* また会おうね *












時計の針が頂点を越えた時。

耐え切れなくなって、私は携帯電話に手を伸ばした。


震える指で番号を押す。

アドレス帳なんか探り当てることもなく、そのまま。

もう随分遅い時間なのにとか気遣う余裕もなく。


相手は、2コールで出てくれた。



「…もしもし?」


「周ちゃぁん!!」



突然叫ぶ私。

向こうはさぞかし驚いたことであろう。

更に…しゃくり上げているとくれば。


「どうしたの?」


笑いを漏らすような口振りで話す周ちゃん。

この柔らかい声色が、好き。



「もう…誕生日終わったと思ったら、寂しくなっちゃって…」



そう伝えると、暫く沈黙が。

その後周ちゃんは…笑った。


「ちょっ、笑うことないでしょ!」

「いや、ごめんごめん」


声が謝ってない、と言うと、

そんなことないよ、と返って来た。


「でも…どうしてそんな、寂しい…なんて」


区切り区切りの言葉。

私も思わず一瞬口をつぐんだ。

けど、伝えた。



「だって、4年に1度の大切な日だったのに」


ずず、と鼻をすする私。

向こうは、黙ってた。


普通の1年に1度の誕生日とはワケが違う。

だから、思わず寂しくなっちゃった。


暫しの沈黙の後、周ちゃんは呟くように訊いてきた。


「来年は、祝ってくれないの?」

「そ、そういうわけじゃないけど…」

「ならいいじゃない」


…そっか。

そうなの…か?


「でも、やっぱり当日は…特別だよ」


私がそう返すと、向こうは微笑を漏らした声で。



「4年後も、一緒に祝おうね」



…釘を刺された。


私は何も言わずに、首をひたすらに上下させた。

電話だと、声を出さなきゃ伝わらないって分かってるのに。



 でも ありがとう って聞こえたから、きっと伝わったね。























やっぱり4年後は不安になっている稲瀬さん。
思わず似たようなネタを2つも書いてしまったべべん。
一つはここに、一つはサイトに。ウォーイェーウォウイェイ。


2004/03/01