* お城のような *












――平成××年6月18日 掃除中

普段は真面目に掃除をする貴方も今日は雑談。



は前にアメリカに住んでたって言ってたろ?」

「うん。何か質問でも?」


私が掃除しないのはいつものこと。

掃いているフリをするために箒を揺らす。


一応地面を掃きながら、

それでも視線はこっちに向けながらシュウは訊く。


「向こうの生活って、どんな感じなんだ?家とかやっぱり大きいのかな」

「うーん、そうだねぇ…」


普通に答えるのは面白くないな、と。

ピン!と頭に豆電球が浮かぶかのように面白いことを閃いた。


「家はね、豪邸並に大きかったよ!」

「そ、そうなのか?」

「それでね、メイドさんとかも居て、まるでお城?」

「凄いな、それは」


本気で感心してるシュウ。

私は、暫く堪えていたのだけれど…

噴き出した。


「なっ!?」

「やっだぁー!嘘に決まってんじゃん!シュウってば最高」


カラカラと笑う私。

シュウは軽く頬を染めた。


何でも素直に信じるシュウ。

なんか、凄いな、そういうの。


「あ…でもね」

「?」

「どちらかというと、今の方がお城に住んでるような気分かな」


どうしてだ?とシュウは首を傾けた。


私は耳に口を寄せた。

そして小さく囁く。


『素敵なプリンスが居れば、女の子はお姫様気分になれるものなのっ』

「!!」


ばっと体を離して、また赤面するシュウ。

ダメだ、面白すぎる。


「さぁさぁ、ちゃんと真面目に掃除しましょうね、そこ」

「お前な…」


がっくりと肩を落とすシュウを背中に、

私はちりとりを取りに掃除用具入れへ向かった。






















赤面大石万歳。大石は微天然で天然黒。


2003/09/23