* L0vE aFFaiR *













「不二ぃーーーー!!」

「ん、何?」


不二の元に現れたのは、乾貞治以下略である。
砂煙を上げながら3年6組の教室に飛び込んできた。
(推定速度200km/時)(速)
(大体何故校舎内でそんな砂埃が起つ)


「どういうことだ…!」
「鼻息荒いよ」

乾の勢い、それを軽く受け流す不二に、
横に居た菊丸は呆然としていたことは言うまでもない。

「見たか!?桃城とキャ・オ・ルv!」
「いや、昨日の部活以来」
「見ろ、今すぐ見ろ!!!」
「えーめんどくさい」

力む乾。
清々しく流す不二。

その雰囲気に圧倒された菊丸は、
トイレを言い訳にその場を逃げ出したりした。
(行き先は言うまでもなく「大石ぃ!」だ)


「俺が薫を思い続けてン十年…!」

…語りだす乾に不二は、もう突っ込むことすらしなかった。

「いくらこっちから愛を注いでも、相手が受け止めてくれなければ
 意味がないということに気付いた」
「今頃気付いたの」
「お互い様だろ」

そう。
乾は海堂、不二は手塚に。

何度作戦失敗しようと、また立ち上がる。
それがこの二人だ。

それぞれ相手に熱愛アプローチ中…だが。


何故か不二乾はばっちり成立したカップルなのである。


「それで、だ。薫のテニスへの熱心さを利用することにした」
「うん」
「ここ最近、昼休みは裏庭で共に新型スネイクの特訓などをしていたんだ」
「へぇ、凄いじゃない」

不二のセリフに乾はちょっとだけ得意げな顔をした。(キモイ/誉)

「そうか…それで最近11組に行っても居なかったのか」
「来てくれてたのか。居なくてごめんな」
「ううん、君が幸せなら」

…ちょっとはカップルっぽいことを主張。
(会話を耳にしてしまった男子約二名が硬直していたがさておき)

「それで、上手い具合に海堂と桃城の中が険悪なムードにっ!」
「ああ…確かに一昨日まで避けあってたように見えたな。…でも」

「そう、“でも”だろ!?!?」


バン!と乾は机を叩いた。
皆(といってもほんの数人だが)の視線が集まり教室内の空気がしんとした。

「…スマン」と乾が一言言うと皆元の動きに戻った。
(相当疑問には思っていたようだが…さておき)


「昨日は完璧に元通り…そうだろう!?」
「いや、寧ろ前以上に…」

「言うなぁぁあぁああぁ!!」


…誰もが聞こえていないふりをした。
(勿論、実際には聞こえまくりだが、振り向いたら終わりだ)


「とにかく落ち着きな、乾」
「ハイ…」

不二が困ったような顔で見ると、
乾も自分を落ち着かせるようにした。
(いつもにはないカップリュな不二乾の主張っぷり)

「それで、それがどうしたの?」
「そう…それには裏で手を引いてる奴が居ることが発覚したんだ!」

データノートのページを破りとらんばかりの勢いで
激しく捲り出した乾。
(更に顔はノートから至近距離)
(一言で言うならキモ/略)

一人の人間の名前くらいノートを開かなくても分かるだろう、
…などという突っ込みは不二はしなかった。
上を見上げながら、冷静に「ああ」と言った。

乾は固まる。

「何か知っているような口振りだな」
「うん。だってそれ林くんのことでしょ?」
「・」

乾、フリーズ。
(プログラムの強制終了―このプログラムは応答しておりませ/以下略)

