“遠距離恋愛は続かない。”



これは、“初恋は実らない”と同じように、

ジンクスのようなものだろうか。


だけどそれ以上にこれは、間に設けられてしまう“距離”の問題だと思う。




とはいえ…逆にここまで離れてしまうと、

それすら通用しないのでは、なんて思った。


だって、“一年に3回しか会えない…”と思うより、

“一年に一度は会えるんだ!”の方が、希望が持てるでしょ?





だから…距離と愛情は不等号で結ぶんですっ!











  * +遠近符号恋愛− *












。今日も元気にインターナショナルスクール生。


家を出れば、そこはドイツ語の世界。
学校の敷地を踏み入れた瞬間、そこは英語の世界。

"Good morning."
"Hi!"

"Hey, did you do your homework?"
"Of course not."

挨拶をしつつ、自分のロッカーへ。
突然切り替わった言語に戸惑うことがなくなって、
自分も成長したのかなぁとしみじみ感じ。
成長というよりかは、環境になれたのかなぁと考えつつ。

だけど一部には、日本語が聞ける場もあるわけで。


「おはようさん」
「グッモーニーン」

っち、オッハー!」
「オッパー♪」


固まる習性があるかのように、そこは日本人ばかり。
謎な挨拶を交わしつつ、ロッカーを開ける。

さぁて、今日のクラスはなんだったかなと。


さん、おはよう」
「あ、おはよう。ね、ファーストピリオドなんだっけ?」
「えー…ダブルテク?」
「オッケ。サンキュ〜」


テクとは即ちITのこと。技術科ってやつですか?
ただいまはパソコンを使ってリサーチをしてたりしますのよ。
2時間連続か。こりゃ楽だね〜。

「リサーチ進んでる?」
「全っ然。ネットやって遊んでばっか」

質問に対しそう答えると、は笑った。


は、私のクラスメイトだ。
といってもスケジュールの都合で全てのクラスが
一緒ってことはないけど、まあ大半は一緒かな。

凄く良い人。
気さくな感じで話しやすくて。
そのくせいい加減なところはなくて。
友達としてとてもいい奴…だと思う。

んで、呼び方ね?
下の名前で呼んでるけど、別に特別ってことはないのよ。
英語使ってると、必然的に下の名前になるし。
日本語の時と英語の時で呼び方変えるなんて器用なこと私は出来ないから、
ほとんどの人が名前で呼び捨て。
クラスが一緒になったことのない人は、
苗字で呼び合うこともあるけど…。(英語で話したことがないため)

それより寧ろ。
向こうが私に“さん”なんて付けてくる方が不思議である。
でいいのに。
慣れないなぁ、さんなんて。
ま、別に構わないけど。



だけどそれもね、特別だとかどうだとかじゃなくて。

ただ単にその人の性格の問題だと思ってた。



の、に。













7時間目だったかな。
給食直後のマスでの自習中のことだ。


さん、この問題分かる?」
"Let me see. 'Roots of imaginary conjugates.' Hum... No idea!"

そんなもん知るか。思わず笑顔。

「本当に?数学あんなに得意なのに…」
"Well,“頑張れば分かるかもしれないけど面倒くさそうだから放棄”..Understood?"

はぁ、とは溜息を吐いていた。


しかし、なんて会話だろうね、これ。
受け答えが日本語と英語交じりまくり…。

なんていうかね、私、クラスとかではできるだけ日本語使いたくない人なの。
でも、英語で説明すると凄く遠回しな表現しか出来ない予感がする時は
面倒くさがって日本語で表現しちゃったり。(面倒くさがりだなぁ、私)


あとそれから、
内緒話の時…かな。

ズルイ考えだけど、日本語で話しちゃえば周りの人にはバレないから。


授業中に堂々と辺りに聞こえる声で内緒話。なんてステキ。



"Tired with me?"
「うーん、呆れたというか…凄いよな、ある意味」

ははっと私は笑った。


「面倒なことは人に押し付ける派だから。ヤな性格でしょー、あたし」


一瞬、中3の委員会決めの時のことを思い出した。
ジャンケンで勝ってヒラになってる私の横で、
シュウは凛と立ち上がって学級委員に立候補してたんだよな…。



ふと思い出の世界にトリップしかけた時、が言った。


「そんなことないよ。オレ…さんのこと、結構スキだし」


センキュー、なんて、
気楽に返そうと思っていた自分が恨めしい。



「っていうか、正直…好きなんだけど」



……は?



Um... Hello?


エクスキューズ ミー〜…。




「スキって、何が?」

「オレが。さんを」





...Wow!


That's amazing, isn't it?



He likes me.


Or, he "loves" me actually, doesn't he?



……は?





「ごわぁっ!?」


"..What's up there?"

"Oh, no problem, sir!"



先生が眉を潜めていた。
けど軽く流した。


ノープロブレム。
オーノープロブレム。

………。



問題だらけだよ!!





「 ちょっと 、 どういうことよ ! 」

「別にそんな小声にならなくたってどうせ誰も分からないよ」





確かに、そうだけどさ…。

だけど、なんていうか、アレじゃんよ…。


「あの…それって、“ライク”じゃなくて“ラブ”なワケ?」
「まあ、そういうことになるかな」

飄々と答えてくれちゃって…。
こっちがこんなにドキドキしてること、知ってるの、この人は?


なんだろう。
この鈍感なのか腹黒いのか分からない天然ぶり。
誰かに似てるぞ…?

なんて、それが誰かなんてobvious…明確ですけどね。



「ねぇさん、オレとさ…付き合わない?」




まさか。


こんな展開になるなんて、

思ってなかった。



だって、だよ?

気さくな感じで話しやすくて良い人だとは思ってたけど。
だけどそれは、友達としてで。
恋愛対象としてなんて、考えてなくて…。



それなのに、ドキドキするのは、何故?

突然告白されたのだから当然かもしれないけど。

だけど、驚いたからとか、それだけじゃなくて。
微かな心地好い鼓動を抱えてる。



なんだろう。

こんな感じ、前にもどこかで。

それにしても心地好い。




「返事は?」


催促するような言葉。





――…ごめん。


――ほら、あたし付き合ってる人いるから。



―――キミとは付き合えないよ。








 「考えさせて」








……どうして。

頭と口が、同じように動いてくれないの。



「分かった」とは言ったけど。






――――…すっごい自己嫌悪。



明日、即行でお断りの返事を入れようと決めた。


今はまだ、間が悪いから置いておくけど。




ゴメン、明日、返事を出すから。






















中途半端な終わりをしたら、それは微悲恋の合図。
…というか、実は続いたりする。笑。

名前変換、ごめんなさいね。
こんな使い方ありなのでしょうか。
でも…中途半端なオリキャラよりはいいかな、とか。

英語、結構出してみた。
そういえば、ドイツ引っ越し以降の
はっきりとした学校風景を出すのは初かなぁ。
そしてどこまで現実込みなのかは伏。


2004/03/11