* 嫌も包んだ大好き *
昼休み恒例、悪口大会。
「ちょっと聞いてよ!大石ってば最悪でさー」
あーだのこーだの、私は文句を続ける。
今度はの番。
「そんなの良い方じゃん。菊丸なんかさーあ」
こーでこーでこーなんだから!
は凄い勢いで捲し立てた。
その罵声が漸く止まって、私は半分呆れて言う。
「そんなこと、言っていいのー?好きなんでしょ、菊丸のこと」
「む…」
は一旦固まったけど。
負けじと言い返してくる。
「そういうアンタこそ、大石のことはどうなのよー!!」
…ごもっとも。
は、菊丸。
私は、大石。
それぞれ片思い中。
なんでだろ。
こんなに毎日毎日悪口やら欠点やら並べてるのに。
「好きなものは好きなんだぁー!!」
思わず叫。
そしてお互い視線を合わせて、笑った。
「あーあなんでこーなんだろ」
「ね」
は窓の外を見ながら。
「恋は盲目っていうけどさ、あんなのウソ。私には欠点ばかりが浮かんでくるよ」
だから、私は返してやる。
「それだけ見てるってことじゃない」
は、まーね、と言った。
ちょっと悔しそうだった。
「それに、悪い点が見えても好きってことでしょ。あーあ」
があまりに疲れた風に話すもんで、
私は思わず笑っちゃったんだけど。
「私もだな。大石なんて髪型謎だしエセくさく爽やかだし肝心なところで挙動不審だし。
でもそれも愛しく感じられるっていうか…なに、どうしたの」
は突然青褪めてた。
だけど、直後にニヤッと笑った。
「ま、いいや。続けなよ」
「? まぁいいや。…あのねー、なんていうかね、嫌いは好きの反対だけど、
欠点は嫌いと違うというか好きを妨げる要素にならないっていうか……あの、?」
は大爆笑してた。
そんなに面白いこと言ったか、私。
真面目モードで語ってしまったのがいけなかったかしら。
涙を拭くと、言ってきた。
「じゃあ、語り屋のさん。後ろをご覧下さい」
「後ろ?」
後ろ。
………は?
「お、大石!?」
「………」
居た。
いた。
痛。
イター!!!
「ご…ごめん、話の邪魔して……!」
「あ、わ、えっと……ぇ?あ、ぁ……待ってぇー!!!」
暫く混乱していた私だけど、
焦ってその場を走り去った大石を追った。
後ろでが笑っているのが腑に落ちなかったけど。
嫌よ嫌よも好きのうち。
好きよ好きよは嫌含む。
即ち、これが恋であるという証。
追いつけたらその背中を掴むことが出来たら、
好きも嫌も、全部伝えようと思う。
好きと嫌いは反対だけど、
好きと嫌は反対じゃない気がするんだよなぁ。
好きな人ほど悪口を言いたくなる心理を探るべく書いてみた。
あー。友人サイドの続編書きたい。(最近そればっか)
廊下を通り掛かったとき、菊は聞いちゃうとかさ。
「……教室入れないじゃん」みたいな。
気付かず入ってしまった大石はあんな運命。あはは。
その後上手くいくかどうかは想像にお任せ。
2004/01/29