「…知ってた、のか?」
「うん」

崩れ落ちそうな乾の口調。
不二はさも当然かのようにさらりと答えた。
わなわなと震え出す乾。

「どうしてそんな重要なことを教えてくれなかった!?」
「えー」

次の授業の準備をしながら、不二は一言。

「彼はそっとしておいてやろうかなって」
「何故だー!?!」
「いや、だって三角関係って見てて面白いし」

はた。

「……三角関係?」
「え、林は桃と海堂の仲介役、でしょ?」
「そうだぁー!!」

一度は不二の言葉に固まった乾。
しかし、不二の話術でそんなことは忘れ
また激しく行動を開始した。

「とりあえず、不二!林の抹殺計画だ!行くぞ!」
「ヤダ」

はたた。

「何故だ、不二…!」
「んー、だから、見てて面白いんだって」

戸惑いを隠せない乾。
不二は飄々と答えるだけ。
その態度に、乾はついに立ち上がった。


「お前がそのつもりなら、俺は一人で薫を手に入れてやるぅ!」


乾、3年6組から走り出す。

…不二乾、突然破局の予感。


チャイムが鳴り、菊丸も帰ってきた。
その時不二は、ぼーっとしたような、でも思い悩んでいるような、
曇った視線を窓の外へ向けていた。

「どうしたの、深刻そうな顔しちゃって。乾と喧嘩でもしたー?」
という菊丸の質問に対しては、
「いや、そんなことはどうでもいいんだけどね」
と答えたが。(ムゴイ)


「…林も辛いよね」


小さく苦笑した。

菊丸は頭の周りに沢山の
疑問符を浮かべまくるだけだった。





  **





「折角俺が日々努力して手に入れかけた薫のheartを…林め」

四時間目の授業も終えて昼休み。
ずんずんと歩いていく乾の足は、
2年8組周辺へと向かっていた。

そう、先ほどの休み時間に事件を目撃した現場である。



『で、結局元通り、てかそれ以上にラブッちゃってるワケ?』

『な、何言ってるんだお前!?』

『…フシュゥ〜〜……』

『反発すんのか?俺が居なかったら、お前ら
 今こうしてらんなかったぞ。感謝しろよ』



「(そんな会話を終えると、三人で笑い合っていた。
 そう!あの薫でさえはにかんだ分かりにくくともプリチ→な笑みを浮かべたのだ。

  桃 城 に 向 か っ て 。

 ……これは許されざる事態。
 キーパーソンは全てヤツ、林大介だ!!)」


脳内で葛藤を終え、考えの方向を定めると乾は更に足を速めた。
何気に校則はきちんと守るたちなので走ったりはしなかったが。
(推定速度50km/時←競歩でこれは相当キモイ)




そして、2年8組教室。


  居 た 。


思わず乾は固まった。(このポンコツめ/ぇ)
数秒後にはまた動き出したが。

「林のくせに…所詮林のくせにぃっ!薫の純粋なHEARTに
 何らかの方法で嵐を起こした…この悪魔め!邪鬼め!
 ああしてやるこうしてやる…!」

ぶつぶつと呟きつつ、新作の汁のレシピを閃き、
フフフと笑った乾。


その時、7組の教室の中から海堂が出てきた。
乾と目が合うと、「どもっス」と軽く会釈した。

やあ海堂。
今日はいい天気だね。(※雨です)
(雨ならスネイクの特訓はしない約束なので海堂も校舎内に居るのだが)
どうだい、これからちょっと愛でも育みに…。

乾はそう言おうとした、が。

…軽く横をスルーされた。
そして、8組の教室に入っていった。

乾、方向転換。(右向けー、右っ)

見えたのは、桃城、林の二人。
そこに海堂が加わる。


乾はプッツンした。


「(林だ!林が海堂を無理に呼び寄せているんだ!
 可愛そうにマイラブリーハニー!!)」


…実際は、前の休み時間(そう、乾が聞いた会話部分の丁度前の部分に当たる)に、
桃城が海堂を「今日は雨だから乾先輩との練習ないだろ、遊びに来いよ」
と招いていたのだが。

