* 男らしい君が *












――平成××年4月30日 英語の授業

私にとっては退屈で、時により愉快な授業。



単元末の小テスト。

ずらーと並べられた日本語を、

英語に翻訳するだけのこと。


…楽勝だぜ。


心の中で呟くと、ばーっと一気に書き上げた。



そして、隣の人と交換して丸付け。


「(あ、この人necessaryのスペル間違ってらー)」


cが二つになってるよん、と心の中で呟いて

そこを赤のペンで直した。


返却。



「……をぉっ!?」


なんと、

私も同じところを間違えていた。


「どうしてだ!?どうしてcが二つなんだよ10分前の自分!分かれ!!」


思わず声を張り上げて叫ぶ私。

隣の席の子は…私の答案を覗き込んできた。


実はこの子、ちょっと苦手。


さん」


来た。


「同じところを間違えてるって、どういうこと」

「偶然だよ」


何が言いたいんですか。

こっちから言わせればあなたを疑いたいよ。


「何言ってるの!?綴りまで全く同じなのよ!?」

「あたしがカンニングなんてするかよ!社会ならともかく英語でよぅ!」


私の飛ばしたギャグに、

前の席に座ってる子がこっちを振り返って笑った。

向こうは…マジギレ。


「社会ならともかく英語は…ってことは、他の教科ならカンニングするのあなたは!?」

「いや、あの…ギャグなんですけどぉ…」


私が思わず縮こまったとき。


「偶然だな。俺も同じところ間違えたんだ」

「「―――」」


私たちは同時に振り返った。

私から見て斜め後ろ、その子から見て一つ抜かして真後ろに座っていたのは、大石君だ。


「難しいよな。何度も練習したけどやっぱり間違えちゃうよ」


大石君は、そう言って笑った。

向こうは…ふん、と随分怒った様子で正面を座り直した。

だけど小さく、「悪かったわね」と言ってきたので、

私も「別に気にしてない」と返した。


それより気になってるのは…。


ちら、と後ろを見た。

大石君。目が合った。

有り難う、という意味で笑顔を見せた。

向こうも笑顔を返してきた。


………。

ダメだ、カッコよすぎる。


その態度一つ一つが。

毎回起こす動作の全てが。


男らしい、そんな貴方が大好き。

止まらないよ。



……告白しよう。

決定した。


周りでみんなが「ディス イズ ア ペン」をやっている中、

私はノートを取るフリをして作戦を立て始めた。























某少女漫画に似てるかもしれないけど、無関係。友人の体験談が元です。


2003/09/25