開校記念日、3連休。

自分の幼馴染に会いに、
はるばる上京することに決定。


会うのは何年ぶりや?

電話すらくれへんし。
手紙なんて一度もあらへん。
生きとるという事実は年賀状で承知済みやけど。

とにかく、今行くからな。


待っとれよ、侑士。











  * craftier? craftiest? *












「侑士ー!」


東京駅。
必要以上に大きく混雑した中、目的の男を発見。

随分変わっとった、けど、一目で分かる。
侑士や。


「おー、
「なんや、ごっつ久しぶりやん」

音信不通の怒りはどこへやら。
顔を見たら全てが吹き飛んだ。

会えた。
それだけで嬉しい。


何気なく歩き出す。
隣を歩く侑士を見上げた。


侑士、色々と変わったな。
背も伸びとるし、声も低くなった。

うちも、変わっとるんかな?


そう疑問に思ったとき、侑士は一言。


「自分、ホンマに女らしゅうないのは変わっとらんなぁ」

「なんやて!?」


思わず鉄拳。
殴り飛ばした頬、侑士は左手で押さえた。

あかん。またやってもうた。


「…この強力も相変わらずや…」
「だ、大体あれやん!今世の中はジェンダーフリーを目指してんやで?
 女らしいも男っぽいも、関係あらへんっ!」


叫びながら大きく一歩前に出た。

ゆっくり歩いてる侑士の、斜め前。


「ジェンダーフリー…か。ま、確かにせやけどなぁ…」
「…なんか文句あんか?」


振り返って、ずいと顔を近付ける。
侑士は笑った。



「俺は、大人しゅうて女らしい自分の方が好きなんやで?」



……うわ。

なんや、ムカツク…っ!

余裕綽々笑顔なのが、
更に腹に来る…やない頭が立つ!ともちゃう!


だぁーっ、もう!ムカツクー!!


「侑士のだぁほー」

呟きながら歩く。

「ん、なんか言うたか?」

侑士は横から覗き込んで来る。
うちは反発するだけ。

「言っとらん!」
「素直やないなー」

本当は計画されているそんな会話。
うちって、結構ずるい人なんかもしれん。



 喧嘩みたいなやりとりが好き。

 こんな距離感が好き。


 だから、ええやろ?

 少し悪知恵働かせたって。


 そうでもせな、絶対について行けへんねんもん。



「どないした?突然黙り込んで」
「……うるさい」


だけど、言うとおり大人しい方がいいのかな。
がさつなうちのことなんて好きになってくれないかな。

そんなこと、やっぱり考えてしまう。



歩くスピードを落とすうち。
侑士はそれに合わせて横に付いてくる。

そんな侑士は、言った。



「らしくないやん、自分。おもろないで」



はた、と目が合う。

侑士は、笑っとった。
少し悪戯な笑みを混ぜた表情で、うちのことを見る。


「……なんや。どうせうちのことなんや女とも思うとらんくせに」
「何言うてるの。のことは、年中無休で愛しとるで」
「返事になっとらん」



どうせ、侑士のことだから
彼女の一人や二人、簡単に作っとるんやろうけど。

だけど、訊けへんかった。


これは、ずるいっていうんか?
それとも、意気地なしって呼びマスカ?

でも、自分からは怖くて訊けへん。




「ん?」

「俺な」


ふう、と溜息を吐いて喋り出す侑士。

昔からの癖、変わらない。
あの頃はジジくさー!とか思うとったけど。

なんや、カッコええやん。
よしといてよ。


あの頃の想い、戻ってきてまうやん。



「引っ越す前、お前のこと…」



そこまで言って、侑士は。


「…やっぱ何でもない」


微笑を浮かべた。


「なんや、それ」
「何でもないもんは何でもあらへん」

…ここまで来たら侑士は絶対答えん。
しかし、今回ばっかりは負けるわけにはいかん。

「嘘やろ。絶対嘘やろ」
「そう思うなら思っとればええ」
「本当のこと言いや!」

正面回り込んで。
両腕押さえて。

真剣な表情重なる。
侑士は…。


「ただな、あの頃が一番幸せやったかなって」



苦笑を浮かべた。


ずるい。
侑士はずるい。


「なんでそんなしんみりしとんの!ほら、折角うちが来とんるや、道案内でもせい」
「分かっとるって。引っ張るなや」


そんな顔されたら、何も言えん。
結局盛り立てるのはうちや。

ずるい。


ずるい。




だけど、そんな表情されたら、他に何も出来ん。

過去に縋るのは、やめた方がええみたいや。




とりあえず、今日一日楽しもう。






















うわっ、微悲恋だ微悲恋!
夢百題の『No.069 ビルの間を』とリンクしてるかも。

何だかんだいって主人公さんはまだ侑士君に未練がある模様。
侑士君は特別そんなことは無かったけど
会って話したらなんだか色々と思い出してしまったというか。

両想いに見えてきっと違うんだと思う。
じゃあ片想いなのかといったらそれも違うんだと思う。

誕生日にこんなの書いちゃったよ。あーあ。
とにかくお誕生日おめでとうオッシー。
関西弁については突っ込まない方向でお願いします。(ぶるぶる)


2003/10/14