* 入浴剤は何? *












――平成××年4月17日 休み時間

生徒は散らばり教室内の密度は低い。



ってなんかいい匂いがする」


廊下から顔を覗かせた英二がそう言った。


「ヤダ英二、なに嗅いでるの」

「だって、近くにくると自然に香ってくるんだもん」


咄嗟に体を離した私に対して、

英二はけろんとして答えた。


「なんていうか、お花みたいな、優しい香りがする」

「そうかな?」


自分の体の匂いを嗅いでみる。

…当たり前だけど何も匂いはしない。


「そんなことないよ」

「えー、自分だから気付かないだけだよ!」


英二は私の手を取ると、少し引いた。

そして、制服の袖にそっと鼻を寄せた。


「んー、いい匂い。にゃんか落ち着く」

「うわっ英二変態っぽ!」

「し、失礼だにゃっ!」


その言葉に対し、英二はガバッと顔を離した。

ぷくっと頬を膨らましたけど、

すぐにぷしゅ〜と抜けた。

あ、と目を光らせた英二は、訊いてきた。


「なんか入浴剤とか使ってるんでしょ?何??」

「えー、入浴剤ぃ?」


記憶を辿ってみても、そんなもの使ったことはない。

だからといって自分の体に香りが付くような…

そんな覚えも全くない。


「英二、気のせいなんじゃない?」

「いんや、そんなことは絶対ない!!」


妙なほどに力んでた。

だけどその顔をへにゃ、っと崩すと、英二は笑いながら言った。


「きっと、これは入浴剤でも香水でもなくて、の香りなんだ」


ね?とこっちが訊かれてしまった。

知らないよ、と答えたのに英二は私の腕に頭を倒した。

その重みがなんとなく心地好かったので、

私は休み時間中そのままで居た。






















友人曰く私は田舎のお婆ちゃん家の匂いがするらしい。それって…?


2003/09/23