* 危険行為禁止 *












――平成××年5月4日 休日

今は3時のおやつタイムですが。



「こら」

「う?」


私の家、台所。

籠の中から菓子パンを掴んだ私。


「何やってるんだ!」

「な、何って何さ!!」


開封した瞬間、袋を取り上げられた。

私は腕を伸ばしたけど、

身長の低さと腕の短さがために届かない。


「欲しいならそう言えばいいのよ!さっきシュウが要らないって言ったから…」

「別に欲しいわけじゃないよ」

「じゃあ何さ」

「ひとまず、ここを見ろ!」


びっ、とシュウはその袋を差し出してきた。


「賞味期限切れてるじゃないか!」

「おぉ、確かに」


ブラーボウ、と私は拍手する。

別に、シュウはそれでおだてられてどうって人じゃないけど。


袋を返された。


「それじゃあ、心して食べます。頂きま…」

「ちょっと待て!」


また止めが入った。

…なんだよぅ。


「何で止めるのさ」

「賞味期限過ぎてるんだぞ?」

「たったの一日じゃんか。そんなの気にしてたら生きてけないって」

「お前こそそのうち食中毒で死ぬぞ…」


シュウはぶつくさと色々言ってくる。

でも、一日過ぎた菓子パン程度で腹下すほど

ヤワっていうかデリケート、な人間には出来てないんでね。


「もったいないオバケに呪い殺されるよりマシ。いっただっき…」


口を大きく開けて齧り付こうと思った時。

パンの向こうの視界には…悲しそうな顔のシュウ。

口からパンを離すと、安心した表情に戻った。

再び口に近付けると、また悲しそうな顔をする。


「な、なんだよぅ…」

「いや、食べたいなら食べればいいさ」


ふっ、と寂しそうな笑みを見せるシュウ。

……本当に何なんだよう!


「いい、シュウ。ここに『開封後は賞味期限に関わらずお早めに…』って書いてあるじゃん!」

「過ぎてるんじゃあ話にならないだろ。やめたほうが…」

「何言ってるの!私もう開封しちゃったんだよ!?一刻も早く食べないと!!」

「……は?」


シュウは頭の周りにハテナマークを浮かべた。

これだから、頭の固い男どもは困るよねぇ。

書かれた通り、開封後は賞味期限に関わらず、即ち過ぎていようと、

出来るだけ早くお召し上がりになろう。


…それってお得意のギャグか?」

「何が?」

「その賞味期限がどうってやつ」

「何いってんの。そうやって書いてあるから私は食べるんだよ!」


がぶり。

ついに齧り付いた。


「うん、うまうまv」


視界の先に見えたのは…

泣きそうになってるシュウ。


「な…だから何でそんな悲しそうなの!」

「いや、なんか哀れで…」


何を言う!とどつきながらも

私は結局パンをモグモグと食べた。

その間のシュウの怒った風にも見える切なそうな顔は、

一生忘れられない気がする。


そして、私が食品に記されている賞味期限についての記述を、

誤って理解していると言うことを教えられたのはパンを全て食べ切ってから。























本当に勘違いしてた我。哀れだ…。


2003/09/24