* 星を掴みたい *












――平成××年7月7日 夜中

笹の葉が揺れる今日は七夕。



毎年、この日が来ると私は空を見上げる。

だけど、私が織姫と彦星の話を知って以来、

7歳の時からずっと、この日が晴れになったことがない。

雨だったり、曇りだったり。

嵐だった日もある。


アメリカから日本から、

色々な場所でこの日を過ごしたけど。

…晴れは一度も来ない。


来年は…また違う国で見るのかな。


今年は日本で最後の空。

まあ、数年したら帰って来るんだろうけど…。

考えながら窓の外を見てみた。



「……わぁ!」


そこに広がっていたのは、星空。

東京では珍しく、天の川もはっきりと見えるほどの快晴。


「凄い…」


思わず声を洩らした。

夏の空で星をこんなにまじまじと見上げたのは、久しぶりだな。


夏の第三角形が見えた。

織姫と彦星、ベガとアルタイル。

いつも通りの距離を離して、眩しくに光ってた。


「七夕の日だけくっ付くってただの伝説かよ」


普通に考えれば当たり前だけどね。

でも7歳の時その話を聞いた私は、完全に信じ込んでいたのだ。


伝説上では、巡り合っているのかもしれない。

天の川をまたいで、近くへ来ているのかもしれない。



そうか。

許されていなくたって、巡り合うことは出来るんだ。

いくら遠くに居たって、いつかは近くに来れるんだ。


心が軽くなった。

開き直ったというのかもしれないけど。



短冊を吊るすわけではないけど。

遥か彼方で光っている星に、祈りを捧げた。


そして腕を伸ばすと、星にだって手が届きそうな気がした。





















2002年に初めて七夕に星空を見た。


2003/09/28