そんなこと、乾は知る由もない。

とりあえず、新作乾汁はまた別の機会に回すことにして、
林を呼び出すことに決定した。

「林!」
「あ、乾先輩」

振り返った林に乾は叫ぶ。

「先輩命令だ、来い!!」
「別に命令じゃなくたって呼ばれりゃ行きますよ」

乾には聞こえないように呟きながら、
かったるそうだが林は教室から出た。
林が海堂から離れ、乾は満足だった…が。

教室の一郭は桃城と海堂の二人だけになった。


「!!!」
「なんの用っスか?」

教室内を覗くなり口を開けて固まっている乾に、
林は不思議そうに問い掛けた。すると。

「戻れ、今すぐ戻れ!」
「……は?」
「いいから戻るんだぁ!!!(力)」

…林は意味が分からなかった。

それはそうであろう。
呼び出されて行ってみれば、言われたことは「戻れ」。
……誰でも戸惑う。

「何か用が合って呼んだんじゃないんスか?」
「…そうだった」

乾は冷静になった。
林はそれ以上に冷静で呆れ返っていたが。

乾は突然大声で言う。

「お前、何故海堂と桃城をそんなにくっつけたがる!?」
「俺は別に…」
「隠したって無駄だ!」

お門違いっぽい乾の叫びだが、
今回ばかりは当たりである。

林は溜息を吐いた。

「言うなら、二人に幸せで居て欲しいからっス」
「…どういうことだ」

尋ねてきたのが先輩でなかったら答えなかっただろうが。
(荒井ほどではないとはいえ、林も先輩を尊敬しているわけだ)

林は苦笑をすると言った。


「まぁ、キューピッド気分ってヤツっスよ」


凍った乾がそのまま解凍されないことに気付くと、
林はその場を後にした。

その30分後、予鈴の音で乾は目覚めた。
(その間、両腕を体側に付けピッタリと直立して固まっていたとなると相当キ/略)

といっても意識ははっきりとしないまま、
ロボットのようにぎくしゃくと、でも両手足はぴっちり伸ばして、
教室まで歩いて帰った。

道行くものが皆注目していたことは言うまでもない。






  **





部活開始前。

自主トレをしている海堂に林がちょっかいを出す。
桃が何やら文句っぽいことを言いながら加わる。
林がその桃を更に茶化す。
そのまま会話を繰り広げ出す。


「乾」
「なんだ?」
「いいの?またあんな感じだけど」

視線の先には例の3人。
乾は目を三角にした(=激怒した)が、
眼鏡が和紙だったがために確認できない…と、そうではない。

本当に怒っていなかった。


「なんていうか、林はオカシイ」
「そうなの?」
「利益もなくに他のものをくっ付けたがるとは…。
 今時キューピッドなどというような言葉を使うし…」

ふっ、と乾は嘲笑を飛ばした。
(マイキューティーハニーはありなのにキューピッドはダメなのか?
 という疑問は物語の進行を邪魔するのでさておこう)


「やっぱり、俺にはお前だけだ、不二」
「僕には手塚がいるけど」
「ああそうだ。俺にも薫がいる」

そう笑い合うと、二人は熱い抱擁を交わした。
(それを目撃してしまった菊丸は呆然としていた)


コイツら、破局したんじゃなかったっけ?

・・・・・・。

予感だけで実際は違った、というのが現状である。
(というかぶっちゃけ、喧嘩っぽいことをしていたことさえ忘れている)
(そういう仲なのさ、不二乾は)
(言葉なしでも分かり合える仲?そんなバカな。別にどうだっていい仲、なのである/酷)
(それでもやはり全身から発せられるラブラブ感は否めない)(そこら辺が不二乾)


桃城、海堂、林の3人で会話をしているのを見、
所詮は林だ、と乾は鼻で笑って気に留めなかった。
そんな間にも桃城と海堂の仲が進展していくのを、
不二は知っていながら乾に伝えなかった。

だって乾、満足そうだし。




相手の幸せを願う。それも愛の形なんです。


…だよね?






















219219HITリクの不二乾&リンモモ小説でした。
というかぶっちゃけ「ラブアフェアで書いて」というそんな直球な。
身内だからなせる技という気がしてきました。色々と。(意味深)

林の誕生日も絡めて猛烈な勢いで書いてみました。
異色カプの不二乾とリンモモを絡めるのは、かなり面白かったです。(笑)
不二→塚・乾→海前提の不二×乾(攻)で、桃×海前提のリンモモ…くらっ↑。
目が回る。シリーズとしてじゃなくてこの話を単品で読んだ方には
さぞかし意味不明だったでしょうね。(遠い目)(不親切な小説だ)

とにかく色々と無理矢理っぽいことになってますが
リク有り難う御座いました。壮真琉之介さまに捧ぐ。リンハピバ!


2003/10/31