クラスメイトに面白いモノを借りた。


何かって?

それはヒミツ。



「不ー二っ」

「何?」


やっぱ、あれだよね。


「今日の放課後、ちょっと残って」



―――面白いことになりそう。











  * Both-er...ing? *












「何、英二。面白い物って」

「へっへー♪ちょっと待ってね」


約束通り、俺達は放課後、教室に居る。

二人きり。
もう誰も居ない教室は、いつもと違う世界みたい。

はやる気持ちを落ち着かせながら、
オレは「ニシシ」と笑うと、机の中から“例のブツ”を取り出した。

それは、一冊の本。


「ジャジャーン!!」


バッ、不二の眼前に出した物。

これは俗に言う、エロ本。


前に伸ばした両腕下ろして。
不二の顔を見てみた、ら。

瞬きをパチパチと繰り返しているだけ。

…なんだぁ。
反応薄いぞー。


「ねーぇ、不二ってこーゆー話あんまりしないけど、興味ないの?」

顔をずいと近づけて訊いてみた。
不二は、軽く笑い声を零して言った。

「やだな、英二。これでも僕は男だってこと忘れてない?」
「いや、それは分かってるけどさー…」

うーん。何かなぁ…。
ま、いっか。

「じゃあお楽しみの観賞タイムと行きましょーか」
「英二、部活は?」
「いーのいーの!言い訳なんて腐るほど思い付くって」

手塚に通用するか、分からないけど。
まあいいや。

それ、パラリ。


「…おぉー!!」


思わず歓声を上げるオレ。
不二は横で、「おやま」と小さく呟いた。

ペラペラとページを捲っていく。


わーぉ。中々の巨乳じゃん、姉ちゃん。

うわっモロ出し!

えー、そこまで見せちゃうワケ?


…しかし。


「―――」


横を見てみた。

不二、本に釘付けです。

オレの視線にも気付か…あ、気付いた。


「なに、英二」
「にゃーんでもない!」

目を合わすと、不二はばつが悪そうに顔を染めた。

ひひひ。やっぱそうなんだね。
そうだよにゃ、不二だって男だもんにゃ!
こういうの興味あるのが普通だよね。

あー…。


「ねぇ不二ぃ」
「…なに」



「なんかさぁ、ウズウズしてこない?」



わざとらしく視線を逸らしていた不二が、
凄い勢いでこっちを振り返ってきた。

オレはニヤッと笑うだけ。


「ね、シない?」
「ちょっと待って、英二。落ち着いて…」

微妙に後退りする不二。
オレは更に一歩詰め寄る。

「だって不二、まだ一度もやったことないじゃん?」


そうそう。申し遅れました。
実は僕たち、二ヶ月前から付き合ってます。
だけど、まだチューまでしか行ったことない。

…そろそろ進んで良い頃だと思いますが?


「英二…ここ、学校だよ?」
「したいものはしたい」
「…もう部活行かなきゃ!」
「いいじゃん、どうせ遅刻だよ」

言い訳紛いな言葉を並べて切り抜けようとする不二。
オレは即座にそれに対する言い訳を返すだけ。

いつの間にか、オレたちは壁際に来ている。
不二は焦った顔をする。



「ね、不二……」



 ――お願いだから、そんな泣きそうな顔すんな。




そっと、頬に手を掛けた。
ぎゅっと目を閉じて、ビクンと体が震えた。

オレ、そんなに怖い?


