* テレビで見た *
――平成××年6月18日 試験後3日
どんどんテスト中間考査の結果が返ってまいります。
教室の一端で私たちは勝負を繰り広げる。
「よっしゃ来い来い…」
「それじゃ、開くぞ」
「「せーの!」」
声を揃えて開いたテスト。
大石秀一郎:93 :66
「うわっ、なんだこれ!!」
「、いくら社会苦手だからって…」
「いいんだ!平均は超えた!」
思わず自分の答案を見て爆笑する私に、
横で苦笑するシュウ。
私たちは、返されても見ないで、休み時間に同時に開くと約束しているのだ。
今のところ、3戦3敗なんですが。
「よっしゃ、次は数学だ!絶対負けないし」
「よしきた」
同時に開く答案。
初めて私が上回った。
「わーい!9点勝ちぃー」
「やっぱり数学じゃ適わないな」
「ふんだ。あたしの得意教科の理科であたしより高かったくせに」
まあ、これは努力の差ってもんがあるから、
仕方ないような気もするけどさ。
シュウは頑張りやさんだもん、私とは比べ物にならないくらい。
しかし。
今更努力しなくたって、絶対勝てるものが私にはあるんだなー…。
「ラストは英語だ!」
「悪いけど、俺は英語得意だぞ」
「へへん、その自信打ち砕いてみせる」
お互い自信満々で開いた答案。
得点。
99対100。
一点勝ちの行方は……。
「やりっ!勝ったぁー」
「満点か、参ったな…。も英語得意なんだな」
横で苦笑するシュウ。
でも…99点?
やっぱり凄いな。
得意とはいえ、努力してるんだよね、シュウは。
「まあ、そう気を落とすな大石少年」
「なんだ、その言い方」
シュウの肩を叩く私。
向こうが余りに苦い顔をするので、言ってやった。
「帰国子女であるあたしに英語で勝負を挑もうという方が間違っていたのだよ」
沈黙。
長い間。
そして弾ける。
「えっ!?」
「ありゃ、話してなかったっけ?」
なんて、分かってたくせに白々しくしらばっくれてみる。
シュウの驚いた顔が面白い。
「帰国…ってどこの!?」
「アメリカ合衆国」
「知らなかった…」
「話してなかったね」
ケラケラと笑う私。
「アメリカなんてそんな…テレビの中でしか見れないようなものだと思ってた」
「あたしなんか寧ろ小さい頃だったから、海外に住むのが普通だと思ってたよ」
恐ろしいでしょー?と私は笑った。
「だから、さ。英語で勝てるのも普通なんだよ。努力だけでほぼ満点取れるシュウは凄い」
心のからの気持ち。
努力してるその姿。凄いと思った。
すると、シュウは一言。
「何言ってるんだ。だって前に頑張ったから、今は満点取れるようになったんだろ」
「え……」
「アメリカに居たって、勉強しなかったら英語なんて喋れるようにならない、だろ?」
その言葉を聞いたとき、涙が出そうになった。
ああそうか、私頑張ったのかなって。
初めて認められた感じがして、嬉しかった。
今はテレビでしか見れないような、遠い地。
そこで学んだことは、今も私の中で生きている。
教室の中だって分かってるけど。
見てる人が居るかもしれないけれど。
それでも体重を預けたくなって、目を伏せて凭れかかった。
努力を認めてほしかったんです。
2003/09/23