* ピクニック。 *












――平成××年5月6日 大石家

初めてやって参ってしまいました…。



「お邪魔しまーす…」

「そんなに固くならなくていいよ。今日は誰もいないから」

「あ、さいですか」


ちっ、折角お母さまとお父さまにご挨拶する覚悟できたのに。

まあいいけどさ。いいけどさ。


「俺の部屋はこっち」

「はいはい」


階段を上って左側。

扉を開けると、恐ろしいほどに整頓された部屋。


「ねぇ…これってあたしが来るから掃除した?」

「いや、いつもこんな感じだよ」

「(……シュウが来る時は掃除しておかなきゃ)」


私の部屋なんて普段は恐ろしくて誰も入れられないぞー?

なんちゃって。はは。

でも結構本当です。


……あっ。


「これが噂のアクアリウムってやつですか?」

「そういえば、約束してたのに見に来てなかったな」


大きな水槽の中を泳ぐ小さな熱帯魚たち。

凄いなー。綺麗だなー。

水草や石の配置とかもシュウがやったんだろな。

なんていうか爽やかな印象。


「綺麗だね!気に入っちゃった」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


シュウはにこりと笑った。

そして話す。


「ただ座って見てるだけでも飽きないんだ」

「じゃ、そうしましょ」


単純な性格だ。

自分でそう思った。

私は床のカーペットに座ろうとした…

けど、上に乗っていいとシュウがいうので

ベッドに座って壁に寄り掛かった。


「なんていうかね…あたしはピクニックとかアウトドアの方が好きなんだけど…」

「え?そうだったのか…。ごめん、知らなくて…」

「続きを聞いて」


謝ってくるシュウ。

私は言葉を切って入った。


「だけど…こういうのも好き」


本当だったらさ、自然に紛れて走り回って。

そういうのが好きな私だけど。


でもさ、例えば今みたいに。

一緒に肩を寄せ合って。

一つの水槽を見つめて。

静かな世界に浸るのも悪くないって。


言葉は不充分だったけど、伝わったかしら?



「ありがとう」



頭に手を乗せられた。

温かくて大きな手。


お礼をいうのは私の方だよ。

心の中でそう言って、頭を肩に預けた。






















ピクニックしてねー!単語だけだ。苦笑。


2003/09/27