* 魚のように。 *












――平成××年4月18日 10分休み

3人で話す会話は非常によく盛り上がる。



大石君は自分の席に座ってて。

英二が廊下から顔を出して。

私は大石君の机に手を掛けて。


「あー、海に行きたいにゃー!」

「英二、随分気が早いぞ」

「そうそう。海開きまであと3ヶ月だよ」


言うと、くぅ〜!と英二は力を込めた。


「なんかさ、白い砂浜に青い海をぱーっと泳ぎたいっていうか!」

「どうして突然そんな話になったんだ」

「いいじゃんいいじゃん!」


英二は表情がくるくるとよく変わる。

私も傍から見たらそうなのかな?

喜怒哀楽が激しいとよく言われるけど。


「大石の泳ぐ姿なんか、かっこいいもんな〜」

「え、そうなの?」

「英二だって平泳ぎは得意だろ」

「へへ。カッパ〜」


すーいすい、と英二は平泳ぎの手をやってみせる。

ところで…そうか。

大石君は泳ぐのが得意なのか。


「でもホント、大石の泳ぐところなんか惚れ惚れしてみちゃうよ」

「どうして?」

「だって速いしフォーム綺麗だし…魚並!」


魚…。

よく分からないけど、とりあえず凄いことは分かった。


「大石ってば、いっつも魚ばっか見てるから移っちゃったんじゃねぇの?」

「まさか…」


ケラケラと笑う英二。

苦笑いをする大石君。


笑いが治まってくると、英二は時計を見上げた。


「あ、オレ次体育だから。この辺で」

「うん。バイバ〜イ」

「頑張ってこいよ」

「ほいさ!」


手を振ると、英二は走り去っていった。

廊下で人に紛れると、視界から消えた。


私たちは二人きりになる。


3人で話している時は、楽しくて明るい時間。

2人で話す時は…楽しいけれど緊張の時間。





















汗と涙の大石の泳ぐ姿が頭から離れない…。病気か。


2003/09/27