「「はぁ、あんたが生徒副会長に立候補!?」」

「うん」


私の突然の宣言に、友人二人は同時に声を張り上げた。

それに飄々と答える私。


切っ掛けはあんなことだなんて、誰が知ろうか。











  * 生まれ変わり歳時記 *












口火が一度切れると、凄い勢いで捲し立てる二人。
私はそれに軽やかに応じる。
「どうしてどうして?遅刻魔のアンタが!?」
「なんていうの?心境の変化かしら」

「茶パツにピアスで先生に目をつけられてるアンタが!?」
「これからは真面目なキャラに変わるわよ」

「「宿題忘れは当たり前、授業中は携帯弄って取り上げられたと思ったら爆睡を始めるが!?」」
「……二人とも、さり気なく私のことけなしてない?」

いやいや、と否定する二人。
全く、どうなんだか。


「とりあえず、やるというからにはやるわよ!」


宣言。
、生まれ変わります。


「もしかして、成績やばすぎて生徒会でもやらないと進級できないとか脅されたとか!?」
「…ウルサイなぁ、これでもテストで平均前後は取れてるよ」

全く、私の友人たちはどうしてこうも疑い深いんだか。
まあ…それだけ私の今までの行いが悪かったってことか?
…その通りです。

話ながら、教室移動のために歩く廊下。
ちらりと覗く、一組の教室。


居た……。
手塚国光君。


「(ああ、今日もカッコイイ…)」

!?」
「え?」
「どこ行くの、そっちは体育館だよ」
「あー、ごめん」

そうそう。次の教科は理科だったわね。
危ない×2。
見とれてるうちについつい…。


そう。
実は私が副会長に立候補した切っ掛け。

それは…
手塚君が生徒会長に立候補したからだと知ったからだったり。


片想いの始まりは、数ヶ月前。
偶然目にしたテニス部のコート。

惚れた。
一瞬にして惚れた。
マジでマジで超カッコ良かった!!


一目見て以来、ゾッコンです。
もう彼以外見えません。

それにね、初めはぶっちゃけ外見だけだったけど。
今は違うんだ。
なんていうか、手塚君のこと見てるだけで頑張る気になれるっていうか。

って自分何言ってるんだ?
マジこっぱずいし!


でも、今回ばかりは本気です。








そして生徒会選挙。
反対票も多かったらしいが(今までの態度が祟ったか…)、
立候補者が一人しか居なかったことも後押しして、私は晴れて当選した。
勿論、手塚君も生徒会長に当選したし。

私、新学期からは新生徒副会長です!




しかし。
予想していた以上に、生徒会の仕事は大変だった。
昼休みは勿論、
たった10分の休みや放課後にも借り出される。

遊びに行けないじゃん!
でも…まあ。

仕事に行くたびに、会えるんだもん。


それだけです。今の私を支えているのは。




そんなある日の放課後にあった生徒会でのこと。
色々な細かいデータを集計して、
あとはそれを最終のチェックをするだけになったとき。

随分と遅くなった時計を見上げて、手塚君は言った。

「…そうだな。後は俺と副会長で終わらす」
「……ほげ!?」

こっちを向いた。

「いいな、
「うん、大丈夫デス!」

固い。
固いわよ自分!

でも、まさかこんな時が今日やってくるなんて思ってもいなくて!
心の準備が出来てないっていうか。
マジヤバイよ。
どーしよどーしよ!
助けて神様ー!みたいなー!!


「それでは、これにて今日の生徒会を終わりにする。解散!」
「「ありがとうございました」」

ガタガタと役員が帰っていく。
部屋の中…私と手塚君、二人だけ。

「(うわー。緊張しちゃいますけどー)」

「それでは、やるぞ」
「は、はいっ!」

椅子をずらした。
体の位置が近付いた。ひぃ!


「これが集計した今月と先月の生徒の出席票だ」
「ハイ…」
「二つの月の差を算出してくれ。今日はそれで終わりだ」
「了解です!」

よっしゃ!
計算は私に任せてよ。
これでも算数はバリ得意だったんだから。
数学?んなもんしらん。
足し算引き算掛け算割り算!
それだけあれば世の中生きていけるんだよ!

