私はね。

ずーっと見てて、アナタのことが好きになったの。


どうして惹かれたのかというと、

要素は色々とあるのだろうけど。



それに比べて、こっちは何?



私に、アナタを引き付けるような魅力は

果たしてあったものでしょうか。











  * 微笑み引力 *












付き合い始めて4ヶ月。
だけどまだ、拭い去れない疑問が、ある。



「ねぇ」

「ん?」



爽やかな笑顔が返ってくる。


私はその目をじーっと見つめる。

向こうは全く動じず笑顔を続けるものだから、
私は仕方なしに溜息を吐いて視線を逸らした。


私だってね、たまに不安になるんだよ。

自分がアナタにとって何であるか、
疑問を抱えているんだよ。



「私のどこを好きになったの」



唐突に質問。

予想もしていなかったようで、
向こうは目を大きく見開いていた。




だって、不思議なんだもん。


私なんて、特別可愛い方じゃない。(相当多めに見て中の上)

性格だって、がさつで気品さが足りてないし。

一見元気一杯と見せかけて、実は怠惰的だし。


こんな私の、どこを好きになったのでしょう。


やっぱり気になるじゃない?

すると大石は、表情を崩して微笑を浮かべた。


「伝えたはずだぞ」

「……」


私は思わず黙り込む。

だって、あれが真実であるなら、余計に疑問だもの。


私が、呼び出して告白した。

「好きです」と一言。


空いた間に高鳴る鼓動。

止めたのは、アナタの言葉。



『実はオレも、一目惚れだったんだ』




…嘘でしょう。



「せいぜい中の上なのに…」

「ん、なんかいったか?」

「いや、こっちの話」


私は足を投げ出して腕を頭の後ろで組む。


なんで。

私に一目惚れなんて。


…やっぱり気になるじゃない。



「詳しく言うとどこに惚れたのさ」

「ぶ」


あまりにストレートな言葉に、思わず噴き出してた。

すると、頬を軽く染めて、顔を伏せ気味にした。


「…笑顔が」

「え?」


聞き返すと、向こうは「いや…」と恥ずかしそうにした。

照れ隠しなのか頬を掻くと、もう一度言い直した。


「正直、それほど際立って美人だとかは、思わなかった」


あ、可愛くないって意味じゃないぞ、と付け足して。




「でも…笑顔が、綺麗だったんだ」




……バカ。

嬉しいじゃんよ。


普段は可愛げのない私だけれど。


体を寄せて、肩にぴたりと耳当てた。

たまには、甘えたって、いいでしょ?



「私もね、秀一郎の笑顔を…好きになったんだ」



伝えた後、ちらりと見上げると、向こうは笑ってた。

照れた表情はどこかに消えて、いつもの爽やかな笑顔だった。


それにつられて、私も笑った。




不思議だね。

どちらともなく、引き合っていた。

特別な理由なんて、ないにしても。


笑顔が生み出す、不可視の力。

それはまるで、万有引力。



好きと好きは、お互い引き合った笑顔の中に。






















20.5巻が発売する前までは、
絶対大石が好きなタイプは「笑顔が綺麗な子」と決めてました。
(ちなみに“綺麗な”は“明るい・眩しい・可愛い”等と変換可)
まさか眼鏡っ娘なんて思わないじゃん!(ぁ
反抗期なので知った後もこの方向で書き続けます。

主人公には、敢えて名前を呼ばずに最後まで引っ張ってもらった。
一人称でこれをやるのはそこそこに大変なのよ…。

題名、こっそり気に入ってます。


2004/01/08