* 洗濯しましょ *












――平成××年5月4日 待ち合わせ

部活を終えて出てくるシュウを待つ。



「あ、来た来た!おっそーい!」

「これでも急いで来たんだよ」


手を振ると、シュウは小走りでやってきた。

学校を背景に私服なんて、なんだか不自然。


「副部長の仕事があるんだよ」

「ま、お陰で私服着ても気付かれなかったじゃない」


あはは、と私は笑った。

基本的に学校内での私服は特別な理由がない限りは禁止されているので。

シュウは真面目なタイプだから、

規則破りなんて相当珍しいんだろうな。


「とにかくあたしの家に行こー!」

「そうだな」


肩を揃えて歩き始めた。

高低差20cm以上は未だに変わりませんが。


「シュウはうち来るの初めてだっけ?」

「そうだよ」

「それじゃあ道、ばっちり憶えておいてね」

「ああ、分かったよ」


そうして歩くこと15分ほどですが…。


「……あ!」

「ん、どうした?」

「ごめんシュウ、あたし先帰るから後からゆっくり来て!」


そうは言ったものの…。


「でも道が分からな…」


そうでした。


「そうだった!わー、どないしょ」

「なにかあるのか?」

「うん。部屋を掃除し損ねた」

「別に気にしないけど…」

「あたしが気にするの!」


わたわたと騒ぐ私。

シュウは溜息を吐いた。


「とりあえず…家の前まで連れてってくれ」

「あ、ナイスアイディア!」


歩きながら、私は自分の部屋の悲惨さを思い浮かべた。


机の上は山。少しでも動かせば雪崩。

タンスの上には脱ぎっぱなしの服。

ちゃんと洗濯しましょう自分。それでも女か。


…よし、作戦を考えた。

シュウは絶対に聞かずに扉を開くなんて勝手なことはしない。

全て押し入れに隠してしまえばいいです。

うん、それなら5分で片付く。


「はい、ここが我が家です」

「へー、こんなところに住んでたのか」

「それじゃ、悪いけど数分おいとま致しますね」


そう言って家の中に入った私。

荷物を全て押し入れに放り込み、シュウを招いたのでした。



後に、「ゲームでもしよっかー」と言いながら開けた押入れから、

本から服から何もかもが雪崩れ込んできたことは、

言うまでも有りません。






















掃除と洗濯、ちゃんとしなきゃなぁ…。


2003/09/27