「……嫌なの?」


訊くと、不二はそっと目を開けた。


微かに震える、綺麗な目。
少しの涙で、潤んでる。

目の端に溜まった滴を、指の端で救い上げて言った。


「オレ、不二のこと大切にする。絶対傷付けない」
「え…じ……」
「本当にイヤだって言うんだったら、やめる。だけど…」



 ――やっぱり、一つになりたいんだ。



「……いいよ」
「―――」

不二は、はっきりと目を開いてオレを見上げてきた。


「突然のことに、ビックリしただけ」


自分で涙を拭うと、曖昧な笑いをして。



 「英二が僕のこと大切にしてくれるんだったら…僕も、英二のキモチ、大切にする」




ドクン。


なんだろ、不二の言葉を聞いた途端。



ドクン。


獣みたいな何かが、オレの中で活動を開始する。





ドクン。





不二のことを、ぎゅっと抱き締めた。



「大切にする。絶対に大切にする」
「…ありがと」


不二、感じてる?
オレの中にそびえ立つ熱。

さっきあんな本見て、興奮状態ってのもあるけど。


それ以上に、不二のこと、欲しがってる。




手に入れたい。





そっと口付けをした。
軽く伏せられた目。睫毛が長い。

不二って、本当に綺麗だ。


「ねぇ不二、さっきまであんな本見てたけどさ…」
「うん」

耳元でそっと。


「不二の方が全然綺麗」
「…バカ」

微笑交じりに返ってきた罵声のような返事。
でも、それは照れ隠しだって分かってる。

愛情の表れだって。



誰か人が来たらどうしよう、とかちょっとドキドキしながら。
それともこのドキドキは、別の場所から来てる?


とにかく、沢山のドキドキ。

脈拍は120回毎分のペースで。



しかし…いざとなるとどんなことしていいんだか分からない。
ビデオとかで予備知識はあるけど…自分がその現状に立つと何がなんだか。
しかも、男同士で…なんて。ああどうしようっ!

とりあえず…やりたい通りにやれってことだ。それだ。


「大好き」


無意識に言葉を零して。
ボタンを外した胸元に、そっと唇を寄せた。

少しピンクっぽい、白い肌。


「……ぁ…」


甘ったるい声に煽られながら、
オレは不二の全身を愛撫していた。

赤味を帯びた突起とかも、刺激して。


不二…大好き。



「……感じてる?」
「んっ!」


そそり立つ不二の中心にそっと手を這わす。
苦しそうにも聞こえる呻き声が、耳につく。

凄い。
オレも、声だけで感じてる。


それほどまでに不二のことを欲しがってたんだって今更気付いた。



「ねぇ不二、さっきまであんな本読んでたけどさ」
「うん……」

それによって感度も上がってるのかな?
まあ、それはさておいて。


「もう、やめるね。これからはさ…」


現物で抜きますから。
そういうと、不二は、「バカ」と言った。

それは負け惜しみだったのか、照れ隠しだったのか。



「もう、いい?オレも結構限界なんだ…」


実際、オレのモノもずっとその存在を主張し続けている。
そろそろ、キツイかな……。


質問に対して、不二は首を縦に振った。
少し(正直言うとかなり)抵抗はあったけど、
オレは、不二の後ろへ、手を伸ばした。


男同士って…ここでやるんだよね?
うわぁ。なんだかリアルに実感してきた…。
だけど、いざとなると、本当にどうすればいいんだか。


指とか、入れていいわけ?
ん?よく分からないぞ??
よし、ここは仮に不二が女の子だとしよう。
そしてそこにある穴は××(ピー)だとする。
だとしたら、指でならすものなんだよね。同じだよね。
だけど、どうやって?どっちにしろ分からないよ!!
ローションとか使うもの?そんなのオレ持ってないって!
何も準備無しに誘っちゃったけど、良かったわけ?
今更になって焦ってきたよ!うわー。
そういえばゴムとかも持ってないじゃん、オレ!
あれ、避妊の必要はないからなくても平気か。ほ。
だけど性病とかあるし他にも色々…。ま、なんとかなるか!
それより今は、えっとえっと……。


