* 虹の浮かぶ空 *












――平成××年8月16日 いい天気

ここ数日は雨も降っていなくて雲も疎ら。



ドイツはどんよりしてることが多いと聞いたけど。

雨が降ることは少ない割に曇が多いと聞いたけど。


でも、見上げる空は青い。


太陽光の屈折で、青く見えるんだったか。

詳しいことは分からないけど。


首を思い切り逸らせた。

斜め前ではなく、真上を見据える。


すると。


「……わぁ!」



思わず声が零れた。

なんと真上に見えたのは、


大きな虹。


上を見上げて、口を大きく開けて。

そのまま暫く固まっていた。


空に架かる虹を最後に見たのはいつだったかなと。

思い出しても、それは10年ほど前の記憶で。

日本では一度も見ることが出来なかった虹を、

異国の地では見ることになるという不思議さ。


「…キレー」


ぽつりと呟いた言葉。

自分のその台詞にはっとする。


急いで家に帰って写真に撮ろう。

そう決めて走り出したけど、

見上げながら走っているうちに、

虹は薄くなって、消えた。


前に見たものより大きかったなと。

そう思った。




綺麗な綺麗な大きな虹。

それ即ち、空に架ける橋。






















雨が降らなくても虹は出ることを知った。日本で虹って見たことない…。


2003/09/24