まあ、元々特別好きだったってわけじゃないし。

ただ少しだけ、気になってたけど。

良い人だなとは、思ってたけど。


大した想いはなかった。




でも、“素敵な人”と言われて、反射的にその人の顔が浮かんでいた辺り、

既に凄く好きだったんじゃないでしょうか…。











  * 偽善者は加害者 *












休み時間になった途端、
隣のクラスからが走ってくるのはいつものこと。

喋り出しは、大抵同じ。


「ねぇ、聞いて!今日も大石がね」

「え、何々?」


話を聞くのは、楽しい。
私の知らないあの人のことを、沢山知ることができるから。

でもね、本当はね、ちょっとだけ悔しい。


「指されたらさ、スラーと答えちゃって。有り得ないー。頭良いよね!」
「そうだね、学年トップだし」


どんどん新しい情報を仕入れてくるに、
私はありったけの知識をぶつけるだけ。
まるで負け惜しみみたいだけど。
…実際そうなのかな。


「あーあ。本当にカッコイイ。大好きーv」
「良かったね」


なんて、全く心の篭っていない言葉を返した。

ヤな子、私。

元はといえば自分が蒔いた種なのに。
友情が崩れるのが心配で、芽を摘み取ることが出来ずに居る。
だからといって、肥料をあげることもしないで。



いつだっただろ。
が私に、「誰か素敵な人、知らない?」と訊いてきたのは。
確か、もう2年生も終盤といったころだったかな。

普段は、菊丸君がカッコイイ、とか騒いでた。
それなのに素敵な人を探しているという行為が、
なんだか私には不思議に思えたのを憶えている。

訊いてみると、菊丸君は芸能人みたいな感じで、
“好きな人”の対象にはならない、って。


素敵な人…。
私の頭に浮かんだのは、一人の人。


「んー…」


私は少し、ためらったけど。




「菊丸君の、パートナーの大石くん。優しくて良い人だよ。」




この言葉、実は今、少しだけ、後悔してる。

その時は、「ふーん」程度の反応しか示さなかったけど。



一ヶ月ぐらいのうちに、私たちは進級した。


私は、と別のクラスになって。
は、大石くんと同じクラスになって。

それからだ。
状況が変わり始めたのは。




「もしがいなかったら私、まだ菊丸くんでも追っかけてたのかな」
「さあ、どうだろね」


微笑を返す。

微笑。
微笑みという言葉よりかは、
微妙な笑みといったニュアンスが合う。



初めは、なんか私、嬉しかった。
自分の価値観が認められたみたいで。
まるでキューピッドみたいな気分になれて。

というか、彼はやはり良い人だったと実感できて。


だけどお陰で、彼が私にとって“好きな人”であると
認識した時はもう、遅すぎた。




私の方がもっと好きなのに、なんて。
根拠もない逆恨み。

いっそのこと、告白してしまおうか。
そしてさっぱりフラれて仕舞おうか。


だけどね、そのことがに知れでもしたら―――…。


恋も、友情も、全て捨てる自信なんて、私にはナイ。

だから、今は守る。
心の中で、ひっそりと思い続ける。
それだけは、許して。


近くにいけない、せめてもの報いに。






















偽善者は被害者ではなく、
だからといって容疑者とは割り切れず。
間を取って(?)加害者あたりでどうだ。

恋心とはわがままなものです。ね。
裏の意味に気付いた方…別に嫌味じゃないです。
心当たりのある方ごめんなさい。
悪いのは私です。こんな話にしちゃってすみません。
ネタにしただけであって、実際は私、ここまで考えてないです。
本当に嬉しいんですよー!

友人さんが大石君とくっ付くのかどうかは謎。ご想像にお任せ。
大石くんは皆のものですよーうふふ。
所詮は偽善なのかなぁって感じですが。


2004/01/24