* どんな音楽も *












――平成××年6月9日 街中

ライトアップされた店の入り口前で騒ぐ私たち。



「いいじゃん、たまには」

「嫌だ」


こんなにはっきりと嫌がるシュウも珍しい。

そんなに嫌なのか。


「大体、今日は映画見ただろ?」

「でもまだ帰るには早すぎ。入ろ」


中を指差す私。

反抗するシュウ。


「お金払われても入りたくないな」

「えー……。身体で後払いっつっても?」

「っ!ダメに決まってるだろう!」

「ぶー。けちー」


ここまで嫌がるってことは、本当に嫌なんだろな。

ということで私は折れた。

そこまでして入ろうと思うほど性格悪くないよ。

…でもちょっと未練。


「あーあ。シュウなんて歌上手いのにさ。勿体無いよ」

「全然上手くなんてないよ」

「いんや。この前の歌のテストの時だって、声綺麗だなーとか思ってたんだよ?」


シュウは顔を気付かないほど微かに染めた。

表情が強張ってるからなんか分かる。


「とにかく、またの機会な」

「本当だよー?」


そして私がシュウと初めてカラオケに入ったのは、

ちょっとした訳有りでクラス全員で行ったときになるのですが。

それはもうちょっと後の話。


ちなみにその時、シュウは自分の順番が回ってくるとトイレへ逃げた。卑怯だ。





















7月25日とリンクしてます。


2003/09/28