学校帰り、公園に来た時のこと。
特に何をするわけでもなく、ベンチに座ってゆっくりしていた。
ちょっとした談笑を交わしたり、空を見上げたり。
そんな、どうってことない常識を
幸せと感じていた時のこと。
それもこれも、貴方が横にいたからだと。
* 平穏優美 *
「見て、あの雲。メロンパンに見える」
会話の合間、指差されたその先。
首をもたげて視界に入れれば、
下が平らで上は半円を描いている、そんな雲。
「メロンパン?どうして。別にアンパンでもジャムパンでもいいじゃない」
普通だったら、バカにして終わりそうな場面。
だけど、貴方だから。
「オレが好きだから」
「なるほど」
笑って許せてしまう。
ううん、笑顔を作らせてくれる。
自分が笑顔を作るのもそうだけどそれ以上に、
他の人を笑わすのが特技だ、英二は。
暫くは、そうして首を持ち上げていた。
ゆっくりと流れて行く雲を見て。
着実に動いているとはいえ、とてもつもなく緩やかなそれ。
上空の風は、ここ地上と同じくゆっくりなんだな、と思う。
太陽は、後ろの空。
たまに雲の後ろに隠れたのか、視界は薄暗くなり。
また暫く経つと、表に現れたのか熱を当ててくる。
ゆっくりと流れていく時を、心地好く感じていた。
上向けに倒していた首を起こして唸る、隣に座る人。
「あーあ。上ばっかり見てたら首が痛くなった」
ぐるんぐるんと一回転させて。
少々何かを考えた様子を見せると、英二は。
「ちょっと休ませて」
「え、英二!?」
ぱたんと倒れ込んだ。
私のふところへ向けて。
驚いた声を上げた私だけれど、英二は動じなかった。
「………」
自分の膝の上に加わった重み。
その重みに、生命の慈しみを覚えた。
癖のある跳ねた髪を手ぐしで梳く。
軽く汗ばんだその髪。
自分のものとは随分と手触りが違うな、と感じた。
「あー…心地いー。このまま寝ちゃっていい?」
「ダメ」
「けちー」
そんなことを口にするけど。
私が英二を無理に退かそうとしないことくらい、知っている。
私がけちんぼなら、英二はずるっこだ。
・・・。
結構お似合い? なんちゃってね。冗談。
そんなことを考えつつ、私はずっと英二の髪を梳いていた。
それと同時、顔には笑みが零れていたこと、
向こうが気付いていたかは、知らないけれど。
主人公を文系少女にした。
どこら辺って、言葉の言い回しが。
(おてんば娘じゃこうはいかないぜ)
笑わせ師英二、大活躍だね☆
自分が笑うこと以上に、に篭めた思いがあったり。
(オレだっていつまでも笑ってないぜ←誰のセリフだっけ?)
2003/12/01