「好きです」



告白を受けたのなんて、いつ以来だろう。


切り詰めた空気の中、

理不尽にもそんなことを考察してしまった。




そして、告白を受けるというのは。


…つまりカノジョが、俺から離れてしまったことなのだろうかと。




そう考えざるを得なかったんだ。











  * −遠近符号恋愛+ *












もう、終了式もついに目前となった。
今週で高校一年目の生活も、終わりとなる。

去年の今頃は、卒業式を眼前に控えていたのかと思うと、
なんとなく不思議な気持ちになる。
そして、あの時は横に“彼女”がいたのだと思うと、
やっぱり不思議な気持ちになる。

不思議なキモチというか、
体験自体がフシギだったのかもしれないが。


暫く離れて暮らして、それなのに卒業式だけは一緒。
…やっぱり、不思議かな。




そんな特殊な境遇の中で付き合い続けている、俺と
実は付き合って以来、同じ地に住んだ期間はほんの数ヶ月だったりする。
それなのに、嬉しいやら恥ずかしいやら、
巷では噂のカップル(しかも語頭に“バ”が付くとか付かないとか…)だったらしい。


まあ…とりあえず。
俺たちが付き合っているということは、結構有名だった。
それまでに告白されたことは何度かあった俺だったけれど、
付き合い始めて暫くするとそれは消えた。
それほどまでに俺たちが付き合っている様子はあからさまだったのだろうか…。
今更だけど、気になるものだ。


しかし。
突然呼び出されたと思いきや、“好きです”の一言。


「クラス替えの前に、伝えておきたくて…」


暫くは消えていたのに、今日、またこうして告白を受けている。
これは、一体何を意味するのだろうか。


「えっと…」
「驚いたと思うけど、本気で好きなんです…っ」


俺が返答する前に、言葉を繰り返された。


人に好かれることに、悪い気はしない。
それでも、時により申し訳ない。

応えることができないのなら。




――ごめん。


――ほら、俺…付き合ってるが人いるから。



―――キミとは付き合えないよ。




そういうつもりだったのに。
それより先に、向こうからそれを意味する言葉が出た。


「分かってる。答えにくいってこと…」


一瞬、間を置いて。



「昔付き合ってたんでしょ、さんと。彼女可愛かったものね」




俺は詰まりかけた言葉を必死に吐き出した。
「…過去形じゃない」、と。


向こうは、こっちの様子を窺うようにして見上げてきながら。




「今も、スキ?」




こう訊いてきた。
その言葉には挑戦的な意味合いに取れた。

俺は、他には何も言わず素直に頷いた。


向こうは、軽く溜息を吐いてから言った。




「それならいいや。離れてるから別れることも出来ないんじゃないかって思ったから」




……え?

それは、つまり。



俺は、もうと付き合っている必要はないのに、
“別れる切っ掛けがないから関係が続いている”と。

そう言いたいのか?




…まさか。 でも、

違うと言い切れるのか―――?





「私のことフったぐらいなんだから、さんのこと、大切にしてよ」



返事をすることは愚か、
首を縦に振ることすら出来なかった。


向こうはそんな俺をどう思ったのだろう。
分からないけれど、今まで通りを装ってくれているのか、
「早く教室帰らないとお昼休み終わっちゃう〜」と言った。



俺の前を駆けていく。
その後、顔は一度も見せてこなかった。




ごめん。






そしてゴメン。


不安になった。


分からなくなった。











――浮ついた気持ちでその日を過ごした俺は、

 日本が日付を変えるその頃、受話器を持ち上げた。






















大稲は続くよどこまでも。(ぁ
微悲恋万歳。擦れ違い大稲。
長年付き合ってりゃトラブルがあって然り。

不安になる大石。いいねぇ。
葛藤して散々悩んでくれたまえ。ひひひ。
そして最近抵抗なしに大石視点を書きまくってる自分が嫌だ…。


2004/03/11