* 好きで好きで *












――平成××年5月23日 校舎裏

久しぶりに直面した告白現場。



「ずっと好きでした…」

「(マジですか…)」


少し陰になるところに立っている私。

校庭でやっていたバレーボールが転がっちゃって、

拾いに来ただけなんだけど。

だって、気になっちゃって。


他の人だったら、別に放っとくところだけどさ。

寧ろ関わりたくないから離れるぐらい。


だけど、ちょっと今日は話が違う。


「悪いけど…」


シュウ。


そうだ、それでいい。

余分なことは口走るな。

だからといって承諾はするな。


「付き合ってる人とか、居るんです、か…?」

「(うわっ、そうくるのかよ!)」

「……居るよ」

「(そうだ。無理にこじらすよりは寧ろ真実を伝える。うむ)」


コソコソとしている私。

気分はスパイ。


「…………」


む、なんだか小声になったぞ。

聞き取れない…。

よし。

ちらっと、見……。


ー、ボールあったー?」

「うわっ!あ、はいはーい!!」


タイミング悪いー!!

まあ、覗いてた私が悪いんだけど…。


走って校庭に戻った。

シュウに、聞こえちゃったかしら…。

覗いてることバレると色々と不便だ。




昼休み終了。

腕まくりをした制服で教室に戻る。


「いやー、いい汗掻いたぜ。……お?」


廊下にて泣いている少女を発見。

一学年下の子。

……さっき一瞬見えた後ろ姿と同じ二つ分けの髪。

それを支えるのは親友と思われる子。


「ま、次の恋があるって!」

「うん…」


……絶対そうだと思う。

シュウも罪作りなやつですね。


「なんか…悔しいな。私だってこんなに大石先輩のこと好きなのに…」


………。

なんかチクっとした。

でも振り切って何食わぬ顔で通り過ぎた。

2組の教室は、階段を上ってすぐそこだ。


そのチクっとしたキモチ。

私がシュウと付き合ってるから罪悪感がした、ではない。

私も大石秀一郎のことを好きな人間のうちの一人だから、

その気持ちは、痛いほどによく分かるんだ。


好きで好きで。

それでも伝わらないこともあるってこと。


だけど、勇気を出して伝えたことは、

いつか何かに繋がると思うよ。


…私のこの気持ちは、

どこに続いているんだろう。


ちゃんと本人に届いているのかな。


「シュウっ」

「なんだ、

「……なんでもない」


罪悪感がないっていったら嘘だけど、

これが有りのままの形だから。


私はシュウが好きで、

シュウは私が好きで。



好きと好きは、重なって初めて力を発揮する。




















こっちを立てればこっちが立たない。こっちも寝かすと両方立たない?


2003/09/26