* 不器用が温かい。 *












ただいま夕方。太陽は低い気温も低い。


暇な私は考える。






 雅也ってさ。


 優しいのに、不器用だよね。



 感情を表すのが下手とか、そっち方面じゃなくて。


 タイミング悪いというか、要領悪い。それだ。



 手先は器用、感情も表す、だけど要領悪い。





 関係無いけど、今日は寒い。







「…あ、だ」


「あ、雅也だっ」




偶然にも出会った、街の一角。


噂をすればなんとやらというけれど。

心の中でこっそり思ってる場合でも、これは通用するのかしら。



とにかく、遭遇。





「何やってんだ、お前。こんなところで」

「ん、塾帰り。親が来るの待ってるの」




ふーん、と雅也は答えた。

その興味無さげだけどなんか考えてるっぽい横顔がスキ。




…寒い。

それにしても今日は寒い。


ミニスカートを穿いているためほぼ丸出しの足を、
私は細かく擦り合わせた。

鳥肌立ってます。とにかく寒い。



そういえば、天気予報で「夜から明け方に掛けて雪が降る」とか言ってたかな。

そんな日に気合入れてミニスカなんて穿いてんじゃない自分。





「親なんか待ってるんだったら、オレが送ってやろうか?」


「ん、違うの。私も普段だったら電車なんだけど」



これから外食〜。

そう答えた。




「へー。何食いに行くの?」


「えへへ、イタリア〜ン」




ナポリタ〜ンあんぽんた〜ん。


続けて言うと、雅也は「なんだよそれ」と素直に笑った。





普段はしかめっ面してるくせに。


こう言うとき不意に見せる笑顔がスキ。





「しかし、もう結構薄暗いし、危なくね?」

「大丈夫だよぅ。外灯もついてるし」



確かにそうだけどよ…と呟く雅也。


うん。そうだね。暗いね。危ないね。それに寒いね。

一緒に居てよ。本当は私、寂しいの。


なんて、言えないけどさ。



言わないけどさ。




「ま、いいや。暇つぶしっ。オレも待っててやるよ」




…雅也は、ちゃんと分かってくれてる。



ついでに、私もちゃんと分かってるよ。

暇つぶしなんていってるけど、別に潰すほどの暇は雅也にはないってこと。



曖昧な照れ隠しすらしない真っ直ぐな優しさがスキ。






私の横に、すとんと腰を下ろした。



何でだろね。

物理的にそこまで温度は上がってるとは思えないのに。


温かいよ。





「それにしても…今日は寒ぃな。お前、大丈夫か?寒くね?」







タイミング悪い。

っていうか、良いのか?

それすら分からない辺りタイミング悪い。





思わず、笑ってしまった。


向こうがばつの悪そうな顔をしたので。





「すっごく寒い」






笑顔のまま、そう答えてやった。





咄嗟に雅也は、私にコートでも貸してくれようとしたのでしょうか。

自分の体をぐるりと見回してた。



しかし、残念。


貴方は私に貸すコートどころかマフラーや手袋の一つもしてないでしょうが。

そして本人も、ポケットに両手突っ込んで寒々としてるし。



あー面白い。





参ったな、という感じで一瞬空を仰ぐ雅也。


こっちを向き直して視線を一瞬合わすと、体を寄せた。





「これでさっきより、マシ?」



「…全然マシ」






丁度良い高さの肩に、そっと頭、倒した。









  寒ければ寒いほど際立ってくる温かさが大スキ。






















やべぇ。桜井君が好きすぎる!!(ガッテン×2)
ちなみに執筆時間が約15分という素敵さ。
(考える時間0でひたすらタイプ)(ネタの素=愛)

恋人同士なんだか幼馴染なんだか微妙。
とにかく桜井君は良い人なんです。(そればっか)
『テレフォンサービス』の続きだといいなぁと思う。(希望かよ)

結局は不器用なんだと思います。ネ。


2004/01/28