* 夢で一緒に *
「寝てもいいよ」
「ヤダ」
わざわざ語調を強めてそう言ってのけた自分は、
相当な意地っ張りだと我ながら思う。
「だって、一年間の締めと同時に始まりなのに!寝ちゃうなんて勿体な……ふゎ」
噛み殺しきれなかった欠伸が口を飛び出す。
焦って口を両手で閉じたけれど、
秀ちゃんはしっかり気付いて横で笑ってた。
「ほら、眠そう」
「大丈夫だって!!」
目の端に浮かんだ涙を拭きながらのその言葉に、
果たして説得力があったのかは、私でも分からない。
だけど、強い気持ちだけはあるから。
「とにかく!絶対一緒に迎えようね」
「はいはい」
来年になるまで、あと半時間。
今まで何度、「友達の家に泊まる!」と言っても許してもらえなかった私。
年末年始は、必ず自宅で迎えるものだと。そう言われて育ってきた。
それが今年。
恋人の家に行きたいと頼み込んだところ、あっさり許しが出た。
どちらかというと普通は逆なんじゃないかなぁ、という気がしないでもないけど。
どうしても!と言うと、「そういえばお母さんが高校2年生の時ね…」と昔話をされた。
散々続く初カレとの惚気話を聞き終えると、
涙ながらにお母さんは許可を出してくれた。
私が年末恋人の家へ泊まりに行くということも、お母さんの話に対しても、
お父さんは非常につまらなさそうだったけれど。
「あなたもそんな年頃だものねぇ。上手くやるのよ」
と、お母さんは激しく応援モード。
自分の過去に浸りまくってる様子だった。
とりあえず、私はただいま大石家に、居ます。
「あと何分?」
「ん、23分」
「えー、10分も経ってない!」
テレビで写している紅白歌合戦も、もうすぐトリが出てくるころ。
だけど私には演歌とかはよく分からないし。
だからといって最近の歌はというと、
お目当てのグループは前半に出てしまったし。
はっきりいって、暇なのです。
「(あー…歌声が遠くなってきたよ)」
電波によって映像を映し出している箱。
それを見ていたはずの私の視界は、霞んできて。
なんだか、瞼が、重く―――……。
* * *
ん〜…なんだ?
えーと、何してたっけ。
そうだ。カウントダウン…。
さっきから10分くらいは経ったかなぁ。
まだかな。ん?もっと???
あれ?テレビ、紅白やってる?
なんか違うよ。
ねぇ秀ちゃ、………秀ちゃん?
「ほわっ!?」
思わず変な声を上げた私。
時計を見て驚く。
あ…あ……!!
いつの間にかとっくに来年になってた!
嘘、まだ目を閉じてから数分だと思ったのに!
まさか30分以上…どころか一時間近く過ぎてるなんて!!
寝た…寝てたの、私!?
秀ちゃんも起こしてくれればいいのに!
「秀……っ…?」
気付いた。
私の頭は、秀ちゃんの肩に。
秀ちゃんの頭は、私の頭に。
それぞれに体重を預けて、安心しきっていた。
……こんなんだから寝ちゃうんだよー。
起こさないように、心の中だけで文句を言って。
年末年始を二人同時に迎えられたことは、とりあえず確かな様子。
心地好い身長差に微笑して、再び体を預ける。
次は初夢で出会いたいな、と思いつつ、もう一度目を閉じた。
夢が元ネタ。大石がぁ!私の頭に頭乗せ。
ははんははんがは〜ん♪(壊れモード)
夢でも叫んでたので夢小説でも叫ばせてみたYO!
とにかく素敵な夢でした。大石大好き〜v
夢百題『No.051 新しい』と同じ設定を意識した。
カウントダウンに拘ってる辺り、うん。いいかなと思って。
“体を預ける”に裏々的意味合いは全くありませんのでかしこ。
(フォローを入れちゃう辺りが自分の虚しさ)(放っておけばいいのに)
新年のご挨拶はしっかりと抜かす展開へ持ち込む頑張りっぷり。
2003/12/01