* 宝石のように *












――平成×△年4月30日 涙ながらの道

ポケットの中で着メロを鳴らす携帯。



「……?」


さっきの電話は、数分前に切れたばかり。

もしかしたら……。


「…もしもし?」

『あ、もしもし、ちひろ?』


やっぱりシュウだった。


「え、シュウ…どうして?」

『一つ、言い忘れてたこと思い出してな』


言い忘れてたこと?

なんだ、それは…。

私から電話を掛けたのに、

向こうからこっちへ何か今すぐ言わなきゃいけないことなどあるのか?


んー??


『今日は、俺の誕生日だけど…それより…』

「何言ってんの、シュウの誕生日より大切なものなんて……あ゛」


私は携帯を掴んだまま硬直した。


思い出した!!



「も、ももももしかして今日って…」

『ああ、付き合い始めて一年目、だろ?』

「そうだった!」


ヤバイ、すっかり忘れてた!

誕生日の方ばっかに気を取られてて…。


「凄いね。もう一年経ったんだ…早いもんだね」

『そうか?俺はもっと前から付き合ってたような気がするけど』

「うん、確かにそれも分かるような…」


そして、出した結論。


「言うなら、適度ってことで!」

『それはいいな』


はは、とシュウの笑い声が電話越しに聞こえた。

沢山笑いあった過去の日々を思い出す。


「それじゃ、これからも宜しくお願いします」

『こちらこそ、宜しくな』


区切れのいいこの時に、改まって挨拶。

距離は離れていても、

決して離れてはいない私たち。


「んじゃ、今度こそお休みっ」

『ああ、またな』


電話を切った。

再びポケットにしまう。


その瞬間の気持ちは、

まるで宝石のように輝いていて、

でも宝石なんかよりもっと大切。



そんな、私たちのファーストアニバーサリー。






















記念日多いぞ、色々と。苦。


2003/09/26