* きっと見える *












――平成××年9月24日 黄昏時

学校生活にも慣れてきた頃の帰り道。




それは、私が小さい頃からずっと見たかったもの。


 雨が降っているところを横から見たい。


…アホらしいけど、ずっとそう思ってたんです。


だけどね、最近はこう考えてた。

そんなの無理だって。

だって、この長い人生で一度も見たことないもの。

絶対、そんなの見れないって。



それじゃあ……

今あそこに見えるものは、何?



「……雨だ」



上に見える空は快晴。

雲はあるけど、ほんの少し。


でも、遥か遠く。

浮かぶモコモコとした雲からは、

霧のようなものがゆっくり下りていっているように見えた。


「……見えた、ね」


横断歩道の信号を待ちながら、

独り言をポロリと零した。


不可能なんて、そんなこと決め付けていたけど。

本当は、諦めない限りきっと掴めるんじゃないかって。

そう思えてきた。


そもそも、私の人生っていってもそこまで長くないしね。


なんだかそう思うと、

心が極端に軽く感じられてきた。


これからずっと生きていく中の、

ほんの一部でしかないこのとき。

それでも大切な、輝いている瞬間。


夕日に照らされた飛行機雲は、

黄金色のような橙で輝いていた。






















とっても不思議だった。


2003/09/24