* 口笛を吹いて *












――平成××年5月22日 授業前

いつもより確実に小さくなっている背中を発見。



「シュウ、どうしたの?元気無いよ」

…」


もたげたシュウの顔には、明らかに生気がない。

…これは重症だ。


「何か心配ごとでも?」

「…今日、テストだろ」

「うげっ、何の教科!?全く勉強してない!」


慌てる私。

しかし、シュウがテスト程度で怯えてるなんて…?


何の教科だ、と考える私にシュウは一言。


「今日、歌のテストだろ」

「……おぉ!」


ぽん、と私は手を打った。

そうか…歌のテストね。

それなら勉強する必要ないじゃん。ラッキー。


「なんでそんなに怯えてるのさ」

「だって嫌だろう?一人で歌うなんて」

「そうかなぁ…」


口元に手を当てて、天井を見上げた。

私はそういうの得意だから、あんまり感じない。

全ては気合でカバーできそうな気がするけどね…。


「だってシュウ、カラオケで歌うのと同じって考えればいいんだよ!」

「カラオケも苦手なんだ…」

「………」


ああ。

確かにカラオケ一緒に行ったこと無いかも。

苦手だったのか…。

…覚えておこう。


と、それはさておき。


「いいんだよ適当で!いざとなったら口笛を吹いて誤魔化す勢いで!」

「そんなことが出来るのはぐらいだよ…」


そしてテスト当時。

少し緊張しているようだったけどしっかりと歌い上げたシュウに対して、

途中で歌詞を忘れ口笛を吹いて誤魔化したのは、私の方でした。完。






















こういうオチが多いぞ…。


2003/09/27