* 小悪魔的存在 *
――平成××年3月12日 木の陰
テニスコートを見つめる私は一人。
テニス部はバレー部より少し長くやることが多い。
自分の部活を終えた後、私はここへ来ている。
すると丁度終わったところらしく、人が散らばって行く。
私も帰ろうか、と思った時。
「君、昨日も居たね」
「――?」
優しげな声に振り返る。
あ、この人知ってる。
天才・不二周助だ。
カッコイイ×2とクラスの女子が騒いでいたのを覚えている。
「お目当ての先輩でもいるのかな」
くすっと笑うその人。
私はきっと睨んだ。
「3年生はもう引退してるんじゃないですか」
「ってことは君は2年生か。ごめんね」
む…舐めていやがる。
チビっ子だからって…くそぅ。
そっちこそヤサオトコ系ではないか!
でも…カッコイイと騒がれるのも分かる。
さっき見てたけど、上手いし。確実な美形だし。
「まあ同学年でも後輩でもいいけど。誰かお目当ての人でも?」
にこっと笑う。
なんだ…この似非くさい笑みは!
で、でもなんかカッコいいぞ?
これはワナ…罠なのかっ!?
「あなたって言ったらどうします?不二周助くん」
私もにこっと似非くさい笑みを返した。
向こうはおやっ、という顔をした。
「そうしたら…こうする」
「っ!」
その時私がされた行動。
手の甲にキス。
「わっ!嘘に決まってるでしょ!!」
「あ、そうなの?僕ってその辺の区別が付かないんだ」
「………!」
な、何よこの人は!?
ちょっとでもカッコイイと思った私がバカでした!
「ま、頑張ってね。応援してるからさ」
「どーもっ」
そして、不二周助は部室に消えた。
……変な人。
でもなんか気になる存在だ。
だけど、恋とは違うと確信を持っていえる。
どちらかというと、芸能人がカッコいいだとか、
スポーツ選手がカッコいいだとか…そんな感じ。
どちらかというとただ、
私の心を掻き乱しただけの、
小さな悪魔でしかない。
初めは私不二ファンだったんですよねー。
2003/09/27