「(大石もこうだったのかな…)」



左手で掴んだシャーペン。


じっと見つめた後、

くるりと回して、右手に持ち替えた。











  * 左右不対称 *












  も ど か し い 。


ギリギリと力む右手。
もう完全に疲れきっている。
書かれた文字は歪んでるってか読めないし。

嗚呼、お母様お父様マリア様。
どうして貴方は私を左利きに産んでたもったのでありませうか。
それとも利き手を怪我した全て私めの責任でありましょうか。


左手怪我して格闘中。
、ぎっちょです。


「(ちょっとくらい左手使ってもいいんじゃないだろうか…)」


持ち替えてみる。
やっぱり書きやすい。
パーッと黒板を写し始める。

でも…ちょっと、痛いカモ。


角度か何かの問題だろうか。
鉛筆も握れないほどの重症ではないのだけれど、
黒板を写すだけの作業が苦痛に感じられる。
そんなに力込めてるつもりもないんだけどな。

左斜め前の席を見た。
さらさらとノートを写している右手。


「………」


癖でくるりとペンを回した私は、それを反対の手に持ち替えた。
一つ溜息を吐き、再び黒板を写し始める。右手で。

疲れた…。

誰かのをコピーさせてもらえば良かったな。
それだよ!どうして気付かなかったんだろ!

でも…ここまできたからにはやってやる。
小学一年生よりは上手い気がするわよ。

よいしょっと…。


「もう全員黒板写し終わったよな、消すぞー」
「あ…」


ま、いっか。
どうせ誰かにコピーさせてもらっても良かったんだし。

…なんか虚しいけど。とほ。


「先生」
「どうした大石」

黒板消しを持ち上げた先生に、臨席の人は。


さんがまだ写し終えていないみたいなので、待ってあげられませんか」
「お、悪いな

先生は黒板消しを下ろすと、教科書を使いながら何やら説明を始めた。

良い人だ。

先生も、だけど。
大石が…。

ちら、と横を見ると、目が合った。
何気に微笑まれたので、口だけ「アリガト」と動かした。


突然、気になってきた。

大石は右腕怪我したとき、左手で書いてたのかな。
ノート取るの手伝ってあげればよかったか。
それとも文字を書くくらいなら平気だったのかな。

我が身になると、そんな些細なことも気になってくる。


ん?

本当に、それが理由なの……?


不器用で頑固な私に、
要領よくて従順な彼。

一見バラバラではあるけれど。
ある意味調和は取れてる、かな?



隣り合わせた正反対に、苦笑を零したくなった、そんな時。






















右手首やっちまった、ヒンジャミンな私です。
昨日は授業をほとんど左手で受けました。疲れた。
といいつつ、結構猛烈なスピードで書き綴り、
この小説をも執筆していた、そんな人間稲瀬。(笑)
左手で文字書くの、結構自信有り。あ、私は右利きです。

大石、文字書くのはきっと平気だったと思います。
(だって鞄とか普通に右で持つしバレーボールはやるし/ぁ)

“怪我した”と打とうとするたびに、
“汚した”と出てくるのがなんか嫌だった。(苦)


2003/12/09