「……いつまで焦らすの」
「へ?」

久しぶりにまともなセリフを吐いた不二は。


オレの手を、引っ張って誘導した。


「ここ…英二のこと、欲しがってるんだよ?」
「不、二……」
「早く…」


そこへ来て、漸くオレは不二の身体が小刻みに震えている事に気付いた。

ごめん、不二。
オレ気付いてなかった。


ごくんと唾を飲んで。
そっと、指を、中に入れた。

思っていたほどの抵抗はなかった。


「ん……」
「不二、大丈夫?」
「だい…じょうぶ…」


息絶え絶えに話す不二。
だけど今は、その言葉を信じるしかないので、その通りにした。

指を動かすうちに、そこは適度に濡れてきた。
滑りが随分良くなってきたので、指を増やした。
不二は、眉を潜めて身を捩ったりする。

これであってるのかな…。
ちゃんと不二、感じてくれてるの?


「…英二だけじゃないよ」
「え?」

ポロリと両側に涙を零した不二は。



「僕だって、ずっと英二と一つになりたかった」



理性、飛んだ。


指を全部一気に引き抜いたオレは、
高く上げる不二の声を聞き流しつつ、自分のものを取り出した。
先ほどまで自分の指が入っていたそこにソレを宛がうと、
力を込めて、ぐっと押し込んだ。
不二は痛がっている様子が視界の端に入っていたけど。

今はとにかく繋がりたくて、一つになりたくて。
そればっかりだった。


始めは先しか入らなかった
キツかったし、不二も辛そうだったから。
動かなくてもそれだけでもイケそうだったけど、
ここまで来たからにはもっと一緒に居たかったし。
何より、二人で同じ物を感じていたかったから。



「不二…大丈夫?」
「大丈夫だよ、英二」

「痛くない?」
「ん、もう平気」

「…動くよ」
「うん」



腰を掴んで、そっと、ずらした。
もうちょっとだけ、奥に入った。
抜けない程度に引き出して、また差し入れた。
繰り返しているうちに、少しずつ奥へ向かっていって。


「…奥まで、入ったよ」
「ホント?」


不二は、涙を流した。
痛いのかな?とも考えたけど。

オレも涙を流していることに気付いた。


何だろ。
嬉しい…嬉しいんだ。
きっとこれは、歓喜の涙。


「不二…オレ、そろそろ、限界…」
「英二、僕も…」


激しいようで、穏やかな感情。
包まれたオレ達。

不二からの強い締め付けに耐え兼ねたオレは、全てを放った。
視界に白い液体が飛び散ったのは、それと同時。





  **





ぼーっとした意識から覚めると、
オレは不二を抱き締めたまま、教室の床に寝てた。
行為の直後、そのまま倒れこんだような体勢だった。

体を起こすと、不二も目を覚ました。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「ううん。大丈夫」


その後は…暫く無言。

ちらりと不二を横目で見てみて、またパッと戻して。
もう一度、今度はじーっと見てみる。
イマイチ焦点が合っていなかった。

…大丈夫かな。


「あの…不二、ごめんね?」
「どうして」

どうしてと言われても…。

「その、なんか、オレの要望無理矢理通しちゃったみたいな感じで…」
「何言ってるの」

指先を合わせつつ喋るオレに、
不二はむくっと体を起こすと、抱き着いてきた。

そして、言う。


「僕に同じセリフ、繰り返させる気?」


あ……。



『僕だって、ずっと英二と一つになりたかった』



思い出した、先ほどの言葉。

そっか。
オレだけじゃないんだ。
お互い、相手を求めていたんだね。



「今日はもう、部活は無理だね」
「うん…体動きそうにないし」
「それじゃあさ」



――暫く、このままでいようか。



言葉に対して、不二は首を縦に振った。




だから、このまま。


体を寄せ合って、お互いの感じられるがままの体温を。






















裏々26162HITで、甘めの菊不二小説、でした。

菊不二の菊は黒くならないらしい。
菊大の菊は真っ黒の極みなのに!笑。

青春してるねぇ。いやはや。
色々とうふふな場面が多いいやんvな作品になってしまった。(何)

ぱんぷきん様、リク有り難うございました!
こんな感じで宜しかったでしょうか…?


2004/01/13