* 真っ赤なお鼻のルドルフ *












折角気合入れて中学校受験したのに。
一学期のみで引っ越しという素敵な運命を辿っている私。
すっかりアメリカン(?)になってます。

そう、私の引っ越し先というのは、海を越えた地、アメリカ。
英語は難しいけど、最近ではちょっとずつ喋れるようになってきて楽しい。
特に今はクリスマス前ということで、
パーティーも沢山あって、歌とかも沢山憶えて。

そして、今は冬休み。


 「帰って来ました日本〜!」



一年半ぶりにふみしめる日本の地は、
懐かしいようでいて初めて来た異国の地のよう。

不思議。
窓から見渡す街は、思い切りクリスマスの色合い。
アメリカに比べたら飾り付けなんて上品なものだけれど。
それでも、キラキラと光るイルミネーションを見ていると、心がどこか弾む。

さーて。
これから何をしようかね。
約二週間、ジャパンライフを満喫するわよ。

友達と遊ぶでしょ、洋服買うでしょ、紅白見るでしょ、それから…。


「………」


学校、行こっかな…。

確か、日本の学校って25日ごろまでやるよね。
(今は22日/アメリカは冬休みが始まるのが早い)


そうと決めたら即実行。


「ちょっと出掛けてきまーす!」
「はいはい。遅くならないのよ」


コート羽織ってマフラー巻いて。
冷たい空気にさらされながら、走った。



  **



懐かしの青春学園中等部の前に立ってございます。
ただいまの時刻、5:47。

部活に入ってる人ならそろそろ帰る頃。
…あれ、あの人って部活に入ってたかな…。


そう。
実は、会いたい人がいてここまでやってきた。
いや、会うとかそんな大袈裟な話じゃなくて、
ちょっと遠巻きに見る程度でいいのだけれど。

引っ越す前、好きだった人。

長い間会わなかったから、想いは薄れてる。
けど、どこかまだ気になる人。

久しぶりに対面したら、ときめいてしまうものなのでしょーか?


…あら?
ナイスタイミーング!

あそこに居るのは、その人のお兄さんではなくて?


前だったら絶対無理だったけれど。
アメリカで図々しさがアップしたかしら?

私は駆け寄って声を掛けたのでした。


「不二先輩!」

「ん、なんだい」


そう。
私の意中の人というのは、
不二周助先輩…の弟、不二裕太くん、デス。

「あの、私、昔裕太くんと同じクラスだったというんですが…」
「裕太に何か用かい?」

しどろもどろの私だけど、
不二先輩は優しく微笑みかけてくれた。
優しいなあ…。

「いや、別に用ってほどのものでもないんですが…」

イマイチはっきりしない私。
あー、こんなんじゃだめよちひろっ!

とにかく、居場所を聞き出す。
何部だとか、家に居るとか、習い事とか。

と思ったら…。


「どちらにしろ、裕太は大晦日まで帰ってこないけど」
「……は?」

思わずマヌケな声が飛び出す。
私以上に驚いたのは、向こうの方かもしれない…。

「ど、どういうことですか…」
「あれ、知らないの?」


要約すると、話はこんな感じ。

去年の夏、別の学校へ転校した。
そこは全寮制の学校で、当人はたまにしか家に帰ってこない。


「そうですか…ありがとうございます…」


肩を落とす私。
そしたら。

「…良かったら、行き方教えるけど?」

「―――」



  **



そうして、私は教えられた学校の前に居る。
青春台の駅から電車で約20分。
キリスト教の大きな学校です。

名前は…。


「ほにゃ?」


見た瞬間、軽く笑ってしまった。
だって…ね?


さてと。
受付はどこかしら、って。
特別な用事もないのに呼び出すのも変かな…。


……ん?



「不二…?」

「―――」



学校の前。
ジャージ姿にコートという姿で、その人は居た。


「お前、…?」
「ハイ…」

思わず小声。
いざ会ってみると、言葉が出てこなくて…。

やってくるなりもじもじしている私に、不二は。


「俺のこと呼び出したの、お前か!?20分も待たせやがって…」
「え、知らないそんなの」
「いや、間違いねぇ。さっき兄貴から電話があって
 『さんて子が会いに行くから、門の前に出てて』だとよ」


えっ。
不二先輩…連絡してくれたんだ。

…ありがとう。


「トレーニングの途中だったのに…こんな寒いところで20分も…」
「あはは、ごめんね」

って私は悪くないんだけどー。
悪いのは、時間を告げなかった不二先輩?
いや、忘れちゃったんだよね、きっと。
…わざとかなぁ。

「で、何の用だよ」
「え?えーっとね…」


緊張もほぐれてきて、私は漸く不二の顔を見上げた。

わ、背が伸びてる…。
体格もがっしりしてきてる。
顔も、幼さが抜け……?


「……ぷっ」
「な!」
「あはははは!」


私は、爆笑に陥る。
だって。

「不二、鼻真っ赤!」
「だ、だってこれは…」
「あはははっ!」

笑いを止めない私に、
不二はばつが悪そうな表情をする。
今度は、鼻だけでなく顔全部を赤く染めて。

なんだかかわいそうになってきたので、
事情を話すことにした。
別に私、鼻が赤いことが単純に面白かったので笑ったわけじゃない。

「あのさ、真っ赤なお鼻の…って歌あるじゃん?」
「それがなんだよ…」
「その歌ね、英語版だとトナカイさんの名前が分かるんだけどね」

一瞬、間を置いてから。


「“ルドルフ”っていうんだよ」

「ルドルフ…?」


向こうは少し驚いた風な顔をした。
私は笑顔で言う。

「ピッタリじゃん!」

喜んでいいのか?という感じで複雑な顔をしていた。

私も、なんとなく苦笑する。


「いつの間に…転校してたんだね」
「お前が先だ」
「そーいう話じゃなくて!」


新しい学校、どう?

そう問い掛けた。


不二は暫く眉を顰めていたけど、
最終的には視線をそらして、「楽しくやってるよ」と言った。
「同じく」と、返してやった。


「…それじゃ、私帰るから」
「何しに来たんだ?」

疑問に対して、私は笑顔で。



「無事確認できたから。もう行くねっ」



不二は疑問符を浮かべたままだったけれど。

半ばスキップ気味に、私はその場を後にした。




  今も変わらぬトキメキ抱えて。






















昔からこの真っ赤なお鼻のトナカイネタをやりたかったんだよ。
キャラは絶対裕太だ!と決めて。
去年のクリスマスより前に計画してたんだけど、
直前になって忘れちゃって。越えた頃思い出した。(ぁ
一年越しで、ついに念願が叶った。

聖ルドルフって、クリスマスは何かやるのかなー。(キリシタン)
最近の疑問でございます。

とりあえずメリクリーってことで…☆


2003/12/24