「(45引く27…ん?ちょっと待て…一の位が8で、繰り下がって…あぁ!?)」
「…計算機、使うか?」
「ども……」

指を折々している私に、手塚君は計算機を差し出してくれた。
嬉しいような…恥ずかしいような…。
微妙に震える手で計算機のボタンを押した。

そしてそれが終わりに近付いたころ。

「…なにか気付いたことはないか?」
「え?えーっと…全体的に今月の方が出席率がいい」
「だろ」


何が言いたいんでしょう…。

「これを見ろ」
「はい…」

一ヶ月で欠席4回。
遅刻/早退合わせて6回…。
授業不参加12回。

うわ、悲惨……。


「……ってこれ私のじゃん!?」
「遅い」

爽やかに突っ込まれてしまった。
そうだよ、これ私だよ!
上に「個人出席調査票」とか書いてあるよ!
ご丁寧にスタンプで私の名前が押されてるし!!

「これは、出席率に問題がある生徒のみ付けられている」
「うっそー…マジで?」

手塚君は頷いた。
ヤバイ。
今まで働いていた悪事がバレた…。
折角生まれ変わったと思ったのに。

思っていると、手塚君は紙を差し出してきた。

「……これも?」
「ああ」

差し出された物を受け取る。
同じ内容の紙だった。
だけど…。

「欠席0回。遅刻/早退0回。授業不参加1回」
「……」
「そしてその1回は、保険医の了承付だ」

記憶していたらしく、手塚君は私が目で追う項目を
紙の反対側から言い上げた。

うん、1回保健室で授業を休んだけど、
あれは確か生理2日目でマジで死にそうだったんだ…。
いつもみたいに、面倒くさいからサボったりなんて、一回もしてない。
寝たことは…ちょっとだけ、あるけど。でもほんとちょっとだって!


そう。
私は生まれ変わったんだ。
生徒副会長にもなって。
茶パツも黒に戻したし、
ピアスも学校では付けてないし。
手塚君に認めてもらえるように頑張ったんだ。

それに何より、最近毎日が輝いてる。


「来月から、お前はこの紙は必要無いそうだ」
「あ、やったぁ!」

なんて、付けられていたこともさっき知ったんだけど。
でも、嬉しいな。
頑張った甲斐があったってことだ。

「…しかし、気付いたか」
「何が?」
「お前一人で、ひと月の生徒出席率の値をこれほどまで変えていたということだ」
「あ」

そうか、そういうことだったのか…!
だからあんなこと訊いてきたんだ。
やられた…。

「…何故だ」
「え?」
「どうして、ここまで変わった」

眼鏡を上げながら、目を暗く光らせて訊いてくる手塚君。
そして真っ直ぐ眼光を向けてくる。

どうする?
言っちゃおうか?

そうだよ。
私は生まれ変われたんだから。
もう今は胸を張って言えるよ。


「生徒会に入ってから…色々頑張れるようになった」
「………」

「生徒会長として頑張る手塚君を見てて、私も頑張ろうと思ったんだ!」


 う わ 。


これって、告白しちゃったよね?
勢いに任せて言っちゃったけど。
ど、どうしよどうしよ!

向こうはどうでる…。


「……好きなんだな」
「!」


直接的に言われてドキッとしたけど、
言葉の続きは……。




 「生徒会の仕事が」





・・・・・・は?



はぁ!?




「な、なんですとな…」
「好きなんだろう?この仕事が」


そうか。

手塚君って天然だったんだ!!


やられた…やられたよ!
私が勇気を込めた告白にも絶対気付いちゃいない!


まあ…いっか。


なんか開き直ってしまった。


「ね、手塚君ってどんな女の人がタイプ?」
「…何故訊く」
「いいからっ」

調子に乗って訊いてみた。
手塚君は困ったような表情をしてたけど。


「…明るくて真面目なタイプだ」


とのことです。

明るい。よし、オッケーだ。多分。
真面目?…さ、最近は!!




よし、決めた。
今度また、正式に告白しよう。

その時にはもっと、思い切り胸を張って言えるように。



それまで、もう少しこの距離でいよう。


「私、生まれ変わるから」
「…?どういうことだ」

「ナイショっ。それより早く帰ろう。もう薄暗いじゃん?」




私が生まれ変わるための力も理由も、全て貴方が持っている。

気付いていないかも知れないけれど。



だから、貴方自身が気付けるまで。

それを私が気付かせられるようになるまで。




 宣言。


 、生まれ変わります。






















よくわからん。(滝汗)
なんか、生徒会長と副会長のネタを使いたくて。
前に書き始めてたんだけど、
パソ子が壊れて全て無くなった!涙!
というわけでまた初めから書いたよ。疲れた。

主人公をコギャル風にしようとしたけど、
なかなかに難しかった…。
超とかマジとかが無意味に多いです。

内容に関係無いけど、手塚ハピバ。


2003/10/04