* フーセンガム *












――平成××年8月14日 新年度初日

日本とはずれて本日より学校が始まります。



7年ぶりに使う英語は意味不明。

中学校の授業でやっていたものは果たしてなんだったのか。


「…マジ英語だぜ」


そこら中を飛び交う会話、

建物内を閉める英語の単語の数々に目が回りそうになった。


"Are you new here?"

「―――」


掛けられた声。

まあ、要するに新入生かと訊かれているわけだ。


"Yes, I am."

"Oh! And you are 9th grader, right?"


答えると、学年を訊かれた。

ハイスクールに居るのにこんなにチビっ子、

ということで即座に9年生と判断してくださった。


"Nice to meet you!"


笑顔を見せたその人は、手の代わりに包みを差し出してきた。

意味が分からずきょとんとしていると、その人は言った。


"Do you eat bubble gum?"

"Yeah, thanks."


差し出された包み。

包まれていたのはフーセンガム。

楽しそうに喋るその人と、

片言で応答する私。


その時食べたガムの味を、

私はきっと一生忘れないと思う。



そして私がこの学校に入って初めに知った決まり事は、

学校内でガムを食べるのは禁止、ということだった。






















ドリームもクソもなくてごめんなさい。


2003/09/23