「私、お兄ちゃんのこと大好きー!」


兄と妹。そんな関係。

こんなセリフ、仲良いキョーダイだったら少なくないんじゃない?


少なくとも、小さい頃は。


ブラコンなんて囃し立てられる事も無くて。

異性に恋するだなんて覚えてなかった頃。



ねぇ、いつから笑って大好きって言えなくなった?











  * あの頃は幸せ。 *












中学校に入ってから、お兄ちゃんは突然忙しくなった。
家に居る時間が減った。
日曜日も学校に出掛けてく。

どうして?って訊いたら、
テニス部に入ったから、だって。


なんか、寂しいナ。






「最近つまんなーい」


おやつケーキを食べながら、あたしは呟いた。
後ろを振り返りながら、お母さんが訊く。

「どうして?」

あたしはコップをテーブルに置いた。オレンジジュース。
前歯に挟んだフォークをぐりぐりと噛む。
テーブルの向かい側、食器棚の前にある空いた椅子に目を落とす。


「お兄ちゃんがいないから」


苺が乗ったショートケーキ。

お兄ちゃんがここに居たら、あたしに苺をくれたんだろな。
あたし、何も言わないのにさ。
別に、苺をもらえたことが嬉しいだけじゃない。
優しさを分けてもらったみたいで、嬉しい。


だけど最近―――。



「お兄ちゃん、早く帰ってこないかな…」

小さく呟いた時、お母さんが笑った。

「そういえばアンタ、覚えてる?小さい頃『大きくなったらお兄ちゃんと結婚する』って言ってたの」
「えー、そうだっけ」
「毎日のように言ってたよ」

最後の一切れを口に放り込んだ。
そして噛みながら考える。


大きくなったら結婚、ね。

そんなこと無理だって、今なら分かるけど。
でも、もしも、さ。

キョーダイでもケッコンできるってホーリツになったら…。


……なんちゃってね。


ガチャガチャと玄関の音。
あたしは飛び出した。


「ただい……?」
「お兄ちゃん…」

制服姿のお兄ちゃん。
胸を埋めていたのを上げて。



「お帰り」



あたしはきっと笑顔を作れてたと思うんだ。


 好きだと言えなくなったけど。

  それでもいつまでもスキだから。


本当に心のそこから結婚したいと思える人が出てくる日まで。



その日まで。




「お兄ちゃん、大好きだよ」




自分が笑えていたか分からないけど。

向こうが微笑んできたから、きっと平気。



大好き。




だって、あたしのお兄ちゃんだもんっ。






















大石の妹になっちゃおう企画。
予想外に痛いネタになってしまった…。(滝汗)

お兄ちゃん大好きー!とかって、
実際によく使われるセリフなんでしょうか…?
私は吐いた憶えが無い。
母になら吐いてた憶えはあるが。笑。
ま、とりあえず大石の妹はお兄ちゃんっ子ぽいし。

どうせ兄妹ネタやるんだったらその特権を生かした
ラブラブしたやつにすればよかったか…くそぅ。
(だって一つ屋根の下/以下略っつか伏せ)

実は色々と奥が深いこの話。
題名とかにもちょっとしたアイロニー。
あの頃がいつかっていうと、まあ、その頃なんですよね。(謎)
気付く人だけ気付いて納得してください。


2003/09/29