* 時間差バレンタイン *
「あのね、忘れてたワケじゃないんだよ?」
「うん、分かったから…」
「…怒ってる?」
「怒ってないって」
ただいま、ドイツは12時47分。
日本はもうすぐ夜の9時。
2月15日の、晩となっております。
「言い訳させて」
「いや、本当に怒ってないから…」
否定的な言葉が入るけど、納得はいかない。
「とにかく!あんね、今年は土曜日だったでしょ?」
「そうだな…」
「だから、友チョコは13日だったわけ」
「はぁ…」
「んで、本番は明日だなーとその時は覚えてたの」
「うん」
「だけど、いざ土曜日なってみたら遊んじゃって」
「………」
「気付いたらすっかり夕方。日本はもう翌日じゃんよ!」
「…だな」
「で、夜中に叩き起こすぐらいなら…というわけで今」
「それはそれは」
坦々とした会話。
私は捲し立て、向こうは受け答え。
対話だって、通話だって、同じ。
「…だから怒らないで?」
「何度も言うけど、怒ってないよ」
確かに、声色からは怒っている様子は感じられない。
でもなんとなく、感情が篭っていない感じがして。
私が黙り込むと、向こうが話を始めた。
どんな会話の時も、この流れは同じ。
「まず…わざわざ電話くれると思ってなかったから」
「えー、だって恋人の一大イベントの一つでしょ!?」
それって逆に愛がなーい。
私は口を尖らす。
だって、チョコレートだけじゃないんだよ?
バレンタインのプレゼントは。
そもそもそれは日本の某会社の陰謀であり…ってそれは話が違う。
「いい、これから私がその真髄を語りますので耳かっぽじってね」
8時間どころか、24時間遅れちゃったけど。
16時間分の、お釣りも篭めて。
「誰よりも何よりも、シュウがスキ!」
贈り物は無くても
時間を超えた愛が
きっとそこにある。
照れた感じの声で、「ハッピーバレンタイン」と聞こえた。
テンションがありえないことになってた…。
稲瀬さんがマジで降臨してたよ。眠さも押して。
題名は『時間差バレンタイン』で。
っていうか、日記で大稲って初ですか?
やっちまった…。(領土拡大っていうか侵害中)
2004/02/15