教室、自分の席に座っている私。

すると、ドタバタと駆け込んできた人々が一斉に私の名を呼ぶ。



(さん)!!」


「…へ?」




突然の事態にきょとんとする私。


教室に飛び込んできた3人。

――それはかのテニス部でも有名な、
大石秀一郎、不二周助、菊丸英二の3人であった。


しかし、そんな有名人が何故突然私に?



戸惑っている私に対し、3人は突然に言葉を捲し立てる。




「単刀直入に言う。お前のことが好きだ」

「実は…ずっと見てたんだよ」

「うんにゃ、オレと付き合って!」



「…はぁ!?」





私は思わず、がたんと音を立てつつ椅子から飛び上がる。


目の前には、3人の真剣な眼差しが。





どこに視線を合わせていいのか分からずきょろきょろとする私。



 だって、まさか、3人同時に告白されるなんて。



ただひたすらに、瞬きを続けるしかなかった。











  * 好きだけど、スキ? *












 「……という夢を見たのよ」


小さく「へー」と呟いたは、
パクパクとお弁当を食べ進めている。

必要以上に力んでいるフォークを掴んだ右手が、
なんだか虚しく感じられた瞬間。

「なにそれ、反応薄ー…」
「だって、結局は夢なんでしょ?」

ぶぅ。
まあ確かにその通りだけどさ……。


「でもさ、素敵な夢だと思わない?
 目が覚めた瞬間あんなに幸せだったことなんて珍しいわよ!」
「あーはいはい」


…反応薄いというか、ウザがられてる?

……そんな気配で一杯です。


「ねぇ、何よその反応」
「だって、そんな惚気紛いな話されたってどう反応していいかこっちも分からないわよ!」


良かったねとでも言えばいいの!?
は語調を強めていった。

…確かにそうよね。


「でもね、あれよ?夢の中の私は冷静だったわ」
「なんで?」

やっとまともな返事が返ってきた。
これで私も話しやすいってもんだ。

「あんね、『こんなことあるわけない!』って、頬を抓ったの」
「で?」
「痛くなかった。んで夢だと気付いて瞬間目が覚めた。あっはっは!」

わざとらしく声を上げて笑う私。
は溜息を吐いていた。


私はタコさんウィンナーを口に放り込む。
数回噛んで飲み込んで、天井を見上げながら言った。

「あーあ。本当にそんなこと起こらないかな…」
「テニス部3人に同時に告白される?あーありえないアリエナイ」

手をパタパタと振りながらは言った。
冷たいなぁ、ぶぅ。

確かに、私もそんなものは期待してないけど。

「別に、本当に起こったら困るわよ!ただ面白いなー、って思っただけ」
「はいそーですかっ!」

、本当に機嫌悪いなぁ。
…セーリ中か?

いや、実のところ羨ましいのだろう。にしし。


さんってば、何そんなに怒ってるのさ」
「だって……」

そこまで言うと、は口をつぐんだ。
で、語調を変えた。


「ね、には本命の人とか居ないの?」
「うっ、い、居るけど…」


特に訊きもしなかったし話もしなかったから、
実は私たちお互いの好きな人とか、知らない。
まあ、訊かれたらいつでも教える覚悟は出来てたけど。
のことは信用してるし。向こうがこっちを信用してるかは別として。)


私の言葉に、は深い溜息を吐いていた。


「だったら、そんな告白受けた夢見て喜んでないの!」
「え、でもー…」
「でももクソもない!恋ってのはね、一途に想ってないと実らないものなの!」


お弁当箱をきんちゃく袋に入れると、は立ち上がった。
そして、ズンズンと自分の教室に帰っていった。


め。
昔、二股掛けようとして失敗したクチだな?


とまあ冗談はさておき。
そうだね、やっぱり一人に絞って一途に想わなきゃダメよね。



実は、夢に見た3人。
誰もが、私が“いいな”と思ったことのある人である。



大石秀一郎。成績トップの超秀才。
そのくせ小難しいところはなく、人望も篤い。とにかく優しい。

不二周助。ミステリアスなオーラすら感じさせる天才。
優しげな笑顔は乙女のハートを鷲掴み。とにかくカッコイイ。

菊丸英二。いつも元気な人気者。
成績は目を瞑るとして、運動神経抜群。とにかく面白い。



テニス部レギュラーとしても有名な、この3人。
とにかく人気なんだって。
そう、まるで芸能人を見てるみたいなんだよね。

いいな、とかは思っても、それは好意ではあっても恋ではなくて。
日本語では同じ“スキ”でも、英語で言うならlikeとlove。そんな違い。

だけどね、一人だけ。
一人だけ、本気で好きだと思う人がいる。


それは―――…。



さん」

「―――」



教室、自分の席に座っている私。

廊下から、控えめに掛けられた声。


それは、今、私が、心の中で、想っていた、人からで。




――それはかのテニス部でも有名な…


……大石秀一郎君あった。




どうして?

どうして突然?


戸惑っている私に対し、大石くんは。





「こんなこと突然言われても困ると思うけど。俺は、さんのことが…好きだ」





………は?




あまりに突然の出来事に、私は声を上げることすら出来なかった。


その場に座ったまま、瞬きを繰り返す。

視線の先には、少し赤い顔をした大石くんが。




口を開けたまま、呆然とする私。



 だって、まさか、自分の好きな人に告白されるなんて。



まさかそんな、夢のような出来事が。






こんなことが、あるわけない。




視線は離さぬまま、指を頬へ持っていって。


そっと抓ってみて、そして、私はゆっくりと涙を零した。






















性格の悪い話書いてみた。(ぁ
最後の一文の意味は、読み手にお任せです。
(嬉し泣きか悲し泣きか虚し泣きか、どれでしょう?/笑顔)
私の中では、・・・なんですけどね!

何で突然大石が告白してきたとか、その辺の裏話も書きたいなぁ。。。
(こういうこと書いてる時点で現実だってバレバレ/←これで確実にバレた)
日記に反転して書くか。(最近そういうの多いな…)

一番書きたかったのは、不二や菊はlikeでも、
大石はloveだってことです。(真顔)(痛)


2004/01/21