* 近い未来を予想した図。 *
「だーれだっ」
待ち合わせ時刻丁度。
少し離れた場所に隠れていた私は、
現れた者の目を背後から突然塞いだ。
リョーマは私の名前を呼ばなかった。
でも変わりに、「久しぶり」と言った。
だから、私も笑ってそれを返した。
「やー、ホント懐かしー!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねる私。
リョーマは横で何やら数字を数えている。
「2年ぶりだっけ?」
「ぶぶー。3年ぶりです。リョーマ爺くさい!」
「………」
こんな笑い合いも、久しぶり。
第一、リョーマと日本で合うのは初めてだ。
「いつからこっち、居るの」
「昨日から」
「へー…」
リョーマは一旦興味のなさそうな声を出したけど。
「お帰り」
とだけ、小さく呟いた。
「反則だぁー…」
じわっと目に涙が浮かんだ。
ああ、私帰ってきたんだなって。
嬉しい。今またこうしてリョーマと一緒に居られること。
だけど……寂しいな。
「……アメリカに帰る!」
「!?」
私の涙は、いつの間にか嬉し涙から愁い涙へ姿を替えた。
なんか、さ。
向こうに居るうちは、日本に帰りたいって思ってたけど。
完全に帰国となると、寂しい。
今、突然強く感じた。
なんでだろ。
リョーマと一緒に居ると、思い出すのかな?
あんなことを言い出した私に、リョーマは戸惑っていた。
そっちに視線を向けて、私は問い掛けた。
「リョーマは…さ」
「ん?」
「アメリカ帰りたいなとか、考えないの?」
訊いて、更に顔を覗き込んだ。
リョーマは目線を逸らすと、言った。
「別に。今は日本に居るんだから、それでいい」
…ポジティブなんだか、我関せずな短絡的思考なのか。
「…変わらないね」
久しぶりに見たその姿。
色々変わっていた。
身長なんて、私の方が高いくらいだったのに。
肩幅の広さだって、そんなに変わらなかった。
いつの間にか声も低くなってる。
だけど、その考え方は今も変わらない。
「だけど…まあ、それもそうだねー」
思い出はいつまでも残ってるし、って感じ?
それぞれの良さが、あるんだ。
そう自分に言い聞かせ始めた。
前はあれほど帰りたかったのに、不思議。
離れてみるとこれほど辛いんだ。
だけどどうして、リョーマの時は笑顔で別れることが出来たんだろ?
涙は流れたけど、
あれは愁い涙じゃなかったと、私は思うんだ。
そう、あの頃私たちは、二人揃ってアメリカに居た。
そう思うと また溢れそうになる涙を 抑えることで 必死だった。
主人公→アメリカ。(待たれ)
笑顔で別れられたのは、また会えるという希望があったから、です。(種明かし)
一時帰国の時なんて、離れるの全然淋しくないもん。
自分はどうなるかなぁ。
題名は近い未来を予想した図。
2003/11/04