マラカスやらタンバリンやらを振り回してた。
無理矢理にでもテンションを上げないと
嫌なこと思い出しそうだったから。

唯一入れた、春を感じさせるあの歌も、
笑顔のまま歌いきることが出来たし。

もう大丈夫かなって。

そう思うよ。


そう、思いたいのかな。





帰り道、私は寧ろ泣いてる人を慰める側に回ってて。
ああ、前も同じ風にして誰かを励ましたな、と思った。


部活の引退を掛けた大会のときだ。
一試合目で負けてしまって、
今まで一度も勝ったことのない相手に勝たなくては
その場で引退、という状況に追い込まれた。

いつもは強気で引っ張ってくれるキャプテンが、
その時は泣き出しちゃって。
「大丈夫。まだ終わってないよ」って肩を抱いて背中を叩いたけど、
はっきりいってもう確実に負けることは目に見えてたし、
泣けるもんなら私も泣きてぇよ、とか思ってた。
でも、とりあえず最後の試合が残ってるから。
楽しむつもりで挑もう、と決めた。

結局、その試合は負けた。
だけど私は、みんなの前では涙を見せなかった。
気付かれないくらいちょっとだけ泣いて、拭いて、終わり。
こういう時は大抵盛り立てる側に回ってた。



そんな私が、一昨日は泣き叫んでしまった。
人前で泣いたのなんて何年ぶりだろうと思った。


映画を見て泣いたって、立ち上がる頃までには乾いてた。
引っ越しのときだって、当人がけろりと笑ってた。
卒業のときだって、泣いたとしても一番に泣き止んで笑ってた。
何度も、他の人が泣いてる中は、盛り立てる側に回ってきた。


だって、それがアタシでしょ?

思い上がりかな。


もしかしたら、そうやって自分を作ってきたのかな?


そうしたら、ここで今笑っている私は、誰なんだろう。
昨日泣いていたのは、私ではない別人なのかな。




それでも私は、今日もここで笑ってる。

これは偽りでもないし、作り笑顔を四六時中続けられるほど私も器用じゃない。

笑いたいときは笑うし。
笑い疲れたら休むし。


それでもたまに、これは空笑い?ってことが、あるんだよ。



自分で分からないの。
心から笑っているのかどうか。
少なくとも作り笑いをしてはいない。
でも、流れに任せて笑ってるだけかもしれない。

自分でも分からないの。



とにかく私は笑うのが大好きだし。

無理してないし。

だから今日も笑ってる。





それでもね、笑顔が作れるのは、周りにみんなが居るからなんだよ。

私が孤独を感じる瞬間は、周りにみんなが居るのに、ふと笑顔が作れなくなった瞬間だと思った。


初めから一人なら孤独じゃない。

孤立して独りになってしまうから、孤独なんだと思った。

だからといって周りから見放されているわけじゃなくて。

ふとした孤独を感じた瞬間に、笑顔を作れなくなるんだと思った。


孤独を感じるのは、笑顔を作れなくなったとき。

笑顔を作れなくなるのは、孤独を感じたとき。


どちらが先でしょ。分からない。


でも、だから私、いつも笑顔で居られるのかも。




みんなが居てくれたからだよ。



そのみんなから私を引き剥がしたのが、あの人だったのかも。





あの人は


私を引き付けるだけ惹き付けて


肝心な時はそこに居てくれなかった。



だから、もういい。





いつもそこに居てなんて言わない。


だけど、せめて傍に居てほしいは肩を貸してくれるような。



そんな人を私は求めているんだと思った。








『私も、大石くんのこと好きだったことあったよ』


私は嘘吐かないし。



『だけど、今は別に、好きじゃない』



この人は嘘吐きデス。





ウソツキ。

一年半も待たせやがって。

待ったのはそっちじゃなくて、こっちだったんじゃない?


アレ?

向こうはちゃんと、待っててくれたの?

こっちが辛抱しかねて突き放しちゃっただけ?


そんなことない。向こうは裏切った。





待ってるから。

なんて、言ってくれなくて良かったのに。

言ってくれなければ良かったのに。



もしかしたら両想い?

なんて、そんな思い上がりは

束の間の夢でしかなかったね。




私はきっと、後々この恋を後悔すると思う。

両想いだったとしても、辛い恋なんて欲しくない。

フラれてもいいから、良い思い出にできるような恋がしたい。



これからは私、生まれ変わるよ。


何か、嫌になったからさ。

悩むの、もう、疲れたんだもん。


忘れた。大石くんのことなんか。


もっと周りの、身近なことに目を向けた方が、きっと幸せ。





これ以上は引き止めないで。

私を引き付けるようなことは、やめて。


もしも今、一時帰国で帰ってくるの、待ってるから、なんて、言われたら。


私、どうしたらいいか分からないもん。








だからさようなら。


ごめんありがとうごめんゴメンね。




バイバイ……シュウくん。







今度こそは、嘘じゃないと思うんだけどな。





でも・・・。



もしかしたら、私がいけないのかな?




だって。








 ホントウハ スキダッタ。 ズットズット。









みんなが居るから私は笑顔。


バイバイなんて、言い切れないよ。






















大石が違うし!性格悪いよー!(爆笑)
こんなのドリームにして良かったのかな。
部分的に大稲よりずっとリアルだし…。(げっそり)
あれとこれを組み合わせてよりリアル。
現実込みっていうか人生録だよね…。

しかしこれ、微悲恋ってやつだ…?
続く、続くのかこれ!?
もういいよ。終わってください。疲れた。
書きたいだけ書いた。読み返す気が起きない。
多分大幅に支離滅裂。でも私はすっきりした、かも。

日本では未成年の飲酒は法律で規制されてますので宜しゅう。
(大石の酔っ払いネタ2つ目…)(上等じゃねぇの)


2004/03/22