* すごく可愛い *












――平成××年5月12日 腕の中

突然生まれた欲求を口にする。



「シュウ、あたしのことを思いっきり誉めて」

「はぁ?」


向こうは間抜けな声を出した。

まあ、そうなる気持ちも分かるけど。


「なんかね、誉められたい気分なの」

「なんだそれは…」

「いいから!あたしのことを美しく形容してみて」


シュウは、悩んでた。

まあ、悩むよね。

私もシュウに「俺のこと猛烈に誉めろ」とか言われたら、

相当悩むと思うな。(シュウに限ってそれはないだろうけど)


「美しく形容って言われても…」

「いいから、ねっ、あたしの姿を見て思ったことを言ってみてよ」


くるんと体を反転させて、

私はシュウの前に立ち上がった。

そして、モデル立ちをしてみせる。


「…どう?」

「そうだなぁ…」


悩んだ様子だったシュウは…。



「立てばシャクヤク座ればボタン、歩く姿はユリの花」



……そう言ってのけた。

…………。

何だこの人っ!


「やー、何それシュウ!面白すぎ!恥ずかしすぎ!」

「だって、が言えって言ったんだろ!?」


顔が赤い。

シュウってば面白いなぁ、ホントに。

そういえば赤面することを、英語でblush like peonyっていうんだよね。

peonyというのは、シャクヤクやボタンという意味を英語で持つ。


「恥ずかしいキャラだな…もっと普通のこと言えないの?」

「普通?」


パタパタと自分の顔を扇ぐシュウに、駄目押し。

さあ、今度は何ていってくれる…。


シュウは、にこりと微笑んで。



「すごく可愛いよ」



沈黙。


長い沈黙。



切れた。



「うわっ、さっき以上にこっぱず!!」

「何言ってるんだよ…」

「ストレートすぎ!うわ!恥ずかしー!!」


大騒ぎする我。

向こうの気なんてお構いなし。


暫く叫んでいると、少し落ち着いてきた。


「そういえば、これって私が言い出したんだよね」

「そうだ。言わされてる俺にもなってみろよ…」


シュウは苦笑した。

ごめんごめん、と謝ったけど心の中では笑ってる私。爆。



そして思い出した。

peony flower(要するに芍薬や牡丹)の花言葉は、

恥、羞恥であったなと。


……まあ、可愛いと言って頂けて満足です、私。






















自己中ぶり発揮。そして大石はやはり恥ずかしいキャラ。


2003/09/26