* 現実を繋ぐ痛い夢 *












「やっぱこの人がカッコイイよ!」



教室の中。
雑誌を広げては盛り上がる女生徒たち。

一つの集団において、4,5人。

その者たちは、紙面で様々な服を着て
ポーズを決めているモデルたちに見入る。



そんな中、同じように一つの雑誌を掴んで盛り上がる3人の女子。


「やっぱ、この人が一番」
「うん、カッコイイよね!優しいし」
「えーっ、こっちの人の方が優しそうだよ」


ページを捲りめくり、他の集団ともまた違う黄色い悲鳴をあげる。



私もまたその中の一人、




『キーンコーンカーンコーン…』



休み時間の間は一つの机に集まっていた私たち。
チャイムが鳴ると、自分の教室に戻る。


「それじゃ、また後でね」


同じクラスの二人を残して私は廊下を走る。
あー急がなきゃ授業に遅れ……っ。



「キャッ!」



…誰かに、ぶつかった。

コケた。


痛ぁ…。



勢いあまって、尻餅どころか頭まで打ちましたが。

ガンガンする。
意識がはっきりしてるのは奇跡。


全く誰よ、ホントに………ぅあ!?




「あ…ゴメンな」



ちょっと待って。


焦って立ち上がろうとすると

「無理するんじゃない!」

の一言。


呆然としながら、差し出された手を取った。
よっと、と軽く持ち上げられた。

しゃんと立ち上がる。
向こうは眉を軽く潜めた。


「元気がいいのはいいけど…廊下を走るのはあまり感心しないな」
「ごめんなさい!急いでたからつい…」

頭をガバッと下げる私。
すると、優しい笑い声が聞こえた。


「そんなに気負うことはないよ。授業、遅れないようにな」


ポンと頭を叩かれた。
…うわぁ。


後ろをちらりと振り返る。

凛々しい後ろ姿が見えた。



どうしよ。
どうしよどうしよ!

事故とはいえ、大石先輩と喋っちゃったよー!!


何で2年生の階なんかに居たんだろ?まあいいや。



ああ…今日一日は幸せv









しかし…今ってチャンス?

なんか、これを逃したらもう話掛けるチャンスなんてやってこない気がする。

なんでか分からないけど。


…よっしゃ!




「あ、あの…大石先輩?」



気付かずスタスタと歩いていってしまった。

…それとも無視?



「あのー、大石先輩っ!」



もう一度大きな声で呼んでみた。

漸く、先輩は振り返った。



「ん、どうかしたか?」



爽やかな笑顔が返ってくる。

ああカッコイイ。

こんなに関わり合いになっていいのかしら!?



だけど。





 「好きです」





唐突に告白しちゃった。

え、私ってこんなに大胆だったっけ?

なんか口が勝手に動いて!!



大石先輩は、笑顔で言った。







 「オレ達の力を信じよう」







キャー!!!

カッコイイ、カッコイイです大石先輩!



しかし…あれ?

私、告白した…よね?

交わされた?

てか、会話噛み合わないよ?


どうしてだ。

私の聞き間違い?

さっき頭打ったらおかしくなったカナ。






あれ?


視界がゆらゆらする。


なにこれ。




ん?

大石先輩に名前を呼ばれてる。



なんで知ってるの。


っていうか、なんで下の名前?






あれ、あれ〜?????





「…ちゃん。ちゃん!!」




「ふぇ、私…」



「あ、良かった!」







…大石先輩、随分高くて可愛らしいお声で。

って、違うよね。



「ごめんね、大丈夫?」


「……?」



辺りを見回す。

教師を含め、多くの生徒が私を取り囲んで。

勿論、先生以外皆女子。


だって私、女子校生。



「私……」

「あ、無理に動くなよ、頭を打ってるんだ」

「…ぇー」


数学教師に背中を支えられながらゆっくり起き上がる。


つまり、なんだこれは。




私は廊下を走ってて。

そうしたら逆方向から走ってきた人にぶつかって。

勢いあまって、尻餅どころか頭まで打って。

そのまま意識を失ったと。

教師も駆けつけ教室の中からクラスメイトも出てきて。

そしてこんな大騒ぎ。




…はっ、夢オチ!?

私、夢の世界にトリップしてた!?


なんだこれは…ネタにもならねぇ!

いや、ある意味ネタ!100%がネタで構成されている!!




「保健室、行くか?」

「いや、大丈夫です!」


私は自力でしゃんと立ち上がった。

どうやら衝突した張本人と思われるちゃんが
心配そうな顔で「ごめんね」と言ったので、
私は「元気があるのはいいけど、廊下を走るのは感心できないわね」と言ってみた。

向こうが泣きそうな顔になったので、
直後に「冗談だよっ!私もダッシュ掛けてたし。お互い様」と加えた。
そして、ちゃんの頭をポンポンと叩いてみた。


ちゃんはもう一度申し訳なさそうな顔をすると、
しゃがんで私の落とした荷物を拾ってくれた。


「本当にごめんね!」


渡された荷物を見て、私は思わず笑った。
それは、数分前(多分)まで見せ合いっこをしていたもの。

某週刊少年誌。
お目当ての漫画のページは開きやすくなっている。
ちなみに私の好きなキャラクターは、妙に爽やかで優しいお方。



「…私たちの力を信じましょう」



思わず呟いた私。


ふらりと。

強く目眩がした。



ちゃんが「先生、やっぱりさん頭打ってるみたいです!」
と叫ぶ声が聞こえた。


その場にへなへなと座り込む私。

ちゃん!ちゃーん!!!」
と叫ぶちゃんの声が、切なく木霊した。



そうよ。
彼らは二次元の世界の住人。

だから、夢でしか出会えないのです。



……ね?






















目指したのは“世界一痛いドリーム”。(笑)
いやぁ、作戦通り相当痛いよこれは!
もうドリームなし得ない。でも大石夢。

あーあ。どうにでもなれ。笑。
駄作っていうか堕作だよこれ…!(苦)


2004/02/24